「剱澤小屋」北アルプスの山小屋完全ガイド
PEAKS 編集部
- 2018年03月25日
INDEX
登山者にとって快適な山歩きを楽しむための心強い味方、山小屋。館内施設や食事、成り立ちや売店メニューなど、山小屋の膨大な情報を集約しているので、山行計画に役立つこと間違いなし!
真っ正面に剱岳を望む伝統の小屋
「真砂沢へ抜ける道はこちらですか?」
取材中に訪れた剱澤小屋で、こんな質問をしている女性と出会った。小屋のスタッフである佐伯新平さんはその質問に答えながら女性にこう聞き返した。「ところで10本爪のアイゼンを持っていますか?」
ここから真砂沢方面へ下るには剱沢雪渓を下らなければならない。6本爪の軽アイゼンしか持っていないという女性に対して、新平さんはなぜ10本爪のアイゼンが必要なのか説明したあと、道中のアドバイスを付け加えて、女性を見送った。剱岳の眼下にある剱澤小屋といえば、オーナーの佐伯親子と登山客とのこんな風景が名物だ。
剱岳に近く、場所がら遭難の現場を何度も見てきた佐伯友邦さんは「山小屋のスタッフとしてできることをしたい」という信念のもと、現場を知る人間として、登山者へ伝えられることはすべて伝え続けてきた。そんな友邦さんを慕って、小屋を訪れる常連客も多い。
現在はその思いを息子の新平さんが引き継ぎ、友邦さんの剱澤小屋から新平さんの小屋へと思いは引き継がれている。
剱澤小屋のオススメBEST 3
剱岳への登山基地として知られる剱澤小屋は、知名度も高く、人気が高い山小屋だ。「剱澤小屋が好き」という人は多く、その理由はさまざま。
まずはオーナーである佐伯親子の人柄が一番に挙げられる。彼らの山小屋にかける情熱に惹かれ、訪れる常連客も多い。
次にその立地条件も魅力的だ。剱岳の登山基地として便利な場所にあり、かつその全景を真正面に眺めながら過ごすことができる。この地の利を心ゆくまで堪能できる場所なのだ。
また、この場所は最初に小屋が建てられた場所であり、雪崩被害に巻き込まれることも少ないのがメリットだそう。さらに最新設備を導入していて、過ごしやすいという点にも注目したい。200mほど上から場所を移して2009年に新築された館内は、浄化槽が設置されたため、水洗トイレやシャワーが導入されている。ふとんにはミズノのブレスサーモという発熱素材を利用したものを使っていて、いつでも暖かく眠ることができる。
さらに新平さんは元料理人で、手作りの夕食・朝食も評判だ。こうして山小屋とは思えないくらい快適に過ごすことができるのだ。
ちなみに、『PEAKS』の取材でも宿泊させていただいたことがあり、山岳カメラマン星野秀樹さんが撮影したステキな構図と同じカットを撮ることもできますよ。
NO.1 剱岳は目の前です!
剱岳が眼前にそびえる剱澤小屋。小屋の前には「岩と雪の殿堂」と書かれた標識が立っており、オススメの撮影スポットだ。天気がいい日はここで記念撮影をする人多数。装備が心配な人はスタッフに相談してみよう。的確なアドバイスがもらえるはずだ。
NO.2 シャワールームが3室
剱澤小屋では14:30~19:30まで1時間ごとに男女交代でシャワールームを使用できる。ただし環境保護のため、石鹸・シャンプー類は使用できない。
NO.3 「KIKIちゃんカット」の撮影場所はこちら
『PEAKS』愛読者の方なら、2010年8月号で一度紹介した「KIKIちゃんカット」を覚えているかも?看板横の窓から顔をのぞかせると同じ構図で撮影できます。記念にぜひ!
館内施設
キレイな食堂、おいしいご飯
新平さんは元料理人。その腕を生かした小屋の食事はおいしいと評判だ。食堂もこのとおりピカピカ。
大型ワイドテレビあり
剱岳に登るには事前の天候チェックが必須。食堂には大型テレビが設置され、天気を確認することができる。
廊下には荷物置き場
部屋がすべてかいこ部屋なので、大きな荷物はこちらへ。荷物の分だけ、部屋のスペースを有効活用できる。
乾燥室あります
館内には乾燥室があり、濡れた衣類を乾かすことができる。ハンガーもたくさん常備されている。
談話室兼待合室
「自分は登頂できない」と断念した人もこちらで仲間を待つことが可能。本棚が常設されていて、退屈しない。
食事
朝食
焼鮭、卵焼き、サラダ、漬物。左上にあるのはスティック納豆としそふりかけとのり。白飯のおともにどうぞ。
夕食
大きな3尾のエビフライに春巻き、パスタ、きんぴらごぼうなどボリュームたっぷり。翌日への活力をしっかりチャージしよう。
部屋
剱澤小屋の客室はかいこ部屋のみ。各部屋には除湿機が完備され、快適に保たれている。布団はミズノのブレスサーモを使用している。上段には木枠がないので、落ちないよう注意。
洗面所・トイレ
水道の水は飲用可能。
トイレは浄化槽が設置されていて、男女別の水洗トイレだ。トイレットペーパーは便器に流さずにゴミ箱へ捨てよう。
お土産・売店
缶ビールやジュース、カップラーメンなどが買えるほか、食堂にはインスタントコーヒーが常備され、100円で飲むことができる。
テント場
剱岳が一望できる「剱沢キャンプ場」。管理は小屋ではなく、剱澤野営管理所が行なっている。
DATA
設営数:300張
利用料:500円/人
水場:あり
トイレ:あり
地面:砂利
小屋からの時間:10分
「剱澤小屋(つるぎさわごや)」の基本情報
設備
テン場:あり
水場:あり
個室:なし
自炊室:なし
乾燥室:あり
お風呂:あり
生ビール:なし
営業期間
7月上旬〜10月上旬
電話・電波
ドコモ:良好
au:良好
ソフトバンク:不安定
公衆電話:なし
収容人数
64人
標高
2,400m
宿泊料金
1泊2食:10,000円
素泊まり:7,000円
お弁当:1,000円
連絡先
080-1968-1620
http://home.384.jp/tsuruqi1/
※2018年2月現在の情報です。営業時間や定休日などは変更となる場合がございますので、お出かけ前にご確認ください。
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- テキスト/渡辺幸雄 森山憲一 写真/宮田幸司 仁田慎吾 野口祐一 後藤武久 宮上晃一 渡辺幸雄 杉村 航 新井和也 井上大助 森山憲一 高橋庄太郎 岡野朋之 亀田正人 梶山 正 三宅 岳 内田 修 矢島慎一 加戸昭太郎 星野秀樹 西田省三 太田孝則 中村成勝 泥谷範幸 大森千歳 宇津木昌樹 山小屋提供
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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