ガイド登山で冬の八ヶ岳をめざそう!
PEAKS 編集部
- 2020年11月10日
INDEX
リスクが高い冬山を安全に登るためには、信頼できる人と登るのが一番。
そこで考えてみたいのが、ガイド登山。そのドアの先にはたくさんの発見、気付きがある。
写真◉青木昭司、杉坂 勉、宇佐美博之、川名 匡、久野弘龍
Photo by Shoji Aoki, Tsutomu Sugisaka, Hiroyuki Usami, Tadashi Kawana, Hirotatsu Kuno
出典◎PEAKS 2016年12月号 No.85
デビュー派にもスキルアップ派にも、メリットがたくさん
「ただ登頂するだけでなく、実践的な山の技術を学ぶことができる」
通年営業の小屋が多く、冬でもにぎやか。他の山域に比べると入山しやすいのが冬の八ヶ岳だが、それでもやはり多くのリスクがあるのも事実。自己流の登山スタイル、判断だと思わぬアクシデントに見舞われる可能性も。
そんな冬だからこそ選択肢に入れるべきはガイド登山。「目的の山に登る」、そのための案内人と考えている人もいるかもしれないが、ガイド登山の真の価値はその先、豊富な経験に基づく確かな山の技術を学ぶことができるという点にある。
クランポンやアックスの基本的な使い方はもちろん、雪の状況の捉え方、天候の予測、生活技術、ウエアリングなど、ガイド登山ではあらゆる面から学びを得ることができるのだ。
そんな頼れるガイド、とくに冬の八ヶ岳エリアに強い6名を、ガイド登山ならではのバリエーションも交えておすすめルートをご紹介。さらなるステージへ連れて行ってくれる案内人と、この冬、山に向かってみては?
<Guide 01>ホームマウンテン八ヶ岳はおまかせあれ
青木昭司
40年前から八ヶ岳の麓の原村に居を構え、冬の八ヶ岳ガイドの回数は数え切れないほど。その他、槍・穂高、剱岳など日本アルプスでもガイド業務を行なう。2名程度までを基本とし、コンディションがシビアな雪山では、とくに体力、耐寒力、技術などを見極めながら、無理のないガイディングをすることを心がけている。
- おもな八ヶ岳のガイドルート:硫黄岳/横岳縦走/赤岳主稜/阿弥陀岳北稜など
- HP:www.alpineguide.jp
Recommended Route 赤岳(地蔵尾根~文三郎尾根)<2日間>
冬の赤岳は諏訪側から地蔵尾根、文三郎尾根コースが一般的です。森林限界を超えれば極寒、強風不可避で岩稜帯でも確実なアイゼンワークが必要。もし下りが目も開けられない向かい風になるなら同ルートを引き戻します。
トレースが消えるほどの降雪時には道迷いはもちろん点発生雪崩への警戒も必要。西面は澄んだ青空に真っ白な槍、穂高などの北アルプスが真正面。稜線では富士山、南アルプス、奥秩父、浅間山が望め、まさに中部山岳ど真ん中です。
<Guide 02>入門ルートからハードなバリエーションまで
杉坂 勉
日本山岳ガイド協会認定国際山岳ガイド。オールラウンダーだがとくにクライミングに定評がある。冬の八ヶ岳ではバリエーションルートから初心者向けの入門的な登山まで実施。現在、長野県安曇野に拠点を構え、プライベートではスキーを担いでバリエーションルートを登り滑るというクライムアンドライドを楽しんでいる。
- おもな八ヶ岳のガイドルート:赤岳/阿弥陀岳北稜/赤岳主稜など
- HP:www.sugisaka.ecnet.jp
Recommended Route 天狗岳~高見石<2日間>
このルートは1泊2日という比較的長めの距離で、雪山初心者が安心して歩行技術を習得できる行程です。初日は渋の湯から黒百合ヒュッテへ。時間があれば周辺でアイゼンを付けて足慣らしを。2日目は中山峠から東天狗へ。
山頂直下は岩場も出てくるので要注意。東天狗岳~西天狗岳を往復する場合は雪の状態を確認して問題なければ西天狗に向かいます。その後は中山展望台から高見石へ。中山展望台と高見石は晴天時は北アルプスなどが望め絶景です。
<Guide 03>海外経験も豊富な登りと滑りのエキスパート
江本悠滋
フランス国立スキー登山学校(ENSA)卒業。日本人として初めてフランス国家資格高山ガイド資格を取得する。後にフランスでスキー指導員、高山ガイドなどとして働き、現在は夏はフランス、その他は日本をベースに活動。参加者の希望、レベルに最大限合わせたプランを提案しながら、山の楽しさや技術を伝え続けている。
- おもな八ヶ岳のガイドルート:参加者の希望に合わせてどのルートでも
- 連絡先:www.emoto-yuji.com
