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『テント泊登山の基本テクニック』|PICK UP BOOK

文◉森山伸也 Text by Shinya Moriyama
写真◉上飯坂一 Photo by Hazime Kamiiisaka
出典◉PEAKS 2021年12月号 No.145

reviewer 森山伸也

アウトドアライター。越後の山村に古民家を得て先人に知恵を乞いながら暮らす。北欧のトレイルに精通し、著書に『北緯 66.6°ラップランド歩き旅』(本の雑誌社)。Twitter : @moriyamashinya

山にも持っていけるポケット判の指南書でテント泊の揺るぎない礎を築け。

小誌読者にとっておなじみの山岳ライター高橋庄太郎さんの新刊である。ぼくと庄太郎さんとの付き合いは、小誌創刊年2009年より前なので、かれこれ12年以上になる。知床半島をカヤックで一周したのも、パックラフトを担いで西表島を横断したのも、ジムニーに折りたたみカヤックを2艇積んで四国へ自走し、吉野川を下ったのも庄太郎さんのひと声からはじまった。雪の蔵王連峰を縦走したときは、仙台の実家に泊めてもらいお母さんの手料理をごちそうになった。弟のように可愛がってもらった。事実、庄太郎さんには弟がひとりいる。だからなのか、面倒見がすごくいい。

その兄貴肌は山を下りてからも健在で、当時ライター駆け出しだったぼくはキャプションの書き方や請求書の書式などいろいろ教えてもらった。感謝しかない。

この著書は、そんな庄太郎さんの面倒見の良さがよく現れている一冊である。テント泊初心者がこれから抱えるだろう困難を隅から隅まで洗い出し、一つひとつていねいに写真入りで解決策を示している。大手出版社の元編集者である兄貴は、必要な写真撮影から構成、執筆にいたるまですべての作業をひとりでやったに違いない。そこで山と溪谷社の担当編集者に聞いてみたら、やっぱり兄貴がハンドルを握って突っ走った一冊だった。編集者がやるべき領域にまでズンズン首を突っ込んでくるから、煙たがる編集者もいるだろう。だが「こんなものを作りたい!」という確固たる信念と情熱、具体的なイメージがあってこその猪突猛進なので、だれも文句のつけようのない仕上がりなのである。

タイトルには“登山”とあるが、テント泊はなにも登山に限ったものではない。人間が移動しながら幾日も野外ですごすとき、安全に体を休めるための手段である。登山だけじゃないのが、庄太郎さんの強みでもある。標高3000mの日本アルプスから知床半島のゴロタ浜、西表島の密林まで、日本中の隅々で野宿をしてきた。いろいろな自然環境でいっぱい苦労をしたぶんだけ、解決する引き出しをもっている。本書を通じてそれを惜しみなく、与えてくれる。

テントを張って、寝床を整え、食事を作る兄貴はいつでもどこでも子どものようだった。だれも知らない秘密基地にこっそり忍び込んで夜を明かそうとする好奇心剥き出しの少年みたいに目をキラキラさせ、なかなか眠りにつかない。

ひとつひっかかった。タイトルの「基本」は「パーフェクト」なのでは? 本書のあとがきで庄太郎さんはこう書いている。

『登山という趣味を長い間楽しむのなら「基本」というものを早めに自分の体になじませておいたほうが、その後がとても楽になるだろう。』

タイトルの「基本テクニック」とは快適にすごせる最低限のノウハウという意味ではない。時代が流れようと、道具が進化しようと、テント泊を安全に楽しむ心構えや実践は変わらない。その絶対的な地盤、揺るぎない土台を手にするための書という意味なのである。

テント泊登山の基本テクニック

  • 高橋庄太郎 著
  • ¥1,100
  • 山と溪谷社

2013年に発売された、山岳ライター高橋庄太郎氏の著書『テント泊登山の基本』に最新の情報と写真を入れ込み、文章を刷新したテント泊登山教本の決定版。山岳・アウトドア雑誌、テレビなどのメディアで活躍する著者がテント泊登山で得た知識、裏技を惜しみなく投入。スリムな新書判は、山へも持ち出せるバイブルとなる!

「テント泊登山の基本テクニック」をAmazon.co.jpで見る

出典

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PEAKS 編集部

PEAKS 編集部

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

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