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【大山】西日本屈指の大斜面を滑る Part 1

日本各地に「バックカントリーの名山」と呼ばれる山があるが、そのなかでもっとも西に位置するのが鳥取県の伯耆大山だろう。この春僕は開山1300年を迎えるこの由緒ある霊山を初めて訪れたのだが、そこには想像を絶するスケールの大斜面が待ち受けていた。

この記事はWHITE MOUNTAIN 2018(2017年11月刊行)からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっています。

ホーボージュン=文 Text by HOBOJUN
古瀬美穂=写真 Photo by M.Furuse
福瀧智子=編集 Edit by T.Fukutaki
佐藤優=ガイド Guide by Y.Sato
取材期間◉2017年4月3日〜4日
出典◉WHITE MOUNTAIN 2018

大山北壁の山容は超アルパインだ。稜線はどこもかしこもゴリゴリに尖りまくっていて、眺めるだけで気分がアガる。ドキドキしながら高度を上げた。

歩きやすい尾根を順調に登っていく。六合目を越えると北面の巨大なボウル地形が一望で気持ちがアガル。
麓の集落から大山を望む。ここにモンベル大山店がある。
初日は夏山登山道を使ってアプローチ。
明るいブナ林を進む。ボーダーはスノーシュー、スキーヤーはクランポン着用

鳥取といえば鳥取砂丘、ずっとそう思っていました

伯耆大山と書いて「ほうきだいせん」と読めるのはきっと西日本の人間だろう。山好きか寺社マニアでなければ関東以北でこの山を知る人は(たぶん)少ない。

かくいう僕もそのひとりだ。山仲間から「大山は最高だよ」という話はよく聞かされていたが、鳥取方面は疎くまさかこんなにデカくてスティープな山だとは想像だにしていなかったのである。

「大山に行こうよ。今年はヤバイらしいよ。冬のあいだ西日本はずっと降りっぱなしだったからまだパウダーたっぷりだって」

本誌スタッフに誘われ、伯耆大山に向かったのは4月初頭のことだった。その翌々週にアラスカ遠征を控えていた僕にはそれは願ってもいない誘いだった。ビッグマウンテン用ボードでもっと滑りこんでおきたかったし、もし大山がウワサ通りの急斜面ならトレーニングとしても最高だ。

かくして僕はフル装備で米子行きの飛行機に飛び乗ったのである。

*  *  *

アラスカのトレーニングを兼ねフル装備のアバランチパックとビッグマウンテンボードで望んだ。後ろはスキーヤーの本庄さん

今回のメンバーは山岳&スキーガイドの佐藤優さん、本誌編集担当でスノーボーダーのタキ、カメラマンの古瀬美穂さん、常連スキーヤーの本庄聡さん、そして大山の「とやま旅館」の若旦那、兜山(とやま)真宏さんだ。とやま旅館は優さんの定宿であり、若旦那は大山一帯を知り尽くしたローカルスキーヤーだそうで、いろいろ案内してもらうことにしたのである。

現地に着いた僕は、まずはその山塊の大きさに度胆を抜かれた。西の平野部から見上げたときの山容はとても穏やかなものだったが(富士山のような姿から伯耆富士とも呼ばれるそうだ)、山の北側に回り込むと山容は一転して超アルパインになる。稜線はどこもかしこもゴリゴリに尖りまくっていて、眺めるだけで気分がアガる。

また今年は積雪量が非常に多く、あたり一面真っ白だ。鳥取と言えば砂丘とらっきょうぐらいしか思い浮かばない僕にはこの風景は衝撃的なものだった。

「なんすかこれは……」

「すごい景色でしょう」

標高わずか1729mでありながらこんなにも雪が多いのは、日本海に面した独立峰で、冬には寒気の影響を強く受けるからだ。風裏となる南東の斜面には厳冬期には深いパウダーが吹き溜まる。北海道の羊蹄山なんかとよく似た立地だ。

この伯耆大山は古代からの霊山で、1300年もの長い歴史を持つ。奈良時代から山岳信仰が盛んで、平安時代に大山寺が天台宗の別格本山となると山中には100もの寺社や伽藍が建てられ、何千人もの僧兵が修行に集まるようになった。かの有名な武蔵坊弁慶も大山を訪れ「大山寺の釣り鐘を担いで出雲まで歩いた」という怪力伝説を残している。

ちなみに僕が住んでいる神奈川県にも大山(こちらはオオヤマと読む)という山があるのだが、その山中に棲む天狗(日本八大天狗のひとりだそうだ)は元々ここに棲んでいたので大山伯耆坊と呼ばれている。天狗界でも伯耆大山はトップブランドのひとつなのだ。

北側大斜面を駆け下りそのスケールに悶絶す

登山口で全員分の登山届けを提出。
『アドベンチャーガイズ』所属の佐藤優さんは海外でも活躍する山岳ガイドだ

翌朝7時にハイクアップを開始した。今回は北側の登山口から夏山登山道を詰めて標高1588m地点まで上がり、別山沢から行者谷を滑る「元谷小屋コース」というコース。とにかく大山らしい斜面を滑りたいという僕のリクエストに応じて優さんたちが選んでくれたコースである。

尾根沿いの登山道は林間が狭いのでシール登高には向かず、スキーヤーは全員スキーをバックパックに着けて登ったが、尾根自体は歩きやすかった。シーズン後半ともなると身体も出来上がっていて、みんないい調子でズンズン登っていく。この一体はブナの原生林が広がり気持ちがいい。「秋の大山も最高ですよ。紅葉がほんとうにキレイなんです」と優さんが教えてくれた。

雄大でスティープな斜面をダイナミックなフォルムで駆け下る優さん。伯耆大山は彼がもっとも愛する山域のひとつ。男らしく荒々しい姿に惹かれるという

その後、五合目でランチ休憩を取り、さらに上部へ。六合目の避難小屋をすぎると北斜面がグーンと斜度を増し、覗き込むだけできんたまがザワザワした。

「うひょー!」

奥に見える大屏風岩が黒々とした岩肌をギラギラと輝かせていた。あのあたりのシュート(狭い谷)はどれも50度以上あるんじゃないだろうか。

若旦那は普段はスキーヤーだが、今回は僕に付き合ってスノーボードで参戦。柔術や総合格闘技もする万能スポーツマンだけあり、スノーボードの滑りもそつない。
本庄さんは滋賀県在住の山岳スキーヤー。アドベンチャーガイズの常連さんでもあり、日本中の山を滑り倒している。

稜線は風が強く、背中に担いだスノーボードが風に煽られて往生した。おそらくこれ以上高度を上げても雪面は風に叩かれてクラストしているだろう。雪質のオイシイところを狙って今日はこのあたりからドロップすることにする。「じゃあ、出ます!」やる気満々でドロップした僕は最初のノールを越えた瞬間「ぎゃあああ!」と叫んでしまった。

「なにこの大斜面!なにこの斜度!」

今年も僕はニセコや大雪、白馬や志賀やかぐら、はては月山や岩木山に至るまで日本中の山を滑りまくってきた。だから身も心もすっかり雪山仕様になっていたはずだが、あまりの急斜に思わずたじろぐ。

>>>Part 2につづく

【大山】西日本屈指の大斜面を滑る Part 2

【大山】西日本屈指の大斜面を滑る Part 2

2021年12月27日

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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