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安達太良山

上手に小屋を利用して、2日間じっくり雪山を堪能する『山小屋泊ルート7』

北は福島、南は熊本まで、人気ショップのスタッフにテントを背負わず楽しめる、小屋泊のルート7本を聞いてみました。
アイスアックスや12本爪クランポンなどの基本装備はもちろん、小屋泊でもスリーピングバッグが必要な場合もあるので、確認していきましょう。

文◉吉澤英晃
Text by Hideaki Yoshizawa 
出典◉PEAKS 2020年12月号 No.133

【1.安達太良山】東北の雪山を代表する定番ルート

東北を代表する名峰で、日本百名山のひとつ。出発地はあだたら高原スキー場で、初日はここからくろがね小屋をめざす。

くろがね小屋は安達太良山の麓にある岳温泉の源泉の近くに建っており、もちろん源泉かけ流しの温泉付き。通年で営業しており、無積雪期はもちろん積雪期にも人気が高い。

自慢の温泉を楽しんだ翌日は安達太良山の山頂に向けて出発。この先で背の高い樹林がなくなり、視界が悪いとルートをロストしやすいので注意が必要。

峰の辻の分岐をすぎると山頂はまもなくだ。360度の展望を楽しんだあとは、薬師台展望台へ向けて下るのが早い。

「このルートでは、なんといってもくろがね小屋で、とくに特製カレーと温泉を楽しんでもらいたいです」(リュネッツ・水戸さん)

安達太良山といえばこの沼ノ平の爆裂火口。

冬季はきれいに凍結していてグリーンシーズンとは違った景色が楽しめる。

 

視界を遮るものがないので、天候が良ければ抜群の景色を拝める。

コースタイム

5時間15分

総距離

10km

アドバイス

雪山装備はアイスアックスと10本爪以上のクランポンが必携。安達太良山の山頂に行かなくても、くろがね小屋で温泉に入って帰ってくるだけで十分楽しむことができる。

アクセス

東北自動車道二本松ICより約14㎞、およそ20分。冬季はJR東北本線郡山駅からシャトルバスが運行する。(※スケジュールは要問い合わせ)

レコメンダー

リュネッツ+山の道具屋
店主/水戸岳志さん

オリジナルブランド「シェルト」のデザイナー。よく入る山域は那須を中心に南会津の山々や尾瀬。バックカントリーに行くべくスキーを練習中

【2.西吾妻山】
スノーモンスターを鑑賞できる避難小屋の入門コース

吾妻連峰の最高峰。標高は2,035mもあるが、スキー場のリフトを使う吾ことで一気に高度を上げることができ、さらに歩行距離を短縮することもできる。

「条件が良ければ小屋まで2 〜3時間で歩けるので、体力はそこまで必要ありません。気軽にスノーモンスターを楽しめます」(テクテク・堀さん)

出発は北面にある天元台高原スキー場。リフトを乗り継ぐことで、1,821mにある北望台まで簡単に達する。ここから稜線に向かって坂道を登り、主稜線に出たところで西に向かうと天狗岩。

ここをすぎると西吾妻小屋が見えてくる。ここは避難小屋なので、宿泊装備と1泊分の夕食と朝食を持参しよう。

翌日、小屋を出発すれば西吾妻山の山頂は目と鼻の先。ピークを踏んでから往路を戻る。

山頂へは広大な雪原を歩いて行く。天気が良ければ気持ちいいスノーシューハイキングを楽しめる。

 

樹氷が育つことで出現するスノーモンスター。吾妻連峰の名物ともいえる雪山らしい景観が広がる。

コースタイム

3時間15分

総距離

6km(リフト終点から)

アドバイス

尾根が広いため天候が崩れて視界不良になるとルートを見失いやすいので要注意。避難小屋を見つけることも難しい。
また、降雪直後はスノーシューで歩いたほうがいい。

アクセス

JR山形新幹線米沢駅から天元台高原スキー場までバスで40分。
クルマの場合、東北中央自動車道米沢八幡原ICより約24㎞、およそ40分で到着する。

レコメンダー

登山用品 テクテク
店主/堀 茂記さん

紹介するのはいずれも入門ルートですが、天候が崩れるとトレースが消えてルートを見失いやすいので、天気がいい日を狙って計画してください。

【3.久住山】
くじゅう連山で静かに凍結する2湖をめぐる

山域は大分県の西部、熊本県との県境付近に連なる九重連峰。標高1,791mの主峰中岳を筆頭に、周囲にそびえる沓掛山、久住山、大船山を1泊2日でめぐる縦走ルートがこちら。

途中、中岳の近くにある天狗ヶ城と、2日目に登る大船山で、麓にある凍結した池に出合うことができる。

山頂付近は風雪を遮る樹木がほとんどないので、手先などの冷えに注意しよう。

「九州本土では数少ない1,700m峰が連なるくじゅう連山は、四季を通じて多くの登山者が訪れる人気の山です。そんな名峰の冬の楽しみ方は、自然が作り出した凍結したふたつの池をめぐること。さらに、この時期限定で池の上を歩くことができるのも魅力です。法華院温泉山荘に泊まって温泉を楽しめるのもいいですね」(シェルパ熊本店・阿南さん)

久住山

初日、御池出合からくじゅう名物「氷結の御池」を見下ろす。奥に仰ぎ見るのは最高峰の中岳。

 

久住山

多くの登山者で賑わいを見せる凍った御池。「映える」写真が撮れること間違いなし!

