変わり続けるTBジャケットの現在地・前編
PEAKS 編集部
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ティートンブロスのフラッグシップ「TBジャケット」がこの冬で14年目を迎える。メイン素材変更や細部のアップデートを重ねながらも長く愛され続けた理由はなにか。過去最高スペックを叩き出したという最新モデルに至る歴史を振り返る。
文◉寺倉 力 Text by Chikara Terakura
写真◉太田孝則、小関信平、熊原美惠 Photo by Takanori Ota, Shimpei Koseki, Yoshie Kumahara
イラスト◉田中 斉 Illustration by Hisashi Tanaka
出典◉PEAKS 2021年12月号 No.145
企画協力◉ティートンブロス www.teton-bros.com
今シーズン、新素材を纏いさらに進化したティートンブロスのアイコンモデル
登場以来、14年間にわたって基本デザインを継承し続けている「TBジャケット」。ロングセラー製品でも、実際は何度かのモデルチェンジ経ている例が少なくないが、これだけ長きにわたって、一見した見た目の変わらない1着のジャケットがフラッグシップとしてブランドを支え続ける例は世界的にもめずらしい。
それは開発当初のコンセプトとデザインが優れていたという証であり、いいモノを長く使い続けて熟成させるという進化の方針を、多くのファンが支持したということにほかならない。
ティートンブロスと付き合いの深い国際山岳ガイドの山岸慎英さんは、TBジャケットの進化について、最新カタログにこんなインプレッションを寄稿している。
「初期モデルと最新モデルを比べたとき、一見すると大きな違いには気がつかないが、実際に着てみると別物かと思えるほど機能の進化を実感できる」
実際のところ、現在までで目立ったモデルチェンジといえば、メイン素材の変更ぐらいだ。東レのダーミザクスからポーラテック・ネオシェルへ、そして今回、東レの新素材「タズマ」へという3回のファブリックチェンジ。また、同じメンブレンの防水透湿素材でも基布(表地)や裏地の変更も何度か行なわれてきた。
パーツやシェイプのアップデートは毎年のように行われている
一方、毎年のようにアップデートされているのが、パーツやシェイプなどディテール部分だ。
パーツ類は、より使いやすく機能的で、耐久性に優れた資材が見つかれば、フィールドテストを経て積極的に採用してきた。ビスロンファスナーやコヒーシブコードストッパー、ファスナースライダーなどがこれにあたる。
さらに手を掛けられているのがシェイプの調整で、肩の可動域や腕の上げ下げ、フードのフィット、襟の高さや首回りのカバーなど、毎年センチ単位、ミリ単位での調整が行なわれてきた。
仕様については、初期段階でアングルベンチレーションが大きく改良されたこと、パネルごとのボディマッピングが採用されたこと、メッシュのインナーポケットの大型化などが挙げられるが、これはパーツやシェイプの変更とも連動した部分もある。
ティートンブロスがこうした開発方針を貫いている理由は、服飾ブランドではなく、山で使う道具を作っているという発想に貫かれているからだ。ファッションではなくギア。それゆえ変化は意匠ではなく、機能性を極め続けることに向けられてきた。
だが、一般的にはシーズンごとにモデルチェンジしたほうが、マ ーケティング的に有利である。「今年の新作」と題したわかりやすい変化のほうがアピール度は高い。その一方で「今年は袖口に斜めの切り返しを入れて、腕の前方への動きをスムーズにしました」といわれても、その価値を瞬時に見抜ける人がどれだけいることか。だが、その微細なアップデートを本当の意味で理解できた少数の専門店とコアユーザーがティートンブロスを支持したことから、このブランドの躍進は始まった。
TBジャケットは、もともとバックカントリーを想定して開発された製品である。雪山を登って、滑るための機能を追求してきた。それをベースに他のアクティビティ向けに転換したのが、現在のティートンブロスのシェルラインナップである。特徴的なアングルファスナーを応用した「ツルギジャケット」はアイスクライミングを想定したデザイン。アルパインクライミング向けに細身にリシェイプしたのが「クライマティックジャケット」。いずれもTBジャケットの血を分けた兄弟である。
TBジャケットの変遷
数回のメイン素材変更のほかは、シェイプやパーツなどのアップデートのみで初期モデルから現在に至るまで基本デザインは大きく変化していないことがわかる。
【2008年】これが記念すべき13年前のファーストモデル
初代はダーミザクスをメイン素材に、パターンは現在とは大幅に異なるが、大型のアングルベンチレーション、ふたつの胸ポケット、広い袖口などはこの段階から採用されている。
グローブでストレスなく袖を通せる大きな袖口とラップタイプのカフも現在に続く特徴。
【2010年】パターンを大幅に改良より体の動きに沿うものに
パタンナーを雪山に誘い、実際のフィールドでの登る、滑るというアクションを見てもらったうえで、パターンを徹底的に改良。これが現行モデルまで長く続くベースになる。
腕の可動範囲を大幅に広げるカッティング。上の初代モデルと比べると違いは一目瞭然。
【2013年】ポーラテック・ネオシェルにファブリックチェンジ
最初のファブリックチェンジ。基布にストレッチナイロンを使ったネオシェルをいち早くメイン素材に採用。シームテープをナロータイプに、裾を超音波圧着に変更。
超音波圧着に変更した裾まわり。縫い目がなくなることで浸水のリスクが軽減されている。
【2015年】ボディマッピングを採用し強度と運動性を両立
フード、肩、腕の外側、裾には強度の高いサプレックスナイロン。腕の内側と体幹には運動性に優れるストレッチナイロンを配置。フロントをビスロンファスナーに変更している。
フードを大改良。内側にスリーブを設けて冷気の侵入を防ぎ、アイレットストッパー採用。
【2017年】ポーラテックと共同開発のニットバッカーを採用
共同開発したニットバッカーのネオシェルを世界に先駆けて採用。従来のトリコット裏地に比べて保水しにくく、透湿性を妨げない。フードにはコヒーシブコードストッパー採用。
縦方向はコヒーシブ、後部はアイレットという現行のドローコードストッパー方式が完成。
【2020年】基布をより耐久性の高いサプレックスナイロンに
基布を100デニールのサプレックスナイロンに変更して耐久性をアップ。ベンチレーション周辺のパターンを改良し、開口部を大きく変更。インナーメッシュポケットの大型化。
マチ付きで大型化したインナーメッシュポケット。濡れたスキーグローブも収納できる。
>>>後編につづく
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文◉寺倉 力 Text by Chikara Terakura
写真◉太田孝則、小関信平、熊原美惠 Photo by Takanori Ota, Shimpei Koseki, Yoshie Kumahara
イラスト◉田中 斉 Illustration by Hisashi Tanaka
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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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