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花と雪と緑の山旅・前編 〜後立山連峰の名山・白馬岳から雪倉岳、朝日岳へ〜

北アルプスのみならず、日本の山のなかでもトップクラスの人気を誇る白馬岳。シンプルに山頂へ往復する登山者が多いが、その北側には足を延ばさないのは惜しい名山が控えている。日本200名山・雪倉岳と、日本300名山・朝日岳だ。それらの山々を貫く山旅には、北アルプスの魅力が詰まっている。

文◉高橋庄太郎 Text by Shotaro Takahashi
写真◉加戸昭太郎 Photo by Shotaro Kato
出典◉PEAKS 2020年6月号 No.127

取材期間:2019年8月4日~6日

日本百名山、日本200名山、日本300名山を一気に縦走!

登山口の猿倉を出発すると、雪をたたえた稜線が見えてくる。今日中にあそこまで登り詰めなければならない。

これで何度目の白馬大雪渓だろうか。ここ何回かは下山時に使っていたので、登りは10年ぶりくらいか? 先ほどまで周囲を覆っていたガスが流れ去ると、前方を登る登山者の姿が点々と行列になっているのがよく見えた。

それにしても、8月だというのに足元は氷点下。雪渓の上に深さ15~20mのクレバスが現れる年もあり、ここにどれだけの雪が残されているのかと考えてしまう。

ちなみに「日本三大雪渓」といえば、白馬大雪渓、針ノ木雪渓、剱沢雪渓だ。すべて北アルプスに位置しており、北アルプス三大雪渓とも言い替えられる。そのなかでは、じつは針ノ木雪渓はさほど大きくもなく、年によっては完全に消滅してしまうこともある。

つまり、実際は白馬大雪渓と剱沢雪渓が両巨頭。面積では剱沢雪渓が一番である。だが、二番目であるはずの白馬大雪渓のほうがなぜか巨大に感じる。なにしろ剱沢雪渓には名称に「大」が付いていないのに、こちらは白馬 “大” 雪渓。里に近くて昔からよく知られていたこともあるのだろうが、剱沢に比べて谷が広々としており、開放的な雰囲気だからだろう。

雪渓に入る前に、6本爪のクランポン(アイゼン)を装着。

登りながら、休憩しながら、ほかの登山者と何度か雑談をした。

多くの人の計画は、シンプルな白馬岳山頂往復か、北側にまわって栂池へ下山、もしくは南側にまわって白馬槍温泉経由での下山らしい。山中1泊でも白馬岳が誇る大雪渓、広大なお花畑、周囲の高山の絶景が楽しめるのだから、満足度は高いはずだ。忙しい人でも計画しやすいのがいい。

だが、僕の計画はもう1日プラスして、2泊3日。標高2932m、日本百名山の白馬岳に登ったあとは北に向かい、日本200名山の雪倉岳、日本300名山の朝日岳を一気に踏破する予定である。とくに雪倉岳は白馬岳以上に僕のお気に入りの山で楽しみだ。

山に「静粛」であることを求める僕には、白馬岳に比べて登山者が格段に少ない北側の縦走路こそ、今回のメイン。もちろん白馬岳はすばらしいのだが、人気山域ゆえに少々混雑しすぎていて、落ち着いて山を楽しめないのである。

登山者が列をなす白馬大雪渓。氷のように締まった雪の上は天然のクーラーのようだが、重い荷物と強い日差しで汗が吹き出してきた。
ひんやりと冷たい雪渓の上。風が収まると冷えた空気が雪の上に溜まり、真っ白なガスとなる。ときには周囲がほとんど見えないことも。

雪渓を登っていると、雪渓とは “山中の高速道路” なのだと実感する。一歩一歩ごとに大小の段差があり、大きく曲がりくねる通常の登山道に比べ、雪渓の上の傾斜は変化が緩やかで、しかも蛇行が少なく、おおむねまっすぐ進める。だから、速い。僕個人の実感としては、登りで2倍程度、下りで3倍以上のスピードで行動できる気がする。雪面を転がってくる落石の危険はあるが、夏でも涼しいのもうれしい点だ。

