中上級者向け軽量ソロテントの選び方
PEAKS 編集部
- 2021年10月07日
ソロトレッキングといえど、使う道具は、パーティ登山と基本的には変わりない。ただし、テントだけは別。ソロ登山者にとって、テントの選択は重要な課題となるのだ。この夏、自分用ソロテントを新調した山岳ライターが、自信の経験から選び方のポイントを解説。
文・写真◉森山憲一 Text & Photo by Kenichi Moriyama
製品写真◉廣瀬友春 Product photo by Tomoharu Hirose
出典◉PEAKS 2018年10月号 No.107
“1泊30ℓ”を可能にするためのソロテント計画
30ℓのバックパックでソロテント縦走をするというのは、かなり難しい話だった。だが、近年の軽量コンパクト化が進んだ登山用具を活用すれば、夢の話ではなくなってきた。私もそこを目指したい! が、それにはテントがひとつのネックになっている。そこで思い切って、現代の最先端軽量コンパクトを導入しようと思うのである。
ソロ登山において、テントの選択というのは、装備計画の核心といっていいくらい重要なテーマだ。なにしろ、テントの重量は、1人用モデルで通常1~2㎏。数ある登山用具のなかでトップクラスに重量級である。たとえばヘッドランプの重量を気にしたところで、得られる軽量化効果はわずかだけれど、テントは違う。テントを変えるだけで、1㎏ほどの装備軽量化も十分可能になるのだから。
一方で、テントは高価でもある。安くても3万円前後。高いものだと、10万円ほどにもなる高額装備だ。そうそう頻繁に買い換えるわけにはいかないし、いくつも所有するのも通常は難しい。店頭でも、張った状態で展示されていることは少ないので、気になるテントを詳しく比較してみるのもやりづらい。テント選びは、とても悩ましいテーマなのだ。
さてこの夏、私もこの悩みに直面した。近ごろソロ登山の機会が増え、ソロテントを新調したい欲求が高まってきたのである。
私が所有しているテントは以下の3つ。
- 1人用……ライペン・エアライズ1(1,360g)
- 2人用……ビッグアグネス・コッパースプールUL2EX(1,536g)
- 3人用……ライペン・エアライズ3(2,070g)
エアライズ3は、2~3人で使うとき専用。ソロのときに使うのは、エアライズかコッパースプール。コッパースプールはバリエーションがいくつかあるが、私が使っているのは、インナーテントにメッシュを使っていない日本仕様(現在廃盤)。2人用としてはやや狭く、ソロで使っても無理がないサイズなので、近ごろもっとも多用しているモデルだ。
ところが重量は1,536g。2人用としては十分軽いし、ソロ用としても許容範囲ではあるけれど、可能な限りの軽量化をコンセプトに、新たにソロ装備を組み直したい私にとっては、やや気になる数字だ。ならばエアライズ1を使えばよいのだが、コッパースプールで広い前室と長辺側の入口の使い勝手のよさを知った身には、エアライズを夏山で使うのは少々つらい。それにかつては超軽量といわれた1360gという重量も、現在となってはやや物足りなく感じる(なので、いまではほぼ冬山専用機として使っている)。
そんなことを背景に、この夏前、毎日カタログやインターネットを見つめて、ソロテント新調計画を考えていた。新調するテントのテーマはひとつ。これまでにない軽さを追求すること。エアライズ1が1,360gなので、1㎏アンダーに収めることが目標だ。そのテントを核にして、30ℓクラスのバックパックで北アルプスをソロ縦走するのが私の野望なのである。最先端の軽量テントを使用すれば、それはもはや夢ではない。
私が新テントに求めた要素の優先順位は、①価格の安さ、②軽さ、③居住性、である。私は山岳ライターであるが、価格はやはり気になる。どんなに②と③が優れていても、ソロテントで6~7万円以上となってくると、さすがに選択肢には入りにくい。そして軽さを追求するとはいえ、ワンポールテントやツエルトまでは突き詰めたくない。それらは張るのに手間がかかるし、森林限界上での使用にも不安がある。私がテントを使うのは、北アルプスなどの高い山が中心となるので、ある程度の耐風性や強度もほしいのだ。
このあたり、テントに求めるものの優先順位は人によってかなり異なる。重さはあまり気にならず、居住性を優先したい人もいるだろうし、その逆もいる。ソロテントは人の数だけ正解があるので、私の選択があなたにも合っているとは限らない。私は基本、軽さを再優先で追求しつつ、最低限の快適性も求め、森林限界上で使える強度がありさえすれば、長く使える耐久性の高さはあまり気にしないというタイプだ。
そういう人間がソロテントを選ぶとどうなるか、ということを以下レポートしていこうと思う。したがって、「軽い」とか「居住性がよい」などと私が言うとき、そこには私基準のバイアスがかかっている。そのことを頭において読んでいただくことを、ぜひおすすめしたい。
>>>“テントのタイプから選ぶ” 編につづく
森山憲一
山岳ライター。元PEAKS副編集長。登山歴は30年。テント泊に快適性はあまり求めない。ウルトラライトほど突き詰めはしないが、装備の軽量コンパクト化は好きなほう。1泊の夏山ソロ縦走なら、近ごろは40ℓのバックパックでほぼ十分。これを30ℓまでコンパクト化したいというのが、現在の課題。
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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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