 

久住山

2日目、大船山への登りは吹き溜まった雪で、ふかふかの雪上歩きを楽しめる。

コースタイム

11時間30分

総距離

19km

アドバイス

天狗ヶ城の麓にある御池への道は、天候が悪いときはルートを見失うことがあるので、地図やGPSを必ず準備すること。
足元はチェーンスパイクがおすすめで、トレッキングポールもあると歩きやすい。

アクセス

クルマが一般的。九州自動車道九重ICより約23㎞、およそ40 分で牧ノ戸峠に到着。
冬は牧ノ戸峠〜長者原間でチェーン規制が発令されることが多いため、レンタカーの場合は足回りに注意。

【4.赤岳・硫黄岳】
八ヶ岳主峰、赤岳と硫黄岳に麓から挑む

日本百名山のひとつである八ヶ岳の主峰赤岳と、さらに赤岳の北に位置する硫黄岳の山頂を麓からめざすルートがこちら。

赤岳と硫黄岳は南北に連なる主稜線で繋がっているが、あいだにそびえる横岳付近で岩場の難所が現れるので、縦走する計画は雪山初心者は避けたほうがいい。

「中腹までは風の影響を受けにくい樹林帯のなかを歩きながら、樹氷など冬の寒さが生み出す景色を楽しむことができます。宿泊予定の赤岳鉱泉で装備を整えたら赤岳の頂上へ向けて出発しましょう。稜線に出たら日本アルプスや富士山の大パノラマを味わうことができます。天気によっては赤岳鉱泉でアイスクライミングを体験するのもおすすめです」(シェルパ熊本店・阿南さん)

宿泊予定の赤岳鉱泉で名物のステーキを楽しめる点も魅力的。

赤岳・硫黄岳

行者小屋へ向かう南沢ルート。赤岳鉱泉へ向かう北沢ルートも同様に、なだらかな雪面を歩くことになる。

 

赤岳・硫黄岳

行者小屋から地蔵尾根を登る。ここでは麓の樹林帯で樹氷などを楽しめる。

 

赤岳・硫黄岳

稜線に出ると別世界。天候と風を判断しながら山頂をめざす。

コースタイム

11時間30分

総距離

15km

アドバイス

麓の山小屋からそれぞれの山頂へ向かうルートでは、アイスアックスと12本クランポンが必要。ただし、山小屋までのアプローチはなだらかな行程なので、チェーンスパイクのほうが歩きやすい。

アクセス

JR中央本線茅野駅から美濃戸口バス停までバスで40分。クルマの場合、中央自動車道諏訪ICより約21㎞、およそ30分で美濃戸口駐車場へ到着する。

レコメンダー

シェルパ熊本店
熊本店店長/阿南志武喜さん

連休取得が難しいので最近は登山口の駐車場キャンプを楽しむ。地震以降、ひさしぶりに登った高岳で「阿蘇山が大好き」ということを改めて実感。

【5.天狗岳】
本格的雪山登山の第一歩としておすすめ

北八ヶ岳で雪山初心者に親しまれている天狗岳を登るルートがこちら。

初日は唐沢鉱泉を出発し、三角点がある西天狗に登頂。そして山頂からさらに東へ進んで、八ヶ岳の主稜線上にある東天狗を経由し、そのまま稜線をたどり北へ進んで中山峠をすぎてから、黒百合ヒュッテで一泊する。

2日目は一晩お世話になった黒百合ヒュッテからのんびり下山すれば、出発地の唐沢鉱泉に戻ることができる。

「美しい樹氷を楽しめる樹林帯歩きから、森林限界を抜けた先では凍てついた岩場の通過も経験できます。そして天狗岳の山頂では360度の展望が広がり、阿弥陀岳、赤岳、北アルプスのパノラマも楽しめる。温泉からスタートする行程なので、下山後に唐沢鉱泉で冷えた体を温めるのもまた格別です」(サンデイ・石川さん)