そして、足元さえクランポンなどでしっかり固めれば歩きやすい。新田次郎の小説『強力伝』で知られる小宮山正氏は、1941年8月に花崗岩でできた50貫(約187㎏)の風景指示板を白馬岳山頂までひとりで担ぎ上げたが、この逸話もルートに雪渓が使えなければ実現できなかったに違いない。

雪渓を登り終え、次はガレ場に入る。人気山域だけあって登山道の整備は行き届き、とても歩きやすい。
オレンジ、黄色、白、青、紫……。いったい何色の花が咲いているのか? 周囲は華やかだ。

白馬岳は高山植物の宝庫!

標高差600m、全長3.5km(年や時期にもよる)の雪渓を抜けると、登山道はガレた斜面になり、周囲には高山植物の花が咲く。

ご存知の人も多いだろうが、白馬岳の魅力のひとつはお花畑だ。植物にうとい僕のような男ですら、ときどき足を止めて見入ってしまう。好きな人はいくら時間があっても足りないだろう。

光を浴びるカラマツソウの仲間。白馬岳には至るところに花が咲いていた。

稜線に上がり、キャンプ地にテントを設営する。順調に登ってこられたので、まだ午前10時すぎだ。ひと休みすると僕は身軽な格好で白馬岳山頂へ向かった。雪倉岳に向かうときにも通る場所だが、明日の朝は天気がよいとは限らない。この好天のうちに一度は山頂に登っておこうと考えたのである。

ほかの登山者よりも早めに到着できたため、テントの設営場所は選び放題。僕はいちばん奥の静かなスペースを確保した。

やっとたどり着いた北アルプスの稜線。青空の下に山好きたちのテントが並ぶ。

次第に混み始めたテント場。このあと、カラフルなテントでますますいっぱいになった。

正午近くというタイミングは、各方面から白馬岳へ向かっている人には少し早く、白馬岳付近から出発している人はすでに山頂を通過しているという絶妙な時間帯。そのために山頂にいる登山者は少なめで、思っていたよりも静かだ。スピーディに行動した甲斐があったと、少しうれしくなる。

時間に余裕があるので、テント場から白馬岳山頂へ往復してくることに。荷物が減って、がぜん身軽に行動できる。
山頂は比較的空いていた。計画上、翌日の朝も通ることになるが、景色がいいから何度登っても楽しめる。

その後はテント場でコーヒーを飲んだり、昼寝をしたりとダラダラすごす。今回のコースで余裕があるのは、この初日のみ。明日からはもう少しがんばらねばならず、楽しみな雪倉岳も待っている。いまのうちに休んでおくのが正解だ。

明るいうちに夕食を作る。メニューは謎の多国籍な組み合わせになってしまった。
夕日が白雲をピンクに照らす。夜がもうすぐ訪れる。

さて、翌日。早朝に再び白馬岳山頂を通り、登山道の分岐点である三国境までいったん下る。ここから右に向かって尾根に入れば登山者が多い栂池方面、直進気味に稜線を進めば登山者が少ない雪倉岳方面だ。

三国境とはその名のとおり、三国の境目。現在は長野、富山、新潟の県境である。ときどき「北アルプスは長野、富山、岐阜の三県にまたがる」などという表現を山雑誌などで見かけるが、じつは新潟県も北アルプスの範囲なのだ。白馬岳の古名のひとつは「大蓮華岳」だが、これは昔から越後(新潟)や越中(富山)での呼び名。今回の下山予定地の「蓮華温泉」も新潟県内で、ここには古名の「蓮華」が残っていることになる。

2日目からは本格的に縦走が始まる。白馬岳の山頂をすぎると、中央の雪倉岳から朝日岳へと連なる稜線が遠くまで続く。こんなに美しい場所を長々と歩いていけるとは幸せだ。

 

>>>後編につづく

高橋庄太郎

山岳/アウトドアライター。長距離縦走を愛し、北アルプスはホーム山域。著書に『トレッキング実践学 改訂版』『北アルプス テントを背中に山の旅へ』(エイ出版社刊)など。

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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