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遭難時に救助隊が素早く発見できる登山ウエアのカラーリングとは?

滑落や道迷い、低体温症、発熱など、山中で起こってしまった事故や病気によって救助を呼ばなくてはならなくなるときがある。そうしたとき、素早く救助隊が発見できるよう登山者が配慮できることはあるだろうか? ここでは、ウエアのカラーリングによって早期発見に役立つか検証してみた。

編集◉PEAKS編集部
文◉村石太郎
写真◉宇佐美博之
出展◉PEAKS 2018年9月号 No.106

色による視認性の違いは?

予期せぬ悪天候や事故、病気などによって、山中で身動きが取れなくなってしまったとき、無事に下山するための最後の手段がヘリコプターなどでの緊急救助である。そうした最終手段を依頼した際、素早い発見を促すために僕たち登山者ができることはなにかを考えてみたい。

まずに考えられるのが、発見されやすいように明るめのウエアを身につけたり、テントやツエルトも色に気を使ったりして選ぶことだろう。そのうえで、移動できるならばなるべく上空から見つけやすい場所で待機すること。これは、明るい色でも岩陰にいると、周囲と同化してしまう可能性が非常に高いためだ。

多くの遭難者は少しでも風を除けようと岩陰などで待機していることが多いという。事実、遭難などで亡くなってしまった人の多くは岩陰にいる確率が高いのだそうだ。また、滑落や道迷いなどが原因で登山道から外れてしまうと、捜索がとくに難しくなる。そのためヘリコプターのエンジン音、救助隊の呼びかけなどが聞こえたら、可能な限り人目につきやすい場所に移動できると発見されやすくなる。

レインウエアなどのカラーリングによって、見つけやすさに違いはあるのか。簡単な実験を行なったので、次ページ以降の写真を見比べてほしい。今回用意したのは5色(黒色、青色、緑色、黄色、赤色)のレインウエアだ。これに色味が若干くすんだ赤系の煉瓦色のレインウエアを加えて、それぞれのカラーと色の明暗でどれだけ見え方が異なるのかを視覚化した。

発見のしやすさは、そのときの天候や周囲の環境によって異なるが実験を通じて各色の見え方の違いを確認していただきたい。

まず始めに向かったのは、稜線上に広がる岩場だった。ここで各色のレインウエアを羽織り、フードを被って岩陰にうずくまるような姿勢で救助を待つという想定で撮影を開始。仮定の遭難者までの距離は、40〜50mほど。これはヘリコプターで上空から捜索するときの高度を想定した距離であり、実際には高度を上げ下げしながら双眼鏡などを使って探すという。

多くの人が予測できるように、視界にまず飛び込んできたのは発色のいい赤色だった。写真の掲載はしていないが、煉瓦色も比較的見つけやすい。また、周囲の草木に若干まぎれてしまうものの黄色もよく見える。

過去に行なったヘリコプターのパイロットへの取材でも、冬から夏にかけては赤色や黄色、とくに蛍光色が入ったようなカラーは上空からも見えやすいと話していた。今回は検証をしていないのだが、オレンジ色も同様の傾向にある。

いっぽう、黒色は影にしか見えなくなってしまう。どこにいるのかわかっていても、写真のなかを探すと一瞬居場所がわからないほどである。

検証したのはこの5色

今回のテストでは、もっとも普及しているであろう黒色、青色、緑色、黄色、赤色という5色のレインウエアを用意して山中に持ち出した。上空などからの色の見分けやすさは、明暗などの発色性によっても変化する。そのため、なるべく明るめのカラーリングのものを集めてみた。

 

岩場で検証

稜線上で動けなくなった登山者の多くは、岩影にうずくまって救助を待っていることが多い。

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開けた稜線上で、岩陰にうずくまった登山者を想定して見やすさを検証した。着ているのは5色のレインウエアで、仮定の遭難者までの距離は40〜50mほどだ。

発色のいい黄色や赤色(④と⑤)といった暖色系のレインウエアははっきりと認識できた。また自然界には少ない青色(②)も、周囲の色との違和感があり見つけやすい

緑色(③)でもよく見えるが、若干くすんだ緑色だと周囲の草木の葉の色と同化してしまいそうだ。一方、黒色(①)はほとんど影にしか見えず上空から位置を特定するのは困難であろう。

