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蜘蛛の糸から考える、すぐれた生命体と循環できないものばかりを残す人間|筆とまなざし#287

一匹の蜘蛛から生きものとしての循環と効率の良さを知って。

今朝、コーヒーを飲んでいるとすぐ隣に蜘蛛がまるで懸垂下降をするようにするするとゆっくり降りてきました。1mほど降りてきた蜘蛛は止まりました。指で軽く触れると驚いたように、これまたものすごい速さで糸を巻き上げて登り返していきました。よく見ると、足(手?)で巻き上げられた糸は白い小さな玉となって体の前に抱えられていました。けれども次の瞬間、その塊はどこかに消えてしまっているではありませんか。まるで手品のよう。考えられるのはただひとつ、食べてしまったのではないかということ。

インターネットで調べると、全ての蜘蛛ではないようですが、回収した糸を食べ、そのうちの80~90%を再び糸として再利用する種がいるということでした。再利用というよりもタンパク質でできた糸を食べることで体内に取り込み、再び糸を作るのに活用するということなのでしょう。なんとすばらしい循環! そして効率の良さ! それに比べて人間は、なんと無駄なものをたくさん作り、循環できないものばかりを残してしまうのでしょうか。いや、人間も自然の一部なのだから、人間が作り出したものも自然のひとつ。そういう意見もあるかもしれません。たしかに、宇宙的な時間の流れのなかでは、人間が作り出したあらゆるものも、いつか自然に還るのかもしれません。けれどもそれは途方もなく時間がかかりすぎる。自分が生きている時間のうちに自然に還るものではありません。果たして人間は進化した生き物なのだろうか? 蜘蛛のほうが生命体としては優れているのではないだろうか? そう思いつつも、山にも登りたいし岩にも登りたい。旅もしたいしパソコンだって使いたい。そう、人間がいないほうが地球にとって良いのはわかりきっているのだけれど、この世に生を受けて生まれたのならやっぱり最大限この世界で生きたいとも思うのです。そして、少しでも自然に近い生き方にすることはできるはず。

雨ばかり続く毎日です。部屋干し用のポリプロピレンの洗濯ロープに止まった蜘蛛は、ふとそんなことを考えさせてくれるのでした。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

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