世界の登山靴ブランド図鑑|所変われば登山靴も変わる!
PEAKS 編集部
- 2020年12月10日
環境が変われば、そこで使われる道具も変わる。登山靴も同様で、国が違えば好まれる登山靴も違ってくるのだ。イタリアでは急峻な岩山に登るため、ドイツでは平坦なハイキングルートを歩くため。世界各国で生まれた登山靴メーカーの特徴を、お国事情とともに紹介しよう。
文◉村石太郎 Text by Taro Muraishi
写真◉荒木優一郎 Photo by Yuichiro Araki
イラスト◉竹田匡志 Illustration by Masashi Takeda
出典◉PEAKS 2019年5月号 No.114
ヨーロッパ「伝統と最新技術から最高峰の登山靴が生まれる」
18 世紀後半に開花した近代登山の発祥地であり、ありとあらゆる登山用品が誕生したのがヨーロッパアルプスを中心とした国々である。当然のように、登山靴の生まれ故郷でもある。なかでも北イタリアと南ドイツの靴作りの歴史は古く、現在まで脈々と受け継がれながら、新しい技術を取り込み発展し続けている。
フランス
登山靴作りがそれほど有名な国ではないけれど、山岳リゾートとして名高いシャモニーへの玄関口となる街、アヌシーでいくつかのシューズブランドが誕生している。ちなみに、山岳レースなどが盛んなフランスでの登山用品作りに欠かせないキーワードは「スピード」である。
01 ホカ オネオネ
アドレナリンをもたらすアウトドアシューズ
2009年、アヌシーに発祥し、現在米国に拠点を置くシューズブランド。スキーやMTBなどで感じる興奮をランニングでも、と開発したのがクッション性が高くて、幅広のロッカー形状のミッドソールであった。
問:デッカーズジャパン
02 サロモン
軽さを追求したハイキングシューズ
1947年、フランス東部の湖畔に広がる街アヌシーで誕生した同社は、もともとは滑走用のスキーエッジを作るところから始まった。しかしながら現在は高品質な軽量ハイキングシューズなどを作ることで有名だ。
問:サロモン コールセンター
Germany
イタリア北部同様、ドイツ南部では古くから山中で働く人たちのための靴作りが盛んで、いまもその伝統を守りながら登山靴作りを続けている。比較的アップダウンの少ない場所で使うバックパッキングモデルを得意としており、アルパインモデルはイタリアで作ることが多い。
03 ハンワグ
高品質な素材と最高の技術で作る登山靴
実兄がローバーを創業する2年前となる1921年、ハンス・ワーグナーによって立ち上げられている。ドイツの国家試験である整形外科の靴職人であった彼が作った登山靴は、その完璧なフィッティングに定評がある。
問:ワイエスインターナショナル
04 ローバー
ドイツ伝統の職人気質な靴作りを継承
1923年、ドイツ南部バイエルン州にて靴職人として働いていたローレンツ・ワーグナーによって創業されたシューズメーカー。ソフトな足入れ感、長距離の歩行でも疲れにくい登山靴は日本でも高い評価を得ている。
問:イワタニ・プリムス
05 マインドル
伝統と最新技術を融合させた靴作り
1683年と、現存するアウトドアブランドのなかで最古の歴史を誇る。ドイツ南部キルハン・ショーリングにて、オエトルス・マインドルによって創業され、伝統を守りながら最新技術を取り入れた靴作りを行なう。
問:ミヤコスポーツ
イタリア
登山靴作りといえばイタリアである。急峻な岩山が連なるドロミテ地域は、登山靴発祥の地ともいえる。熟練の職人が多く、良質な牛革の生産地であり、靴作りのための機器メーカーの多くがイタリア発祥の会社であることも、同国を世界随一の存在としているのだ。
06 アク
最高のフィッティングを提供
1990年、北イタリアの靴産業の集積地モンテベルーナにて、皮のなめし工場で働いていたガリアーノ・ボルディによって設立されている。独自の3D設計技術とクラフトマンシップを融合させた靴作りに定評がある。
問:Mt.石井スポーツ 新宿東口ビックロ店
07 アゾロ
軽く、どこまでも快適な登山靴作りを
1975年、世界有数の靴の生産地として知られるイタリア・モンテベルーナで創業されて以来、世界的なリーディングカンパニーとして高い評価を獲得している。代々創業家のザナッタ家族によって経営されてきた。
問:モンベル
08 ガルモント
理想的な靴を作るイタリアンブランド
1964年、もともとはテレマークブーツ作りをしていた靴職人によって、イタリア・モンテベルーナで設立。足元を安定させる独自のA.D.D.システムによって、履きやすさと歩きやすさを高い次元で両立している。
問:ガルモント
09 ケイランド
高品質素材と先端技術から作られる
