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GW最後の爽やかな日曜日。好みの配色で描く「追憶の槍ヶ岳」|筆とまなざし#278

 愛用している大好きな色「インダンスレンブルー」で描く、かつての思い出の山行。

紙を変えると新しいイメージが湧き上がってくるから不思議です。先週、ナチュラルワトソンで描いたのをきっかけに湧き上がってきたイメージは、残雪の槍ヶ岳を藍色単色で描くことでした。クリーム色と藍色は大好きな組み合わせで、正月に行った沖縄への旅で出会った芭蕉布の着物も同じ色でした。どうりで印象に残っているわけです。

この残雪の槍ヶ岳は、蝶ヶ岳から横尾に下る途中で撮った写真を元にしています。岩と雪とのコントラストが気に入っていて、これまで何度か描いたことがありました。一枚は大きめの水彩画として、一枚はイベントのデザイン画として、一枚はターポリンバッグに線画で描きました。

ナチュラルワトソンはいつも使っている紙よりザラつきがあり、絵の具の染み込みが早い。そのため鉛筆も絵の具も掠れやすく、紙自体の色味も相まって繊細さよりも素朴さを感じさせます。これまでその独特の質感に描きにくさを感じていたのですが、描き方が変わったせいか、絶妙な雰囲気を醸し出せると感じるようになりました。

爽やかに晴れ渡ったGW最後の日曜日。アトリエはすっかり緑に囲まれ、窓を開けると木の葉が眩しく輝いていました。クライミング日和だけれど、今日は思い立った一枚を描くことにしました。

鉛筆を手に取り、頂上の位置を決めます。これが一番重要なポイント。そして頂上から下に向かって岩肌を描きすぎない程度に描いていきます。鉛筆で細かく描くと絵の具の乗りが悪くなるし、少しラフに描いた方がこの絵には似合います。天地左右は端まで描かず余白を残すことにしました。そして着色。使う絵の具はウィンザー&ニュートンの「インダンスレンブルー」。影を描く場合などにも愛用している、大好きな色のひとつです。微妙な濃淡をつけて岩肌を描いていきました。

「追憶の槍ヶ岳」

ふと、そんなタイトルが思い浮かびました。かつての山行の思い出が、自分のなかで成熟し、新しい画材を得ることで新しいイメージとして湧き立ってくる。それも絵を描く楽しみです。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

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