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かほの登山道整備体験記 in 日向山 【前編】~山を守るために、一人ひとりができることとは~

山を歩いているとたびたび出くわす、歩きにくいけれど通行には支障ない荒廃した道。このような場所を補修せず、そのままにしていると将来どうなるか——。登山ユーチューバーのかほさんが、登山道整備のリアルに向き合い、実際に作業を体験。

段階を経て荒廃が進む登山道

ハイカーでにぎわう山梨県北杜市の日向山。晩秋のとある日の早朝、この日向山の登山口でもある尾白川渓谷駐車場にさわやかな声が響きわたる。

「おはようございます! 今日は初めての登山道整備体験を楽しみに来ました!」

そう、とびきりの明るい笑顔で話すのは登山ユーチューバーのかほさん。今回は自身のチャンネル用の撮影をしながら登山道整備を体験する。

山梨県北杜市にあるハイカーに人気の山、日向山の矢立石登山口

「今回は2日間の予定で、今日は登山道の観察、明日、整備を行ないます。整備は大事ですが、じつは道の状況と自然をしっかりと考察することも重要なんですよね」

こちらもかほさんに負けぬまぶしい笑顔の花谷泰広さん。言わずと知れたピオレドールクライマーであり、いまは甲斐駒ヶ岳黒戸尾根・七丈小屋の代表としても活動を行なっている。

今回はほかにもメディア関係者などが集結。登山道整備のために立ち上げられた「北杜山守隊」のスタッフも加わり、2日間の登山道整備体験がにぎやかにスタートした。

写真右)かほさん。登山ユーチューバーのパイオニア的存在。自身のチャンネルを通じて登山の魅力を発信し続けている。最近は七大陸最高峰へのチャレンジをスタート。さらなる高みに向かってクライミングにも本格的に挑戦している。写真右)花谷泰広さん。日本を代表するアルパインクライマーであり、山岳ガイド、甲斐駒ヶ岳・七丈小屋の代表という顔も持つ山のマルチプレイヤー。最近、北杜山守隊の代表という肩書も加わり、登山道整備を楽しんでもらうべく奔走中

「登山道整備って力仕事のイメージがありますよね。女性からするとハードルが高く感じられるんですが、実際に現場で役に立つことはできるんですかね?」

かほさんが素朴な疑問を花谷さんにぶつける。

「補修のための資材は今回は基本的に現場近くにある木や枝、土砂などを使うので、重たいものをがんばって運ぶような作業がないんです。なので、老若男女問わず整備に参加、活躍できるんですよね」

花谷さんが代表を務める北杜山守隊が取り入れているのは「近自然工法」という手法。自然の構造に近い方法で施工し、登山道の侵食を抑え、生態系の復元を目指すことを目標としている。つまり、登山道整備は崩れた生態系の回後が一番の目的なのだ。

今日は登頂が目的ではないので、みんなで談笑しながらのんびりと日向山を登る。途中、花谷さんが立ち止まり、登山道についての説明が始まった。

目の前の登山道の状況を花谷さんが説明。「じつは雨で土砂が流れ、道が痩せているんです」

「ここ、従来の道より外側に道が広がっていますよね。元々の登山道が荒れてしまうと、どんどん外を歩くようになり、違う道ができちゃうんです。ではここでかほさんに質問。道が荒れる一番の原因はなんでしょうか?」

