考察!山はどのようにしてできるのか
PEAKS 編集部
- 2020年08月31日
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狭い国土のわりに、高い山が多い日本。山だけでなく、火山も地震も多い。しかしそれには地学的な理由がある。日本の山の成り立ちを知ると、山を歩くのがいっそう楽しくなる。ちょっとばかり地学のお勉強を。
島国ニッポンの高い山は、こうしてつくられた!
地形を作る隆起と侵食
もし地球がまっ平らでまったく凹凸がなかったら、さぞかしつまらないだろう、と思う。しかし幸いなことに、地球には山があり、谷があり、さまざまな風景が広がっている。こうした山や谷はどのようにしてできあがったのか?
基本的に、地球上の地形は地面の隆起と侵食によって作られている。たとえば穂高を見てみると北穂高岳3106m、奥穂高岳3190m、前穂高岳3090m。南アルプスの白峰三山は北岳3193m、間ノ岳3190m、農鳥岳3025m。なぜ高さがほぼ同じなのだろう、と考えたことはないだろうか。これらの山々は、ほぼ同じ高さまで隆起する岩盤が侵食されてできたものなので、高さがほとんどそろっているのだ。
沈み込み帯におけるマグマの発生と火山
侵食は主に水によって起きるが、寒い地方では氷河が侵食して谷をつくる。涸沢や仙丈ヶ岳のカールは、日本アルプスがその昔氷河に覆われていたことの証拠でもある。
富士山は比較的若い山できれいな円錐形をしているが、現在も侵食が続いている。かつてはお中道といって五合目の高さで一周できたが、大沢崩れの侵食が進むにつれ、この部分が通過できなくなってしまった。あと百年もすれば、西側から見た富士山の姿はいまとはかなり違った姿に変わってしまうに違いない。
プレートが動き地面が隆起する
さて、侵食は主に水によって起きるわけだが、隆起はどのようにして起きるのか。隆起の原因には大きく分けて火山と地殻変動があるのだが、じつは両方ともプレートの移動によって起きる。
20世紀の初め、ドイツの気象学者ウェゲナーは、アフリカの西海岸と南米の東海岸の形が似ていることから、かつてはひとつの大陸でその後分かれたという「大陸移動説」を打ち出した。ただ、その動きがどうして起きるのか説明できず、大陸移動説は注目されなかった。その後、海洋の調査が進むにつれ、海底にもさまざまな地形があり、さらに海底の年齢からプレートが動いていることもわかる。
そして「プレートテクトニクス」は、学説として認められるようになった。山ができるのは、主にプレート同士がぶつかる場所になる。たとえば大陸プレート同士がぶつかるとどちらかが他方の上に乗り上げて山を形成する。
世界の屋根といわれるヒマラヤ山脈は、インド亜大陸がユーラシア大陸にぶつかってできた。プレートの動きは年数センチメートルとわずかなものだが、ぶつかったからといって簡単には止まらない。車同士の衝突とは、わけが違うのだ。プレートの衝突は現在も進行中で、ヒマラヤの山々はいまもわずかずつ隆起を続けている。
大陸プレート同士ではないが、丹沢山系も海洋プレートに乗って移動してきた伊豆半島がぶつかってできたものだ。
造山運動の概念
日本全体を見てみると、ユーラシアプレートや北アメリカプレートという大陸プレートに、太平洋プレートやフィリピン海プレートという海洋プレートがぶつかって下に潜り込んでいる。こうした場所では両側から力がかかることによる褶しゅうきょく曲作用で山ができたり、海洋プレートの堆積物が剥ぎ取られたりして山ができる。
プレート境界に火山ができる
海洋プレートが沈んでいくと、中に含まれていた水分が放出される。地下高温高圧下の岩石は、水を含むと融点が下がるため、溶け出してマグマになる。マグマは軽くなって上昇し、場合によっては地表に達する。これが火山だ。
だから日本のような場所では、プレートの沈み込みによって山ができるし、さらに火山がその境界から少し奥にできることになる。こうしてできる火山の並びを火山フロント(火山前線)という。
プレート境界と山脈の関係
このように山や火山ができるということは、日本地図で山脈や火山と、プレートの位置関係を図にしてみるとよくわかる。
北海道から関東までの山脈や火山は太平洋プレートと北アメリカプレートとの境界に沿ってきれいに並んでいる。またそれより南西では、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界に沿っている。ついでながらいうと、八丈島から硫黄島へと続く島の並びは、フィリピン海プレートと太平洋プレートの境に沿ったものだ。
日本列島の地質と構造
最後にスケールの話を少し。ヒマラヤの山々はたしかに高く見えるが、地球の半径6371kmに対してわずか9km弱しかない。これは半径10cmのバレーボールで見ればわずか 0・15mm。プレート同士の衝突がいかにすごいとはいえ、地球全体からみればシワにもならないわずかなもの。山に登るのは大変だが、地球から見ればほんのちょっと登っただけなのだ。
主な山地の分布と火山ライン
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- BRAND :
- PEAKS
- CREDIT :
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文◉堀内一秀 Text by Kazuhide Horiuchi
写真◉高橋庄太郎、堀内一秀 Photo by Shotaro Takahashi, Kazuhide Horiuchi
イラスト◉田中明子 Illustlation by Akiko Tanaka
参考文献・各イラスト出典:『基礎地球科学』(朝倉書店)、『新しい高校地学の教科書』(講談社)、『日本の山』(岩波書店)
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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