BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • Kyoto in Tokyo

STORE

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

アウトドア・フィールドを “走る、楽しむ、駆け登る” 後編| トレイルランニング&スカイランニング考現学

村越真、石川弘樹、松本大の三氏による座談会の後編をお届け。自然を駆けるスポーツの区分や呼称についての議論は、単純な高度の話に留まるはずもなく……。

>>>座談会の前編はこちら

アウトドア・フィールドを”走る、楽しむ、駆け登る“ 前編| トレイルランニング&スカイランニング考現学

アウトドア・フィールドを”走る、楽しむ、駆け登る“ 前編| トレイルランニング&スカイランニング考現学

2021年07月26日

文◎山本晃市 Text by Koichi Yamamoto(DO Mt. BOOK)
写真◎宮田幸司(座談会写真)、藤巻翔 Photo by Koji Miyata, Sho Fujimaki
イラスト◎ゼンヨージススム Illsutration by Susumu Zenyoji
出典◎別冊PEAKS Trail Running magazine 2018

トレイルランニングとスカイランニングの共通要素

松本 登山とトレイルランニングは別物? スカイランニングは、登山のスタイルのひとつなんですね。

石川 楽しみ方は、登山と一緒。自分の感覚は、トレイルランニングも登山もまったく同じ。無理に切り離す必要はない、ある意味、クロスオーバーしている。

「スカイランナー・ワールド・シリーズ」の1戦「マラソン・アルパイン・ゼガマ-アイズコリー」。スカイランニングを象徴するような岩壁を駆け上がるスカイランナー。
世界最高峰ともいわれるウルトラ山岳レース「UTMB CCC」。トラバース道から稜線へと続くトレイルをゆくトレイルランナー。スタイルやロケーションの特徴は違えど、舞台はいずれもアルプスの荘厳な自然。

T スカイランニングはイタリアの先鋭的な登山家たちの活動が原点だから、まさに登山のスタイルとしてわかりやすい。一方、トレイルランニングにも登山との共通要素はたくさんある。

村越 僕がいつも思うのは、クライミングのグレード。5・10とか、いきなり5から始まる。じつは遊歩道などの1からあって、3になると手を使う必要があるなどの規定があり、それは連続したもの。それで最後に確保しなくては行けないという5がある。日本ではクライミングと登山は別ものといった見方もある。そういう意味では、山の中でも環境が違うとそれに応じてグレードがついていて、実態としてはアクティビティの名前、呼称も変わる。距離とか傾斜だけではなくて、スピードもそうで、歩けばトレッキング、走ればトレラン、それが急傾斜になるとスカイランニング。でも、実態は連続したものでもある。

松本 グレードでいうと、1がトレイルランニングで、2がスカイランニング。三点支持も入ってくるので、スカイランニングは3まである。グレードでいえば、基本的に2が入ってこないとスカイランニングではない。斜度が33%を超える傾斜を含む、といった競技規定もある。結局、鎖場などでは登山の技術が必要になる。山を知らないロードランナーがそのまま走ることはできない。ロードランナーが普段やっていないこともやるのがスカイランニング、というように認識してもらわないと安全面でのリスクが高まる。そういった意味でもスカイランニングという言葉をきちんと使ってほしい、より正確に広める必要があると思うんです。グレードという観点で話すと、とてもわかりやすいですね。

T トレイルランニング、スカイランニング、言葉、名称は違いますが、安全面の観点からすると、いずれにせよ、正しい方法論をとる、必要な技術を身に付けることが不可欠ということでしょうか。

村越 言葉の難しさはジレンマだと思うんですね。つまり、フィールドや条件に合わせた適切な遊び方やり方、ひいては呼び方や名称があると本当はいいたい。例えば、トレランの延長線上にたまたま鎖場があって、そのまま行ってしまう。これは技量が伴わなければリスクが高まる。だから、感じる力、自分の技量を的確に知ってリスクを正確に判断して行動できる力があればいい。ただ、現実はそうではない。そういった際には言葉で区切ることで、フィールドのリクスを知るということにも役立つ。ただ、言葉だけが先行してしまって、トレイルランニングとスカイランニングは違うぞ、という点だけが強調され、本来の役割を果たしていない。本来は連続しているものだから、そのへんが難しい。