1971年、靴職人ジョヴァンニ・ビッタンテによって創業され、アルピニストたちの意見を取り入れながら高品質なアルパインブーツを製作。世界で始めて登山靴にケブラーコーデュラを採用したことでも知られる。
問:マジックマウンテン
10 ラ・スポルティバ
数々の革新性を登山靴にもたらした
1928年、北イタリア・テゼロで、ナルシソ・ディラディオが始めた靴工房をもとに親子3代にわたって経営が続けられてきた。3代目となるロレンツによって、つま先のクライミングゾーンが誕生するなど革新性に富む。
問:スポルティバ・ジャパン
11 スカルパ
世界的な知名度を誇る登山靴の名門
1938年、イタリア・アゾロでギネス卿によって設立され、その後にパリソット3兄弟へと引き継がれた。以後、脈々とパリソット家族による経営が続けられ、高い機能性と足通しのよさから世界的に評価が高い。
問:ロストアロー
12 ザンバラン
伝統技術を大切にした最高品質の登山靴
1929年、イタリア北部にあるドロミテ山塊のふもとの街スキオで創業。同社の経営は現在、創業者ジュゼッペ・ザンバランの孫たちが受け継いでおり、イタリアでもめずらしいほど伝統的な靴作りを行なっている。
問:キャラバン
13 テクニカ
登山靴に革新的なアイディアをもたらす
1960年、モンテベルーナでイタリア軍向けの靴を生産していた工場を前身として誕生し、革新的なアイデアを取り入れてきた。近年は、個々の足にあわせて成形するCASアッパー技術で世界を驚かせた。
問:テクニカグループジャパン
スイス/スペイン/イギリス
これら3国は登山靴作りではさほど有名ではないものの、じつにユニークで品質的にもすばらしい靴作りをしている。マウンテンマラソンの発祥地である英国は、山岳地を走ることに特化した製品作りで世界をリードしているといえるだろう。
14 マムート
山岳国スイスの名門登山靴のDNA
ご存じのように、同社は登山靴専門ブランドではない。だが、その登山靴のDNAはもともと同郷スイスの名門ブランドであったライケルから引き継がれたものであり、その高い技術力と品質には定評がある。
問:マムートスポーツグループジャパン
15 ボリエール
クライミングシューズの伝統ブランド
スペイン南東部に位置するバレンシア州ブレーナ。1975年、この街で靴工場長として働いていたヘシウス・ガルシアが、自身の思い描く理想の登山靴を作るために設立した。以来、歴史的名品を生み出していった。
問:ロストアロー
16 イノヴェイト
英国発のランニングシューズブランド
軽くて自然な履き着心地を持ち、抜群のグリップ力でもっとも過酷なオフロード環境を走破できるシューズを作ること。2003年、こうしたミッションを実現するために英国人ウェイン・エディによって立ち上げられた。
問:デサントジャパン
北アメリカ「新発想のアウトドアシューズが次々と誕生」
もともとは決して恵まれた靴作りの土壌を持っていたわけではないが、1970年代後半以降に育まれたスポーツシューズ文化によって靴作りの知識と技術を蓄積してきた米国を始めとした北米エリア。新しい技術や素材を積極的に取り入れながら、これまでにないハイキングシューズなどを次々と誕生させてきたといえる。
アメリカ
米国における靴作りのメッカとして知られるのは西海岸のオレゴン州ポートランドである。米国のなかでも近代まで森深く、木材産業が進んだことでスタンプタウン(切り株の街)と呼ばれた。その結果、ワークブーツ作りが盛んになったことは有名だ。
17 アルトラ
ベアフットランニングで自然な走りを
元アメリカ代表の長距離ランナーであったK・ゴールデン・ハーパーが、自然な走りを実現するためのゼロドロップシューズを生み出し、これをもとに2009年に設立。以来、一大ムーブメント巻き起こしている。
問:ロータス
18 チャコ
足と地球環境のことを考えたサンダル
1989年、カスタムシューズメーカーで働いていたマーク・ペイジェンによってコロラド州にて設立。より履きやすいスポーツサンダルを作ることを志して始め、足専門の整形外科医と協力した靴作りを行なっている。
問:エイアンドエフ
19 コロンビア モントレイル
トレイルランニングシューズの元祖
1997 年、軽量ハイキングシューズを作っていた「ワンスポーツ」をリブランドして誕生したトレイルランニングシューズメーカー。野山を走るランナーから絶大な支持を受けて立ち上がり、現在まで高い人気を誇る。
問コロンビアスポーツウェアジャパン
20 ダナー
ゴアテックスを世界で初採用したブーツメーカー
1932年、チャールズ・ダナーらによって創業され、3年後にポートランドに移転。このモデルは、米国で作られた初めての登山靴と謳われる「ダナー6490」の後継。ゴアテックス採用の「ダナーライト」も有名だ。
問:ダナージャパン
21 キーン
スポーツサンダルに第3の革命を勃発
