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装備の軽量化への第一歩。寝床ギアはこうして削る!

全装備のなかでもっとも大きい比重を占める寝る道具。これらを軽くすることが、装備の軽量化への第一歩だ。自分の力量と相談しながらこれらのポイントを実践してみよう。

文◉森山伸也、池田圭 Text by Shinya Moriyama, Kei Ikeda
写真◉大森千歳、熊野淳司 Photo by Chitose Omori, Junji Kumano
イラスト◉越井隆 Illustration by Takashi Koshii
出典◉PEAKSアーカイブ ソロトレッキング

軽量化実践法

ひとつの目安として2,500g

北アルプスの夏山を歩くと仮定し、テント、マット、シュラフ、枕などの寝床ギアは2,500g前後に抑えたい。とはいえ軽い故の不便さを経験でカバーできることが大前提だ。

ポールの少ないテントを目指す

雨風に強いダブルウォールテントをいかに軽くするか。テントの総重量はテントの骨格をなすポールの数で決まってくる。2本や3本ポールでドーム型に組むテントはもっともポピュラーな山岳テントだ。

これよりもテントを軽くするならば、ポール1本でトンネル型に立てる非自立型、さらにはトレッキングポールのみで立てるトンガリ型を選択することになる。

だが、いずれも非自立型なので、岩稜などのペグがきかない地面では安全に立てにくく、スキルと経験が必要となる。

テントにグランドシートはなくてもいい

テントのフロアは耐水性に優れ、厚い生地を用いたバスタブ型になっている。(モデルによっては購入後、シーム処理が必要)つまり吹き込む雨も地面を流れてきた雨もテント内には浸透しにくい構造だ。

たしかにグランドシートがあればより防水性と保温性を高められる。しかし、夏山で軽量化を重視するならば無理に持っていく必要はないだろう。濡れたら困る装備はあらかじめスタッフバッグに入れておけば、万が一雨がフロア内に浸入してきても深刻な問題には至らない。

ペグは軽いモデルにチェンジ

テントに付属するペグを使わなければ、そのテントの強度を十分発揮できないというわけではない。だから積極的にペグを軽いモデルに買い替えることもテント軽量化への近道だ。

たとえば写真右のようにかさばって重いペグから左のコンパクトで軽量なペグへ。使い慣れたペグを軽いものへと全取っ替えすることに抵抗がある人は、それほどテンションがかからないポイントから徐々に軽量ペグを増やしていけばいい。

そして、強度と軽さのバランスを見極めて自分のテントにマッチしたペグを見つけ出す。さあ、店頭でペグチェック。

おもいきってテントからツエルトもあり

テントからツエルトにするという案はどうだろう。たとえばアライテント/トレックライズ1が1,460g、ファイントラック/ツエルトⅡが340g(トレッキングポール含まず)であるから1㎏以上の減量となる。

晴れ予報で、さらに中・低山の山行であれば取り入れてみる価値はある。しかし、どこでも正しく張れる技術をもっていることが絶対条件。

細引きを細くするという発想

テントの骨格となるポールと地面とを固定するガイラインはテントの強度を高めるための必須パーツだ。購入時に付属しているガイラインが太さ3 ~ 4㎜であったとする。

装備を1gでも軽くしたいと願うハイカーからしたらそれは少々太いかも。ダイニーマを芯に用いた太さ2㎜か1.5㎜のガイラインで強度は十分足りるからだ。

たかが細引きと侮るなかれ。1箇所長さ2mのガイラインをテントの6箇所に設けるとして、計12m。重量はもとより、体積もコンパクトに抑えられる。ただ自在金具や自在結びがききにくくなる。

シュラフをフィルパワーで買う

ここに500gのダウンシュラフがふたつある。ひとつは650フィルパワーダウン、一方は900フィルパワーダウンを封入している。同じ重さでも一般的にはフィルパワーが高い後者のほうが温かい。

つまり、フィルパワーが高いシュラフはより少ないダウン量で高い保温力を維持できる。生地の重さや構造もあるので「フィルパワーが高いダウンシュラフは軽くて温かい」とは一概に言い切れないが、フィルパワーが軽量化への指針となることはたしかだ。

体に合ったシュラフをチョイス

一般的なシュラフのサイズは適応身長~183㎝くらいを想定して作られている。たとえば身長160㎝の女性がこのシュラフを使ったらどうなるか。

足元はスカスカでうまくダウンに温かい空気を蓄えることができず、冷えやすい足先がさらに冷えて安眠することができないだろう。「女性は寒がり」とひと言で片付けられる小柄な女性にとっては深刻な問題だ。

そこで、ナンガやイスカなど国産ブランドは身長170㎝以下のユーザーを対象としたショートモデルを展開している。ウィメンズモデルを展開する海外ブランドもあるにはあるが、やはり日本人には大きめなのでジャパンフィットがありがたい。

サイズに合ったシュラフを選べば、温かいし、軽いしで一石二鳥なのだ。

フードや背中がなくてもへっちゃら

ダウンの保温力は落とさぬまま、軽くしたい! という人にはシュラフの一部を削ったULモデルがおすすめだ。たとえば左のようにフードを削ったフードレスタイプ。

ビーニーやフリースのフードで頭部を保温すれば夏山なら問題ない。また右のように体とスリーピングマットに押されて保温力を失う背中部分をいっそのこと削って掛け布団のようにしてしまえ! という発想で生まれたキルトタイプも。

マットの長さは1mほどでも十分

空のバックパックを足元に敷けば保温性が高い立派なスリーピングマットになる。いつもバックパックの置き場所に困っている人にとっては一石二鳥だ。

つまり、マットは肩からお尻にかけて約120㎝あればこと足りる。ではこの写真のサーマレスト/プロライトでサイズ別に重量を比較してみよう。頭からつま先までカバーする長さ183㎝のLサイズは重量460g。一方、写真の長さ119㎝のSサイズは310g。バックパックをマットにすれば150gも削れるのだ。

カタチで軽くする

マミー型と封筒型の頭部を比較してみよう。

軽いスリーピングマットを選ぶときはその形にも注目したい。軽量とうたっているモデルは、角が削られ、足元へいくにしたがって細くなるシュラフのようなマミー型を採用しているものが多い。

体の形に合わせることで4角を削り、軽量化、かつコンパクト性を高めている。とはいえ、長方形の封筒型は寝返りを打っても体がマットからはみ出さない安心感や、フロアの角にピッタリと収まりマットがズレない安定感があり、根強い人気だ。

ちなみにクローズドセルマットは、自分で使いやすい形やサイズにハサミでチョキチョキ切れるので軽量化の自由度が広がる。

足元の部分を重ねてみる。マミー型のほうがだいぶ細くなっている。

より軽量モデルにシフトチェンジ

スリーピングマットの種類は大きく分けて3つ。同じサイズを比べた場合、軽い順にエアマット、クローズドセルマット、自動膨張式マットだ。

使用する生地やカッティング、構造はモデルによって異なるので一概にはいえないが、原則的にこの順にスリーピングマットをチェンジしていけば軽量化を実現できる。

一日の疲れをとる大事な睡眠。“軽い”だけに固執せず、収納サイズ、寝心地など複数の要点を踏まえ選択すべし。

出典

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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