総重量5kgで1泊2日の山旅へ。ウルトラライトやってみました【前編】
PEAKS 編集部
- 2022年11月16日
荷物の軽量化に関心がある人なら、気になっているであろうはずの「ウルトラライトハイキング」。しかし自分が実践するとなると不安点も頭に浮かぶ。途中で壊れないだろうか。使い勝手が悪くないだろうか。軽くても快適性に欠けるのではないか……。そこで編集部がやってみました。極限に軽さを追求することで、なにが得られて、どういう問題があるのか?
文◉森山憲一
写真◉荒木優一郎
PEAKS 2021年5月号
ウルトラライトスタイルを編集部が身をもって検証
「ウルトラライト」というスタイルがある。荷物を極限まで軽量化して、身軽に山を歩こうというものだ。これを専門的に追求しているギアは、頼りないほどにペラペラで、素っ気ないほどにシンプルだ。こんな道具で無事に山を歩けるのかどうか不安を感じるほどである。
多くの登山者もそう感じていることだろう。劇的な軽さに魅力は感じるものの、いったいどこまで使えるものなのか……。
ならば、そのウルトラライトギアで全装備をそろえて、編集部が身をもって検証しよう。ふつうの登山者がオールウルトラライトギアで山を歩き、実際にどのようなメリット・デメリットを感じるのか、試してみようというわけだ。
ギアチョイスにあたっては、日本のウルトラライト伝道師であり、東京・三鷹のショップ「ハイカーズデポ」店主でもある土屋智哉さんのアドバイスを仰いだ。ギンギンに攻めた先鋭的なチョイスではなく、使い勝手や入手のしやすさも考慮して選んだつもりである。
それを実際に背負って山を歩くのは、『ランドネ』編集部のニノミヤ。バリバリ体力派の20代で軽量化は必要ないかもしれないが、使ったことのないギアの数々を前にしてやる気満々である。
行き先は奥多摩・雲取山の山腹にある三条の湯。片道5時間ほどの1泊2日行程を組んだ。さて、ウルトラなライトは体感できるのであろうか。
挑戦&企画はこの二人
ウルトラライトした人/二宮菜花
『ランドネ』編集部員。体育大学ワンダーフォーゲル部出身のガチ山女子。トレランもやるので、ギアの軽量化にはそこそこ関心あり。童顔・小柄だがじつは既婚者で、夫はなんと山岳救助隊員!
ウルトラライトさせた人/森山憲一
山岳ライター。軽量化には関心が高いが、どちらかというと、軽量ギアを選ぶより、持っていく物自体を減らして軽さを求めるタイプ。快適性にはあまりこだわらない。食べ物にもこだわりなし。
今回の全装備がこちら
衣服
1.【ダウンジャケット】ブラックダイヤモンド/ウィメンズ アプローチダウンフーディー(249g)
4.【レインジャケット】OR/ウィメンズ ヘリウムレインジャケット(160g)
5.【レインパンツ】OR/ウィメンズ ヘリウムレインパンツ(165g)
7.【ウインドシェル】ブラックダイヤモンド/ウィメンズ ディスタンスウィンドシェル(72g)
寝具
2.【マット】エバニュー/ FPマット100(142g)
6.【寝袋 】シートゥサミット/スパークSpⅡ レギュラー(429g)
23.【ペグ】10本+収納袋(88g)
24.【張り綱】2㎜×12m+自在×4+収納袋(46g)
27.【グラウンドシート】タイベックシート2m×1m(131g)
28.【テント】ファイントラック×ハイランドデザイン/ツエルト I HD カスタム(241g)
炊事用具・食料
12.【コンロ】エスビット/チタニウムストーブ(15g)
13.【燃料】エスビット/ 5g×8タブレット(44g)
14.【ライター】BIC(14g)
15.【クッカー】エバニュー/バックカントリーアルミポット(140g)
16.【カップ】バーゴ/チタニウムシェラカップ 300(46g)
17.【スプーン】『ランドネ』付録竹スプーン(14g)
19.【水筒】ペットボトル500㎖(20g)
20.【水筒】モンベル/フレックスウォーターパック 2.0ℓ(49g)
21.【テーブル】カスケードワイルド/ウルトラライトテーブル(62g)
22.【食料】夕・朝食(660g)
26.【行動食】2日分/ハリボー、じゃが塩バター、大福(194g)
行動用具
3.【バックパック】トレイルバム/バマー(370g)
8.【地図】国土地理院地形図プリント+ジプロック(20g)
9.【コンパス】Ra-shin 1 /ミニマリスト・コンパス(20g)
10.【靴】アルトラ/ローンピーク5 ウィメンズ(494g)
11.【ヘッドランプ】ペツル/ビンディ(38g)
18.【トレッキングポール】マウンテンキング/トレイルブレイズ 105㎝(260g)
25.【サコッシュ】財布、スマホ、手ぬぐい、目薬、マスクなど(435g)
29.【モバイルバッテリー】5000mAh+ケーブル+収納袋(149g)
30.【エマージェンシーキット】テーピング、絆創膏、エマージェンシーシートなど(289g)
31.【身の回り品】コンタクトレンズ、ウェットティッシュ、日焼け止めなど(20g)
バックパックの重量は5kg。ふだんの半分以下だ!
今回使用する全装備は上のとおり。極端に軽いものや極端に高価なものは避け、ある程度定番的なものをチョイスした。
重量的にポイントとなるのは以下の3つ。
■バックパック
トレイルバムのバマーという30ℓ容量を選択。雨蓋もウエストベルトもない、ただの袋のようなシンプルさだが、重量はわずか370ℊ。通常は、この容量なら軽いものでも700ℊほどで、一般的なモデルなら1㎏くらいにはなる。バマーを選ぶだけでまず500ℊ前後削減できている。
■テント(ツエルト)
ここはけっこう攻めたチョイス。土屋さんのアドバイスにしたがって、ツエルトを選択した。写真で見てもわかるが驚きの小ささ。1人用テントは軽くても1㎏前後なので、ツエルトを採用することで700ℊほどをカットできた。
■炊事用具
バーナー、燃料、クッカーの合計は245g。ガスバーナーを使えばこの3点セットで500ℊは超えるだろう。しかも今回チョイスしたエバニューのクッカーはアルミ製で、重量的には特別軽いというわけではない。なんといっても固形燃料の採用が効いている。
そのほか、食材も重量削減の大きなポイントなのだが、今回はここはやりすぎないようにした。軽さを重視しつつも、味や見栄えも考慮している。
すべての荷物をバックパックに詰めたニノミヤは、「うわ! 軽い!」と驚いている。バックパックの容量にはまだ余裕がある。軽さだけでなく、コンパクトさも上々のセットができあがった。
宿泊したのは「三条の湯」
雲取山の南西中腹にある山小屋。その名のとおり温泉に入ることができるのが大きな魅力。後山林道経由が最短コースだが、林道が土砂崩れで長期通行止めになっているため、現在はサオラ峠経由となる。テント場は沢沿いで、15張程度幕営可(要予約)。テント宿泊者も入浴でき、事前に連絡すれば小屋で食事をとることもできるので、炊事用具を省略したスーパーウルトラライト山行も可能だ。
>>>続きは【中編】へ
※この記事はPEAKS[2021年5月号 No.138]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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