天狗岳

東天狗から振り返り、先ほど登頂した西天狗を眺める。青空に浮かぶ美しい山容を堪能したら、宿泊地の黒百合ヒュッテをめざそう。

コースタイム

6時間15分

総距離

7.5km

アドバイス

天狗岳の手前にある第一展望台で12 本爪クランポン、アイスアックスなどを装着。

西天狗から東天狗への急斜面では滑落、中山峠への下山時は岩稜帯でのクランポンのひっかけと踏み抜きに注意する。

アクセス

JR 中央本線茅野駅から唐沢鉱泉まで送迎バスで40 分(※予約制)。クルマの場合、中央自動車道諏訪
南IC より約20㎞、およそ30 分で唐沢鉱泉へ到着する。

レコメンダー

サンデイ
店主/石川幸之助さん

登山やトレイルランニング、自転車、パックラフトなど広く浅く、なんでもやれば楽しいと日々新しい遊びに積極的にチャレンジしています。

【6.氷ノ山】
但馬の自然をたっぷりと楽しめる兵庫県の最高峰

兵庫県の最高峰として有名な氷ノ山。標高は1,510mだが麓にはスキー場もあり、冬はかなり雪深い山となる。

行程はまず、氷ノ山鉢伏口でバスを降りたら氷ノ山国際スキー場のゲレンデの脇を歩き、東尾根登山口へ向かう。

ここから東尾根避難小屋までの区間がこのルートの最難関。雪深い急登となる。たどり着いた避難小屋で一泊しよう。

翌日、必要な荷物を持ち、わかんやスノーシューの機動力を最大限に活かして山頂へ。

分岐で北西へ向かうと、氷ノ山はまもなくだ。ピークからは日本海や、鳥取県の盟主・伯耆大山も確認できる。広大な景色を楽しんだら往路を戻ろう。

「尾根を歩く眺望がいい変化に富んだコースです。樹氷はもちろん、新緑や紅葉のときも見事なブナ林に出会えます」(ロッジ大阪・織田さん)

氷ノ山

麓にはスキー場が広がり、登山以外のアクティビティも楽しめる。

 

氷ノ山

冬になると現れる樹氷の森。自然が作り出した絶景を堪能しよう。

コースタイム

8時間

総距離

14.5km

アドバイス

危険な箇所はないでの特段注意することはない。降雪の直後などに計画すると、踏み跡がないまっさらな雪の上でスノーシューハイキングを楽しむこともできる。

アクセス

JR 山陰本線八鹿駅より氷ノ山鉢伏口バス停まで約60 分。クルマの場合、北近畿豊岡自動車道八鹿氷ノ山IC より約20㎞、およそ30分で福定親水公園駐車場に到着。
氷ノ山国際スキー場(有料)

レコメンダー

ロッジ 大阪店
シューズ・クライミング用品担当/織田昌弘さん

鈴鹿や比良、大峰の山々をこよなく愛するアルパインクライマー。冬はアイスクライミングからスノーシューハイキングまで幅広く実践。

【7.乗鞍岳】
初めての3,000m級の雪山登山

コースの玄関口は山頂から東面の山麓にあるMt.乗鞍スノーリゾート。スキー場内のリフトを3本乗り継いで、一気に標高を上げる。

初日の行程はリフトトップから樹林帯の間に切り開かれたバックカントリー用の道を歩き、標高差で約400mを登り切って位ヶ原山荘に宿泊。

翌日は小屋を出発してから、歩き始めはなだらかな雪原を登っていく。

坂を登りきった先で左手側に進路を変更すると、ほどなくして乗鞍岳の山頂、標高3,026mの剣ヶ峰に到着する。

「宿泊する位ヶ原山荘ではおいしい鹿鍋を楽しみましょう。そして翌日、山頂へのルートは東向き斜面なので、どこからでもご来光を楽しめます。また、登るほどに間近に望める穂高連峰と北アルプスの絶景も見事です」(アルルスポーツ/羽場崎さん)

乗鞍岳

位ヶ原から山荘方面を見下ろす急登。振り返れば雲海も楽しめる。ここで樹林帯は終わりを告げ、山頂へ向けて雪原歩きがスタートする。

コースタイム

6時間10分

総距離

6.5km(リフト終点から)

アドバイス

位ヶ原山荘から上部が目印のない広大な雪面になるので、悪天時はルートを見失わないように要注意。また、風が強いこともあるので、防風対策はしっかりと準備することを忘れずに。

アクセス

松本電鉄上高地線新島々駅よりMt. 乗鞍スノーリゾートまでバスで約60 分。クルマの場合、長野自動車道松本IC より約41㎞、およそ60分で到着する。

レコメンダー

アルススポーツ
店主/羽場埼 功さん

幼少のころから信州の山に親しみ、日本山岳ガイド協会アルプスネイチャークラブの代表を務めるほか、地元の山岳文化振興にも力を入れています。

 

 

(出典:PEAKS 2020年12月号 No.133)

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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