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筆とまなざし#260「『Arts and Climbs』な旅に沖縄へ。〜その1・具志頭ボルダー〜」

ひめゆりの塔に想いを寄せて、具志頭ボルダーでボルダリング。

クライミングをモチーフにしたアイテムを作っていこうと、少し前に妻と一緒に「Arts and Climbs」を立ち上げました。1880年代にイギリスで起こった美術工芸運動「Arts and Crafts」を捩ったもので、柳宗悦らの「民藝」への憧憬の思いも込めて名付けたのですが、クライミングとアート、手仕事をクロスオーバーさせる試みを行なってみようと思ったのです。

妻は鍛金という技法を用いて、真鍮や銅を素材にカトラリーやアクセサリー、オブジェなどの作品制作を行なっています。これまでは別の仕事をしながら活動していたのですが年末で退職し、作家活動に主軸を移しました。それを機に、色々なものをインプットして制作に反映させようと、年明け早々に沖縄へと「Arts and Climbs」な旅に出かけました。「民藝」誕生からおよそ100年。そして、沖縄「返還」50年という節目の年です。

凍えながら岐阜の家を出発するとお昼すぎには那覇へ到着しました。なんと半袖の人もいます。日本って広いなぁと思わずにはいられません。レンタカーを借り、まずはひめゆりの塔を目指しました。沖縄を訪れるのは4回目。最初は高校生の修学旅行で、そのときもひめゆりの塔に訪れたことがありました。塔の前で手を合わせたあと、昨年リニューアルオープンされた平和祈念資料館へ向かいました。麗かな女学生を思わせる白を基調とした建物が印象的です。ひめゆりの塔について自分が言えることなどなにもありません。けれども、自分のなかでひとつの大きな気づきがありました。

1945年3月23日深夜、陸軍病院へ配属された少女たちは、空いた時間に勉強しようと、教科書などを持って向かったそうです。戦時中ではあるけれど戦場がどんな場所なのかも知る由もなかった女学生たち。そのような状況のなかで、抗えない大きな波に飲み込まれるようにして、いつの間にか沖縄戦という凄惨極まりない渦中へと引きずり込まれていったということでした。

翌日、平和の礎を訪れたあと、車で10分強の場所にある具志頭ボルダーへと向かいました。白い砂浜にキノコのような琉球石灰岩の岩が立ち並んでいるようすは、別の惑星に来たかと間違ってしまうほど不思議な風景でした。ほとんどの岩は波の侵食によって下部を大きく削られ、強烈なオーバーハングとなっています。いまから数万年前に珊瑚や貝殻が堆積してできた石灰岩。その表面は複雑で、コルネがあったりポケットがあったりとまさに自然が作り出した造形美。その造形が格好のホールドとなり、強傾斜も相まって立体的なボルダリングを楽しむことができるのです。しかもランディングは白い砂。多くの課題はマットがなくても十分です。自然の造形美を思いきり感じながら登るのはなんて気持ちが良いんだろう。

初日は具志頭を代表する課題「チョックストーンアタック」を登り、二日目は浜で絵を描きました。足元には白い珊瑚の欠片。見渡す海は湿潤な空の色を纏い、岩礁に小さな波が打ち寄せる。こんな楽園のような場所なのだけれど、この場所も多くの人々が逃げ惑い、たどり着き、最期を遂げた歴史を思わずにはいられませんでした。

絵を描き上げるとさっきまで曇っていた空は青空に変わり、明るい日差しが降り注いでいました。クライミングシューズの入ったバッグを背負い、妻が岩登りに興じるほうへと砂浜を歩いていきました。(続く)

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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