山をもっと軽やかに歩くワザ
PEAKS 編集部
- 2021年02月08日
INDEX
荷物を軽くしてから、初めて実践できる足回りの軽量化。ただただ軽さだけを求めると、ケガや破損のもととなるので慎重に。つねに身につけているものだから、軽量化がもたらす歓びは大きい。
文◉森山伸也、池田圭 Text by Shinya Moriyama, Kei Ikeda
写真◉大森千歳、熊野淳司 Photo by Chitose Omori, Junji Kumano
イラスト◉越井隆 Illustration by Takashi Koshii
出典◉PEAKSアーカイブ ソロトレッキング
to Walk
ひとつの目安として1,000g+α
たとえば標準的なトレランシューズとトレッキングポール、ゲイター、サンダルを組み合わせた合計重量は約1㎏。これを最軽量ラインとして自分の装備を見定めてみよう。
シューズをモデルダウンする
さて、あらゆる装備の軽量化でバックパックの重量が劇的に軽くなった。せっかく軽快に歩けるようになったのにゴテゴテのレザーブーツを履いていてはもったいない。バックパックの軽量化が実現したらシューズの軽量化に取りかかろう。
でもやり過ぎはいけない。たとえばハイカットモデルからトレランシューズにいきなりチェンジすると、いままで保護されていた足首はちょっとした段差でも捻挫しやすくなる。
ほかの装備は大胆に削ぎ落としてもいいが、足元だけは一歩一歩慎重に軽量化を進めることが肝心。右のようにシューズを4モデルに分けて段階を踏んで軽量化することをおすすめする。
ポールをアルミからカーボンへ
手元にあるアルミ製トレッキングポールをできれば剛性やスペックはそのままにもっと軽くしたい。ならば、まずポールの素材をカーボン製にしてみよう。
競技用ロードバイクのフレームなどに用いられるカーボンは剛性があり、しなやかで、軽く、錆びないという特長がある。つまりカーボン製のトレッキングポールは軽いゆえに女性でも取り回しがしやすく、上半身の疲れが軽減されるのだ。
またバックパックに外付けしても重心が偏ることがない。ただ少々値段が張ることが唯一の欠点だ。写真はブラックダイヤモンド/アルパインカーボンコルク。2段階伸縮タイプで重量520g(ペア。現行品は475g)。
ゲイターは短くのびのび
登山用ゲイターといえば、右のような防水透湿性を兼ね備えたヒザ下まである丈の長いタイプが一般的だ。アイゼンを装着したり、朝露で濡れたなかを歩くにはこのタイプが重宝するが、水や石の侵入を防ぐだけならば、左のようなトレイルランニング用のモデルで十分。
防水性や耐久性は劣るがストレッチ性が高いので足首が自由に動かせて軽快に歩ける。また透湿性に優れ、夏山でもシューズ内が蒸れにくい。なによりも軽くて、装着しないときはポケットに収まる大きさで携行性に優れる。
ローカットシューズは防水性よりも通気性を重視
トレイルランニングシューズなどのローカットモデルは、たとえゴアテックスなどの防水透湿性素材を使っていたとしても足首周りから雨が入ってくる。
このように防水性のあるシューズは一旦内側に水が入ってしまうと抜けにくいので厄介だ。靴の内部が濡れたままだと足の皮膚がふやけてマメの原因となってしまうからだ。
そんな理由からトレランシューズを愛用しているほとんどのハイカーが防水性よりも通気性を重視した軽量モデルを履いている。「雨が入ってもしょうがない。しかしすぐに体温と太陽光で靴の中を乾かしてやるぞ」という心得なのだ。
それでいて、防水透湿性を高める諸々の素材が省かれているので軽い。
密封袋をマップケースとして活用
地図は雨や汗で濡れないよう、摩擦で傷めないよう、またなくさないようなにかしらのケースに入れておく必要がある。マップケースに軽さとコンパクト性を求めるならば、専用のマップケースよりも市販の万能密封袋に入れるほうがベターだろう。
軽いし、どこでも手に入るし、破れたら次々と変えられるし、なによりもコンパクトで軽い。パンツのポケットやバックパックのサイド、肩にかけたサコッシュなどにも気軽に入れられスムースに地図を見ることができる。
生地はいたってクリアなので細かい等高線なども見やすい。紛失する心配がある人は、細引きをテープなどで装着し、カラビナに付けて持ち歩くと安心だ。
扱いやすくて軽いZ型のポール
とくに下りで負荷がかかるトレッキングポールは、全装備の重量に合わせてチョイスするのが自然な流れだ。トレッキングポールを極限まで軽量化するならばカーボン製で、3段階で折りたためる写真のようなZ型モデルに行き着く。
このZ型の折りたたみモデルは、伸縮モデルよりも強度は劣るが歩くだけなら十分な剛性をもち、コンパクトで収納しやすく、軽いので自分の手の一部のような感覚でストレスなく扱える。ただ長さ調整ができないモデルが多い。
サンダルはつっかけタイプでいい
移動中の車内やテント場、温泉後の電車では一刻も早く窮屈なシューズを脱いで足を休ませてくつろぎたい。流れの強い川の渡渉などで使わない限り、サンダルはカカトをホールドするタイプではなく、つっかけモデルで十分だろう。
軽いうえに、すぐに着脱できて、靴下のまま履ける。つま先も保護してくれるので、ストレスフリー。たとえばキーン/シャンティの重量は約170g。重厚感のあるフォルムからしたら、かなりの軽さだ。
さらにアウトドアブランドの商品であれば、グリップ力がしっかりしているので雨の路面でも滑りにくい。
もっといえばビーサンでもOK
もっとも軽いサンダルといえば、だれもが一度は履いたことがあるビーチサンダルだろう。重い荷物を背負って駅のホームを移動するとなるとつま先をどこかにぶつけそうで怖い。
だが、電車の中やテント場メインで使うなら山サンダルはビーチサンダルで十分だ。就寝時に底冷えを感じ背中が冷たいときは、スリーピングマットの下に引くとそのぺらぺらが保温材となりいくらかマットの保温力をアップさせる。
またバックパックの外ポケットに入れておけば、休憩時にさっと取り出し座布団になる。靴下を着用したまま履けないのが弱点ではあるが、あのわずか100gちょっとのサンダルは夏山でしか味わえない開放感をともなうアイテムである。
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文◉森山伸也、池田圭 Text by Shinya Moriyama, Kei Ikeda
写真◉大森千歳、熊野淳司 Photo by Chitose Omori, Junji Kumano
イラスト◉越井隆 Illustration by Takashi Koshii
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PROFILE
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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。