松本 グレーな部分がもちろんあっていいと思うんです。最終的には、やっている本人が何をやっているかということをしっかり意識することが大事。

「『縦・高さ』を楽しみ、意識して走るのがスカイランニング。進み続けること、『横・距離』を楽しみ、意識して走るのがトレイルランニング」(石川)

村越 そう、ひとり一人のランナーがそういった感覚を持てるか、ということがとてもキーになりますよね。

石川 里山でも鎖場があるし、レースによってはトップ選手でも4~5時間登り続ける場合や1,000m以上の稜線を行く場合もある。登山とクライミングのように活動フィールドが明らかに分かれていればわかりすい。フィールドや環境の条件などによって完全にスカイランニングとトレイルランニングをすみ分けていくのはとても難しいのではとも思います。

松本 自分ははっきり区別しているんですね。若い世代もそういう意識を持っている人は多い。これはトレイルランニング、これはスカイランニングという違いを明確にしたほうがいい。

石川 そうなってくると、フィールドによって、トレイルランニング、スカイランニングというのを分けるのがいい?

松本 大雑把には分けられる。

トレイルランニングのレースには、トレイルはもちろん、高原や林道、さらには海岸線を走るといったコース設定をする大会もある。九州で昨年より開催されている「阿蘇ラウンドトレイル」。

村越 日本の山登り、マウンテニアリングのなかには岩稜歩きなどもじつは入っている。剱岳のカニのヨコバイなど、岩稜歩きも山登りで、実際、登山者による事故も多数起きている。あいまいさはある程度クロスオーバーしていいと思いますが、逆にリスクにもなっている。

T 完全にすみ分けるメリットもある、ということですね。

松本 グレーな部分ももちろんたくさん残っていますが、ヨーロッパではトレイルランニングとスカイランニングは明確に分かれている。スカイランニングというアイデンティティをとても大事にしている。それぞれに哲学やスタイル、美学のようなものがあって、トレイルランニングもいろいろあるランニング・スポーツのひとつで、アウトドア・ランニング、あるいはマウンテン・スポーツという大きな枠組みのなかのひとつという認識を持っています。それぞれの特性をより明確に把握・区別することで、新しい世界が広がる、生まれると思うんです。

トレイルランナー山田琢也氏がオーガナイズする「志賀高原エクストリームトレイル」。

村越 似たようなケースだと思うのですが、1966年にオリエンテーリングが日本に入ってきてレクリエーション・スポーツとして広まった。1990年代にはパリ・ダカとオリエンテーリングをくっつけたようなアドベンチャーレース、最近ではロゲイニングですね。いずれも地図を使ってチェックポイントを探すという基本的には同じスキルを要求するスポーツ。でも、オリエンテーリングこそがすべての頂点にあって、そのフォーマットに合わないものは違う、という人たちもいる。僕はオリエンテーリング協会の副会長をやっているのだけれども、じつは風当たりが強い。なぜかというと、純粋なオリエンテーリングではないことをたくさんやっているから。

T フレキシブルだからですね。

村越 そう、全部のスポーツに共通するのが、ナヴィゲーション・スキルでできる、ということ。僕らは「ナヴィゲーション・スポーツ」と呼んでいて、コアにあるのはナヴィゲーション。それで、フォーマットがすごくしっかりしているものがオリエンテーリングで、もう少し緩くなおかつ大規模にやるのがロゲイニング、登山技術とくっつくとOMM、マウンテンマラソンになる。包括的に全体の概念を作りつつ、それぞれをフィーチャーしていくという感じ。これは松本さんがいっていることと全体像が近いかな。

