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南アルプス幕営天望紀行・前編 グラデーションの空を見上げ、雪化粧の白峰三山に心酔して。

寒いよりは暖かいほうがいい。荷物も重たいよりは軽いほうがいい。それでも、面倒なテント泊でわざわざ雪山に向かう理由とは――。

文◉泥谷範幸 Text by Noriyuki Hijiya
写真◉宇佐美博之 Photo by Hiroyuki Usami
取材期間◉2020年1月3日〜4日
出典◉PEAKS 2020年12月号 No.133

余裕のなさをポーカーフェイスで隠す、昭和男のダンディズム。

氷点下をはるかに下回る朝晩の気温。バックパックにはクランポン、アイスアックスなどの無雪期は縁のないギアがずっしりとプラスされ、ちょっとした登りでも息が切れる。さらに、水は凍るし、場所によってはいちいち雪を溶かして水を作らないといけない――。

自由気ままなイメージの夏のテント泊に比べ、雪山でのテント泊を想像するとつらいシーンばかりが思い浮かんでくる。小屋泊だったら行動中の寒さだってツンデレのツンの役割を果たすが、テント泊はデレが少なすぎて、そもそもツンデレが成り立っていない。それでも僕は、なぜか雪山でのテント泊を毎年繰り返している。

* * *

冬しか使わない70Lのバックパックを背に南御室小屋へと向かう。登山者が多いので雪が踏まれていて歩きやすい。

2020年の正月。僕は山仲間ふたりと南アルプス・鳳凰三山のふもと、夜叉神峠登山口に立っていた。この日は3人で鍋を食べる約束をしていて、その仕込みは僕が担当。野菜、鶏肉、ゆでうどんなどの食材をかなり多めに買い込み、その重さだけでも相当なものになっていた。

「あれ、食材どうしました?」

カメラマンの宇佐美さんに聞かれるが、何食わぬ顔でこう答える。

「あー、それほどの量じゃないからバックパックに余裕で収まったんだよね」

我慢することが美徳と言い聞かされて育った昭和男の悲しい性。本当はトータルで20kgを超える重さだっただけに、少し持ってもらいたかったのだけれど……。

薬師岳と観音岳。今回目指すのは鳳凰三山のうちの二座。途中の南御室小屋でテントを張り、翌日は夜明け前に出発、観音岳あたりでご来光を拝もうという計画だ。

登山口から1時間程度の登りで白峰三山の展望台、夜叉神峠へ。ここだけを目指して来る人も少なくない。

夜叉神峠まではつづら折りでガツガツ登り、夜叉神峠に出てからは広めの尾根をゆるゆると歩いていく。20kgオーバーの荷物でも余裕で……と言いたいところだが、わずかな登りですらつらく感じる。それもそのはず、前年の夏山シーズンが終わってから、しばらくはテント泊装備で山を歩いていなかった。

「食材が重そうですね。少し持ちましょうか?」

バリバリの山女子、藤田さんが助け船を出すが、「じゃあ鶏肉だけでも」なんて言うわけにはいかない。「女子の荷物は持ってあげないとだめだよ」と、思春期に姉から嫌というほど聞かされていた。ああ、昭和男はつらいよ。

夜叉神峠から鳳凰三山への向かう途中に位置する南御室小屋。

体力の残量がゼロに近くなったころ、南御室小屋に到着。小屋の前にはすでに10張くらいテントが設営されていた。僕らはまだテントが張られていないサイトの奥のほうに陣取る。3人で雪を踏みならし、それぞれのテントを設営。3つのテントのちょうど中間地点、キッチン&リビングとなる場所に食材を広げた。ここからは攻守一転、僕の出番だ。

>>>後編につづく

南アルプス幕営天望紀行・後編 グラデーションの空を見上げ、雪化粧の白峰三山に心酔して。

南アルプス幕営天望紀行・後編 グラデーションの空を見上げ、雪化粧の白峰三山に心酔して。

2021年11月26日

※この記事はPEAKS 2020年12月号 No.133からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっています。

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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