BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • Kyoto in Tokyo

STORE

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

【大山】西日本屈指の大斜面を滑る Part 2

開山1300年を迎えた2017年春の伯耆大山にパウダーを求めて向かった。ホーボージュン氏にとって初めての大山は、想像を超える大きな急斜面を構えていた。

>>>Part 1はこちら

【大山】西日本屈指の大斜面を滑る Part 1

【大山】西日本屈指の大斜面を滑る Part 1

2021年12月26日

※この記事はWHITE MOUNTAIN 2018(2017年11月刊行)からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっています。

ホーボージュン=文 Text by HOBOJUN
古瀬美穂=写真 Photo by M.Furuse
福瀧智子=編集 Edit by T.Fukutaki
佐藤優=ガイド Guide by Y.Sato
取材期間◉2017年4月3日〜4日
出典◉WHITE MOUNTAIN 2018

聳える峰々、光る大斜面、青い空。すべてが渾然一体となって僕をプッシュする。この全能感、この一体感こそがバックカントリーの醍醐味なのだ。

長いボードを必死に取り回しながらブッシュを縫って滑った。

グイグイと加速するゲンテンスティックを御しながら、僕は必死で円弧を描いた。足元でダブルビンテールがしなり、スラッシュ気味の雪煙が高く舞い上がる。雪は思いのほか硬く、スピードが速くてコントロールが難しい(でも楽しい)。

思い切って板をフォールラインにむけるとえげつないほど加速して大いにビビった(でもやっぱり楽しい)。緊張感と開放感がないまぜになったなんともいえない興奮を胸に、僕は大山の斜面を駆け下った。ヒールサイドからトゥサイドへ、トゥサイドからヒールサイドへと切り返すたび、目に飛び込んでくる景色が変わる。聳え立つ峰々、光るバーン、彼方のブッシュ、そして突き抜けるような青空……。自分を取り囲むすべてが渾然一体となって僕をプッシュしてくる。この全能感、一体感こそがバックカントリーの醍醐味。剥き出しの大自然を滑る最大の楽しみだ。

「いやっっほう!」

歓喜の声をこだまさせながら、僕は初めての大山を楽しんだのだった。

滑り終わって若旦那と記念写真。ニヤニヤが止まらない。

*  *  *

「お待たせいたしました。こちらが当館手作りのごま豆腐でございます」

ネクタイ姿で夕飯の懐石料理をサーブする若旦那は、昼間のやんちゃでファンキーな面影はまるでなかった。五代目当主として、料理長として、また日本酒ソムリエとして客をもてなす姿はプロフェッショナルそのものである。

「当館は江戸中期から続く老舗ですが、じつは創業当時は豆腐屋でした」と若旦那。

「当時の大山は三千人もの僧兵を抱えた修行場で、女人や商いは禁制だったのですが、そんななかで唯一許された商売が豆腐屋だったのです。大豆タンパクは僧兵たちの貴重なエネルギー源だったんですね。その後、僧侶だった兜山梅之丞(とやまうめのじょう)が明治42年にこの宿を始め、以来家族で営み今日に至るのです」と口上もじつに板に付いている。

この日は大山鶏や大山黒牛、松葉ガニや猛者エビなど地元の美味しい食材と若旦那が厳選した極上の日本酒に舌鼓を打った。

「うんめえ〜」

その美味さたるや昼間の山行を上回る衝撃だ。鳥取おそるべし。大山おそるべし。そして若旦那おそるべし!

妖怪板つかみに襲われ転倒者が続出した

最後は大神山神社、そして大山寺の境内へと滑り込む。スキーを脱ぎ、一礼して参道を歩く。1300年ものあいだ、人々はこの霊山とともにあった。

2日目はクルマで山の西側斜面まで足を伸ばし、地元の人が「草鳴社(そうめいしゃ)谷」と通称する上級者向きのコースを滑った。

この日は前日とはうって変わって超テクニカル。狭い沢地形を右に左に当て込みながら滑るのだが、ところどころに顔を出すブッシュや手強い縦ミゾ、凍ったスラフなどに行く手を阻まれ、なかなか思うように滑れない。しかも標高が下がるにつれ前々日に降った雨がストップ雪となり、まるで「妖怪板つかみ」のよう。

こうなると滑っては転び、滑っては転びの雪上障害物競走だ。ガイドの優さんや名手の本庄さんまでが転倒する大乱調となり、みんな最後はヘロヘロになった(まあそれがまた愉快だったんだけどね)。

「同じ山でもこんなにも違うのか」

そんな印象が強く残った。これだけ大きな山だ。きっとまだまだ違う表情を隠しているに違いない。ここはその名の通りの”ビッグマウンテン”なのだ。

鳥取にこんなに大きな山があるなんて。

こんなにスティープな斜面があるなんて。

僕は自分の無知を恥じるとともに、なんだか大きな宝物を見つけたような気がした。北海道や東北、越後や信越だけではない。もっともっと西に聖地はあった。

GOWEST. 西に向かえ。

これからはそれが僕の雪山シーズンの合い言葉になるだろう。

早くも来季の計画を練りながら、僕は大きな大きな霊山を見上げたのだった。

ストップ雪と格闘したあとは、全員で「春」に向かって滑り降りた。穏やかで気持ちのよいバックカントリー日和だった。

>>>この旅のフィールドガイドとおすすめスポット情報は次回!

【大山】西日本屈指の大斜面を滑る Part 3

【大山】西日本屈指の大斜面を滑る Part 3

2021年12月28日

Info

SHARE

PROFILE

PEAKS 編集部

PEAKS 編集部

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

No more pages to load