ルートコンプリートを目指している矢先。とうとう笠置山も雪化粧|筆とまなざし#308
成瀬洋平
- 2022年12月21日
登りに行くチャンスを伺いながら。さまざまな楽しみを与えてくれる山を描く。
とうとう岐阜の里山にも雪が降りました。雪山を心待ちにしていた人には「ようやく」でしょうが、ぼくにとっては「とうとう降ってしまった」。それは、笠置山でトライを始めたルートのムーブをようやく解決できたからです。このルート、これまでもときどき触っていたのですが出だしが全くできず、そのまま保留状態になっていました。2週間前になんの気なしに触ってみたとき、それまでとは全く違う方法を試すとスタート部分がこなせたのです。密かに笠置山ルートのコンプリートを目指していて、自分のプロジェクト以外は残すところこのルートのみ。俄然モチベーションが湧いてきたのです。しかしベストシーズンはとうにすぎ去り、笠置山にも雪が降りました。冬型になると曇りがちの天気が続き、山は芯から冷える寒さと湿気に覆われます。それでも登りたい気持ちが勝り、先週は極寒のなかでなんとか全てのムーブを組み立てることができました。ようやく完登へのスタート地点に立てた。そう思った矢先に里にも雪が降ってしまったのです。
家の近くから眺める笠置山は真っ白に雪化粧し、上部には灰色の雪雲が垂れ込めていました。ときおりカーテンのような白い帯が山容を隠し、再び雪が降っていることがわかります。例年11月下旬には雪が降ることもある笠置山。それに比べれば今年は暖かいほうで、きっとまだ根雪にはならずに溶けてくれるはず。登りに行くチャンスを伺いながら年末年始をすごそうと思います。
標高わずか1,128mの笠置山ですが、雪を纏うと気高くそびえる高峰に見えるから不思議です。雲間から差し込む光が淡い影を作り、森に覆われた山肌を豊かに映し出します。そういえば、これまでほとんど笠置山を描いたことはありませんでした。それは単純に描きたいと思わなかったからなのですが、今日は描きたいという気持ちが湧き上がってきました。登りに行けても行けなくても、山はさまざまな楽しみを与えてくれます。
アトリエ小屋もストーブがないといられないほど寒くなってきました。引き出しのアカネズミは今日も留守でした。冬支度に勤しんでいるのでしょうか。けれどもいつも巣がきれいに作り直されているのをみると、きっとときどき帰ってきているのだと思います。ネズミはここで年越しをするのでしょうか。師走は忙しなくすぎてゆきます。
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