大峰山脈・大峯奥駈道|百名山の八経ヶ岳、女人禁制の山上ヶ岳を連ねる信仰の道〜その3〜
PEAKS 編集部
- 2021年05月20日
西日本の山のなかで、もっとも奥深く、歩き甲斐があるロングコースはどこになるのか? そのひとつの答えが、大峯奥駈道。奈良県を中心とする大峰山脈につけられた歴史ある古道だ。今回は、百名山あり、女人禁制の区間ありの、この山域の最重要区間を2泊3日で歩いた。
文◉高橋庄太郎 Text by Shotaro Takahashi
写真◉矢島慎一 Photo by Shinichi Yajima
取材期間◉2016年5月19日~21日
出典◉PEAKS 2017年5月号 No.90
>>その1、その2はこちらから
山と宗教、人間と文化が交わる日本らしい道のり。
「大峰山」の最高峰が八経ヶ岳であっても、信仰の舞台としての奥駈道の神髄は、山上ヶ岳にあるといって間違いないだろう。
門の内側に入った途端、僕はビックリした。驚くほど倒木が増え、登山道のようすが激変したのだ。
なんだ、これは!?
女人禁制の場所だからといって、自然の風景がこれほど変わってしまうのは、どうしてだろう?
僕なりに考えてみた。
登山道は踏み跡が薄く、地面も柔らかく感じる。これは女性が立ち入れない場所であるため、必然的に登山者の数が少なくなり、さほど地面が踏まれていない結果であるに違いない。
倒木の数があまりにも多いのは、神域ゆえにできるだけ手を加えず、自然に朽ちるままに放置しているからとも思える。
だが、それ以前に、門の内側はもともと倒木が起きやすい土壌や地質なのではないか。
古の宗教家は稜線上のそんな自然の差異を敏感にとらえ、そこに女人結界門を設定した気がする。
門がそこにあるから内外の自然に差異があるのではなく、元の自然に差異があったからこそ、そこに門を作ったのではないだろうか。
そんな門の内側にある小笹ノ宿避難小屋の近くにテントを張り、2泊目を迎える。明日はとうとう山上ヶ岳と大峯山寺だ。
朝早い大峯山寺はひっそりとしていた。山上ヶ岳も同様で、僕以外の登山者はいない。近くの宿坊や小屋に泊まっていない限り、日帰り往復でここを目指す多くの人の到着は、少々遅めになるようだ。
山上ヶ岳はそこにいるだけで風格を感じさせる山だった。
百名山としての「大峰山」にふさわしい山頂は、やはり山上ヶ岳だ。
八経ヶ岳もすばらしいが、歴史と文化では山上ヶ岳には敵わない。
白装束の男たちが次々に参道を登ってきた。地元の人もいれば、遠くからやってきた人もいるようだ。
僕もいつか宿坊に泊まりながら、白装束で奥駈道を歩くことがあるかもしれない。だがその前に、まずは全区間を踏破しないとなあ。
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文◉高橋庄太郎 Text by Shotaro Takahashi
写真◉矢島慎一 Photo by Shinichi Yajima
取材期間:2016年5月19日~21日
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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