松本 スカイランニングは、登山という大きな枠組みがまずある。スカイランナーである僕たちは、冬になれば山岳スキーをやっている。キリアン・ジョルネ(注:UTMB、スカイランニング世界選手権三連覇などの偉業を打ち立て続けているスペインのアスリート)もそう。

石川 トレイルランニングとは、山の中、フィールド、トレイルというところを走ること全般。レースであれば闘う、遊びであれば楽しむ。とても自由なものだと思っています。山を移動することの意識やリスクを考えるという点では、トレイルランニングもスカイランニングも変わらない、そんなふうに思っています。

村越 ロードとロード以外と考えると、ロードは管理されている。一方、トレイルは管理されていない。管理されているということは、第三者にリスクを委ねることが一部許される。トレイルはそうではない。だれかに責任を負わせることはできない。これはリスクマネジメントのうえでとても重要なこと。この区別はしっかりと伝えるべきだと思います。

T なるほど、まさに自然の中での行動は自己責任・自己管理ということですね。一方、サッカーとラグビーのようにルーツは同じでも異なる競技が現在はあります。その観点では?
村越 サッカーとラグビーの違いは、ルールができたから。ルールによって関わり方や技術が当然変わってくるというのがスポーツの宿命。遊ぶときは別です。

石川 競技となれば、明確に分かれる。参加者も観戦者も。一個人が自由に山へ入る感覚では、スカイランニングとトレイルランニングはなかなか明確にはいかない、そんな難しさはあると思います。

松本 山登りというマインド、山頂に立とうという思いがあれば、僕はスカイランニングだと思う。その人の思い、気持ち、目的にそういったマインド、哲学があればスカイランニングなんです。見た目の話ではないんですね。

スカイランニングの大会でもトレイルを走る区間がもちろんある。ピレネー山脈を駆け抜ける「スカイランニング世界選手権」。

村越 競技として考えれば、それは明確に分かれる。自分の楽しみでやるのであれば、そこにはそんなに切れ目はないんじゃないかと。大きくは、ロードとロード以外、管理されているところとそうでないところ、というふうに考え方を分けたほうがいい。それは競技であろうが、遊びであろうがいっしょですよね。

山頂付近で、駆け登ってくる選手を応援するという光景もスカイランニングならでは。「マラソン・アルパイン・ゼガマ-アイズコリー」のお馴染みのシーン。

T では、今日の内容を踏まえて最後にみなさんの感想をお聞かせください。

松本 トレイルランナーは延びるトレイルを観て、スカイランナーは聳える山を観る。そういった軸足に違いがあるのだと感じました。同時に、アウトドアスポーツとしての共通点が確認できたことはよかったです。どちらを軸足にするかはその人の志向でよいのでしょうね。

石川 現状、登山者やハイカー、世間一般の人が山を走っているランナーを見てスカイランナーかトレイルランナーかを区別することは難しい。そのようななかで、登ること、頂を目指し、「縦・高さ」を楽しみ、意識して走るのがスカイランニング。一方、進み続けること、ピークや鎖場もときには含めたアップダウンがありながら「横・距離」を楽しみ、意識して走るのがトレイルランニング、と整理できるのかと思いました。

「トレイルランナーは延びるトレイルを観て、スカイランナーは聳える山を観る。そういった軸足に違いがある」(松本)/「自然の中では自分の感覚で周囲を観て、自律して行動できることが必須」(村越)

村越 イタリアの登山家たちがライト&ファストでピークを目指したのがスカイランニングの始まりで、さらにはライト&ファストのほうが安全だという認識もあったところがヨーロッパらしいと感じました。また、立ち位置も競技との関わりも違う私たち3人ですが、自然の中では自分の感覚で周囲を観て、自律して行動できることが必須だという意識を共有していたことは興味深いものでした。

T ありがとうございました。まだまだお聞きしたいことは尽きません。ぜひ、次回開催を楽しみにしております。

SHARE

PROFILE

PEAKS 編集部

PEAKS 編集部

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

No more pages to load