 

樹林帯で検証

登山道から外れてしまった遭難者を見つけることは、とくに視界が狭い森のなかでは難しい。

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稜線上での検証に加えて、森のなかでの見え方も確認した。ここでも5色のレインウェアを着た遭難者がうずくまっていると仮定して、およそ40〜50mほどの位置から撮影している。このときは日が傾き始め、仮定の遭難者が座っている位置は木々の影になっていた。そのため見つけづらい状況になっている。

先ほどと同様、黄色と赤色(④と⑤)は見つけやすいが、黒色(①)はここでもいちばん目立たない。青色と緑色(②と③)も目に付きやすいが、影になってしまう場所ではトーンによっても見え方が変わってくる。

本来の救助では、比較的天候が安定した日に行なうことが多いだろうが、救助を待つときは、できる限り、より目立ちやすい場所に移動したほうがいい。

 

時期によっても目立つ色は変わってくる

場所を森のなかに移動してさらに検証を行なった。結果は岩場と同じく、やはり赤色や黄色が見つけやすい。黒色にいたっては袖から出た手先ぐらいしか確認することができなくなってしまった。これでは、発見するのに苦労するだろう。

意外だったのは、青色のレインウエアだ。岩場においても樹林帯においても、周囲の景色と明らかに異質なものが視界に入ってくる。視線の外にあるときは、赤色や黄色、緑色などは景色と同化してしまいやすいのに対して、自然界には少ない青色は視線の外にあっても非常に目立っていた。

風に飛ばされたれたブルーシート、山小屋の屋根などが山中や川原などでよく目立つことにも似ている。ただし、青色は森のなかや積雪期に日陰に隠れている場合などは目立ちにくくなる傾向にあるそうだ。

いっぽう、秋の紅葉時期になると、青色はもっとも見つけやすい色といえるだろう。その時期は山が赤色や黄色などに染まるため、同系色の赤色や黄色、オレンジ色などは周囲の景色に紛れやすくなってしまうのだ。

今回の検証実験が示すように、発色のよい目立つウエアを着ることがいかに早期発見のために有効かがわかる。機能性を優先するアウトドアウエアにおいては、カラーリングも大切な機能なのだ。万が一遭難してしまった場合に黒色のウエアを身にまとっていたとしたら、捜索が非常に難しいものになることは一目瞭然である。バードウォッチングなどではよくても、茶色や迷彩色なども遭難時には発見が遅れてしまう可能性があるので注意が必要だ。

ウエアの色というのは個人の趣味もあり、赤色や黄色など明るめの色を着たがならい人も多いだろう。しかし、今回のような結果を見れば考え直すきっかけになるのではないか。数名のパーティで行動しているときにも、発色のいいレインウエアなどを着ていれば、ほかの仲間からどこにいるのか認識されやすいという利点もある。とくに濃霧などに覆われたときには、仲間からはぐれてしまいそうになった際に呼び止められるきかっけにもなるし、後ろを歩いている仲間にとってはいい目印にもなるのだ。

同時にいつも心掛けたいのは、登山へ出発する前に家族や友人などへ着ていくウエアの色を伝えておくこと。これは救助隊が捜索をするときの参考となり、こうした情報がないと手がかりが少ない状況で探すことになる。面倒だと思っても、家族や友人、登山届けなどには、歩く予定ルートなどに加えて、着ているシャツやレインウエア、バックパックの色を記入することを習慣化しておきたい。

 

同色のトーン違いでは?

救助活動に関わるヘリコプターのパイロットへの取材では、蛍光色が入った明るめのカラーのウエアが見えやすく感じると話していた。では、こうした発色のいい色と、くすんだ色ではどれだけ違いがあるのだろう。それを確かめるために明るい赤色と、くすんだ煉瓦色のレインジャケットを比較した。結果としてはそれほどの大きな違いを感じなかったが、より視界が優れなかったり、さらにトーンが落ちた色味では異なってくるのだろう。

 

※この記事はPEAKS[2018年9月号 No.106]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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