Recommended Route 硫黄岳~赤岳<日帰り or 2日間>
硫黄岳から横岳、赤岳への縦走は、ベースとなる美濃戸山荘から往復で10時間という歩きごたえがあるロングルート。ただし横岳を抜ければエスケープルートがあり、営業中であれば赤岳天望荘も利用できます。
平坦で視界不良時は方向感覚がなくなりやすい硫黄岳山頂、岩稜で雪の付き具合を考慮したルートファインディングが必要な横岳の稜線、疲労感を感じる赤岳の下りなど、困難は多いですが、その分、着実に経験値を積み重ねることができます。
<Guide 04>料理から雪山バリエーションまで、味わいにこだわるグルメガイド
川名 匡
山岳地の気象観測業務を経てガイドへ。登山歴40年、ガイド歴22年。初心者から中級者までの技術指導と啓蒙に力を入れており、社会人山岳会「森羅」の顧問も務める。初めての場合、山の経験値などを事前講習で確認してから目指す山に向かうのがガイドの特徴。趣味は居酒屋とB級グルメ探訪、浮世絵と版画の収集など。
- おもな八ヶ岳のガイドルート:赤岳/八ヶ岳縦走/大同心稜など
- 連絡先:http://mt-kawana.com/top/
Recommended Route 横岳大同心稜登攀~横岳縦走<2日間>
大同心稜は赤岳鉱泉から横岳奥丿院へ登る最短ルートです。取り付きは赤岳鉱泉にほど近い大同心ルンゼ。雪の付き方に応じてロープを要所要所で使います。核心部は大同心の大きな岩峰基部を右に回り込みながらルンゼ内に入る部分とそのルンゼ内。
そこはすでに稜ではなく、ルンゼ内の登攀になります。いずれも容易なピッチが続き、冬の横岳西壁だけでなく、南八ヶ岳の冬期バリエーションルートを体験するためにもぜひ登ってもらいたい入門コースです。
<Guide 05>レベルアップのためのガイディングを展開
久野弘龍
山梨県北杜市にベースを構える国際山岳ガイド。加藤美樹ガイドとともに「ミキヤツ登山教室」を主宰。ただ登るのではなく、自ら登れる力を付けるための技術講習に主眼を置いたガイディングが特徴。夏はイタリア・ドロミテ、秋はギリシャ・クロアチアでクライミング、冬と春は日本の冬山と一年中世界を飛び回っている。
- おもな八ヶ岳のガイドルート:赤岳/赤岳主稜/石尊稜/赤岳南峰リッジなど
- 連絡先:http://mikiyatsu.jp
Recommended Route 阿弥陀岳北稜<2日間>
樹林帯でのラッセル、中間部では雪壁や雪稜、上部では簡単な冬季クライミングが楽しめるこのルートは、まさに雪山オールインワンといえるバリエーションルートです。降雪直後が一番おもしろいのですが、雪崩の可能性があるときはそれを避けるラインをとります。
下降は雪が安定していれば中岳沢ですが、そうでないときは同ルートでの下降を行なうことも。比較的やさしめのルートではありますが、ミスは許されないので、ロープで確保して登ります。
<Guide 06>世界的アルパインクライマーと登る
岡田 康
世界を代表するアルパインクライマーであり、2011年ピオレドール受賞。八ヶ岳をベースに活動しており、バリエーションルートに限らず、雪山入門的なガイディングまで幅広く実施。定員を2名までとしているのが特徴で、じっくりと技術を学ぶことができる。厳冬期の黒部横断など、貴重な体験談もぜひ聞いてみたい。
- おもな八ヶ岳のガイドルート:赤岳など
- 連絡先:www.okada-alpineguide.com
Recommended Route 八ヶ岳南北大縦走(北横岳~赤岳)<4日間>
北横岳から見る赤岳は遥か遠く、期待と不安が入り混じります。八ヶ岳を南北に縦走するこのコースの魅力はなんといっても、そんな感情を抱きながら遠く先のゴールを目指す行為にあります。
ルート上では随所ですばらしい大パノラマが楽しめ、さらに稜線で営業している山小屋のおもてなしは温かく、そこですごす時間もまた魅力のひとつ。八ヶ岳は風が強く気温も低いので、しっかりとした経験を積んでからチャレンジしましょう!
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写真◉青木昭司、杉坂 勉、宇佐美博之、川名 匡、久野弘龍
Photo by Shoji Aoki, Tsutomu Sugisaka, Hiroyuki Usami, Tadashi Kawana, Hirotatsu Kuno
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。