山好き大家さんとともに、山好き店主のたつみやさんへ|筆とまなざし#288
成瀬洋平
- 2022年07月20日
保育園時代からの幼馴染であるふたりが楽しむ登山。
「かっちゃんに誘われて、今度燕に初めてテント持って行ってくるんやて。この前庭に買ったばっかのテント張ってみた」
先週のこと。隣に住む大家さんはうれしそうにそう言いました。かっちゃんというのは大家さんの保育園時代からの幼馴染で「たつみや」という村で唯一(?)の飲み屋を営んでいます。たつみやさんは山好きで、お店のなかには『PEAKS』のバックナンバーがずらりと並べられています。
「週末に燕行ったんやけど雨でテントには泊まれんかったわ。1日目で中房から大天井まで行ってきつかったー。そんな話もしたいし、今度かっちゃんとこに飲みに行こう」
そう大家さんに誘われて、妻といっしょにたつみやへ行くことになりました。岐阜に引っ越してから移動がもっぱら車になり、お店に飲みに行く習慣がなくなりました。というかお金がないので余程のことがない限り飲みに行かないと言ったほうが正確かもしれません。たつみやには一度行ったことがあるだけで、行きたいなと思いつつ、なかなかその機会がなかったのです。
お店は集落の中心地、村の真ん中を流れる川沿いにあります。家から車で5分ほどのところで、送迎してくれるので心置きなく飲むことができます。入り口には緑色の暖簾がかかり、「たつみや」と書かれた行灯が壁に備え付けられていました。
久しぶりに生ビールで乾杯。ナスの煮浸し、きゅうりの漬物、トンテキ、ローストビーフ、そしてエビチリ。どの料理も美味しく、この村で飲めるのがとても新鮮に感じられました。
「洋平くん、『山と道』って使ったことある? このザックが軽くて背負い心地が良くて良いんやって」
たつみやさんはそう言うと、奥からバックパックをふたつ持ってきました。大家さんもたつみやさんも60歳を超えているはず。そんなお年で「山と道」のバックパックを使っているとは。道具にとてもこだわっていて、バックパックはもとより、テントなどもウルトラライト系の装備で揃えているそう。すっかり道具に疎くなったぼくは「へぇー」と言いながらその軽いバックパックを手に取って眺めているのでした。
たつみやさんは山で出会った人たちに声をかけては仲間の輪を広げるのが好きなのだと言います。今週末も大家さんやほかの友人といっしょに西穂に行くのだそう。幼馴染とこうして山にいっしょに行けるなんて。楽しそうに話すふたりがなんだか羨ましく、美味しいお酒をいただいて家まで送り届けてもらったのでした。
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