2003年、カリフォルニア州でスポーツシューズのソール張り替えビジネスをしていたローリー・ファーストが設立。つま先の保護機能を備えたスポーツサンダルを生み出し、現在はハイキングシューズなども手がける。
問:キーン・ジャパン
22 メレル
目指したのは完璧なハイキングシューズ
1981年、米国各地で靴作りを学んだランディ・メレルが、故郷のユタ州バーナルで設立。処女作で、現在も販売される名作「ウィルダネス」を始め、「ジャングル モック」や「カメレオン」など大人気モデルが揃う。
問:丸紅フットウェア
23 オボズ
モンタナの大自然からインスパイア
2007年、アウトドアスポーツの聖地のひとつとして人気のモンタナ州ボーズマンで設立されたシューズメーカー。創業者は、40年以上フットウエア業界に関わり、熱烈なアウトドア愛好家であったジョン・コネリーだ。
問:三共スポーツ
24 テバ
スポーツサンダルを生み出した
激流で有名なコロラド川のリバーガイドが、自身の経験を活かしてそれまでに存在しなかった水中で脱げにくいスポーツサンダルを発明。またたく間に人気となり、いまやなくてならない存在となった。
問:デッカーズジャパン
25 バスク
名門ワークブーツメーカーから誕生
1964年、高品質なワークブーツメーカーとして知られているレッドウィング社のアウトドア部門としてスタート。’84年に発表したバックパッキングブーツ「サンダウナー」が話題となり、世界に名を馳せた。
問:エイアンドエフ
26 ゼロシューズ
シンプルで素足に近い状態を目指す
レナとスティーブン夫妻によって設立され、サンダル作りからスタートしたゼロドロップシューズメーカー。非常に薄いソールで足裏感覚を敏感にしながら、関節に負担がかかりにくい姿勢を見つけやすくする。
問:ケンコー社
カナダ
カナダといえば国土の大半が大自然に囲まれ、厳冬季には零下数十℃まで低下する。だからしてソレルやカミックなどのウィンターブーツが誕生しているのだが、現在では両社とも応用範囲の広いレインブーツなども手がけるようになっている。
27 カミック
イヌイット語で“足を覆うもの”という防寒靴
カナダで100年以上の長い歴史を歩んできたウィンターブーツブランド。北国の厳しい自然のなかでも機能性を発揮できるように耐久性や信頼性にこだわり、履き心地に優れたアウトドアシューズを作り続けている。
問:キャラバン
28 ソレル
ウィンターブーツのスタンダード
1962年、カナダで誕生し、レザーアッパーに着脱可能なフェルトライニングを挿入したウィンターブーツを発表した。50年以上経過した現在でも、ウィンターブーツのスタンダードとして広く世界で愛されている。
問:コロンビアスポーツウェアジャパン
アジア「アジア人の足には、アジア人に適した登山靴がある」
戦後の復興期を乗り越えて、1950 年代に空前の登山ブームが巻き起こった日本。’90 年代には韓国で爆発的なアウトドアブームがあり、2000 年代になると急速な経済発展を遂げた中国でも余暇をすごす風潮が生まれ、アウトドアへの関心が高まってきた。それぞれ状況は異なるが、これからがおもしろくなりそうなエリアである。
日本/韓国
西洋人の足型に比べて、幅広く、甲高といわれる東アジア人に合わせた靴作りに注目したい。降雨量の多い日本では、防水性をとくに考慮した登山靴が好まれているが、世界でもまれに見るほどファッション性を重視するマーケットであることも付け加えたい。
29 キャラバン
日本発の元祖・軽登山靴メーカー
1953年、槇有恒を隊長とする日本隊がヒマラヤの8,000m峰マナスル登頂を目指したとき、佐藤久一朗が作った軽量登山靴が評判となった。これを「キャラバンシューズ」の名で売り出したのが同社の始まりとなった。
問:キャラバン
30 シリオ
4E+ワイズにまで対応するイタリアンメイド
日本人の足に合う登山靴を、イタリアの高い製造技術で作りたい。1993年、そんな夢を実現するため花香昌男氏が東京で設立。モデルによって、足のサイズとは別に幅広ワイズの3種類を用意して対応している。
問:シリオ
31 トレクスタ
韓国発のトレッキングシューズブランド
1994年、有名登山靴ブランドの製造を手がけていたD.C クォンによって、釜山にてトレッキングシューズ作りをスタート。高い品質と快適さ、こだわりのスタイルを追い求め、韓国随一のブランドへと成長した。
問:エバニュー
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文◉村石太郎 Text by Taro Muraishi
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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