「えー、雨ですか……?」

「そう、一般的に登山道は雨が降ると川のように水が流れます。これを放置しておくとどんどん道が荒れていってしまうんです」

登山道を大量の水が流れることで、土砂が削られ、道がどんどん掘られていく

雨が主因となる登山道の荒廃。そして、そこを避けるように人の歩く道がずれることで、さらに道が荒れていってしまう。

「本来であれば、荒れていても従来の道を歩くのが望ましいですが、あまりに荒れていたらそれも厳しいですよね。そこで重要なのが整備なんです」

かほさんが歩いているのは、じつは従来は登山道ではなかった拡張された道
今年、花谷さんが小学生と整備した道。直したばかりとわからないほどなじんでいる

道が荒れるメカニズムと整備の重要性を理解したところで初日の活動は終了。明日の整備に向けて、麓の宿泊施設「アグリーブルむかわ」でごちそうをいただき、英気を養う。

登山道荒廃の例

登山道の荒廃は段階によっていくつかのパターンに分類できる。原因や状況を理解すると、登山道整備の必要性なども理解できるので覚えておきたい。

洗掘

人が道を踏むことから荒廃が始まる。地面が踏み固められるともともとあった植物がなくなって地面がむき出しになり、さらに地面も凹んでいく。ここに水が流れることで土砂が流れ、侵食が進行していくのだ。写真は大量の水が流れ落ちることで地面が削られた洗掘と呼ばれる状態。こうなると歩きにくくなり、道の複線化にもつながっていく。

複線化

水はけが悪い場所では雨天時に道に水が溜まり、しばらくの間ぬかるむ。このぬかるみや、洗掘などによって生じた段差を避けるように登山者が本来の道を外れ、新たな道ができてしまうことを複線化と呼ぶ。広がった場所の土壌が踏まれ草なども生えにくくなると、今度はこちらのほうが歩きやすくなり、道がどんどん拡張していってしまう。

ガリー浸食

登山道が踏み固められ、さらに植生もなくなってくると、地表に水が浸透しにくくなり、沢のように勢いよく水が流れていく。さらに流水が表土や礫層を削って道が谷のように削れてしまうのがガリー浸食。こうなると大量の降雨のたびにどんどん地表が削られていき、その溝もさらに深くなっていく。浸食を止めるためには整備が必要。

作業を分担し同時進行。あっという間に補修が終了

前日のバックパックから一転、今日はカゴに整備の道具を放り込んで山を歩き始めた花谷さん。昨日アタリをつけておいた整備予定場所へと直行する。

整備で使用する道具を入れたカゴを背負い、現場へと登っていく花谷さん

「ここ、段差があって歩きにくいですよね。整備で6段くらいのスロープを作ります。今日は総勢10人、みんなでやれば半日も掛からず終わると思いますよ」

「本当かな……」と、かほさんは半信半疑のようす。だが、整備箇所の測量からスタートし、ステップとなる丸太の伐採や加工、下に詰める枝や葉の収集、土砂の運搬など、数人ずつチームに分かれて同時に作業が進行。実際に4時間程度で作業が終了した。

「本当に半日で終わったでしょ。かほさん、実際に体験してみてどうでした?」

「大変な力仕事を覚悟してきたんですが、予想外にラクな作業でしたね。あと、途中で登山者の人に『ありがとう』と言ってもらえたのがうれしかったです。それを聞いて、『自分が直したんだ』って実感できました。この場所、あと日向山に愛着が湧いたので、しばらくしたら、また登りに来たいと思います!」

「そう、整備を通じて愛着が湧き、その人にとっての心の山=ホームマウンテンと思ってもらうことこそ大事だと思っているんです。〝自分ごと〞と思ってもらえたら、周りの人にもそのエネルギーは自然と伝わりますよね。そうやって、輪が広がっていったらいいなと」

登山道整備のハードルは限りなく低く、気負う必要はまったくない。今回、それをかほさんが体感、証明してくれた。

*後編では実際の登山道整備のようすをお伝えします。

後編はこちらから

体験ツアーなどの情報は北杜山守隊のHPでチェック

北杜市の山の登山道整備を目的として立ち上げられた北杜山守隊。来年からは登山道整備ツアーが開催される。ツアーはだれでも参加可能(要参加費)。さらに関わっていきたい人のために会員制度も用意されている。ツアー開催時はHPやインスタグラムなどで告知予定。HPでは山守隊の理念や活動レポートなども紹介されているので、ぜひチェックを。

北杜山守隊ホームページ

前泊や後泊におすすめ「アグリーブルむかわ」

日向山、甲斐駒ヶ岳登山の前泊、後泊で利用しやすい宿泊施設。レストラン「駒ヶ岳スキレット」では自家農園で採れた野菜、さらには「よんぱち米」の名前で親しまれる北杜産のお米が味わえる。レストランはランチであれば宿泊者でなくても利用可能

山梨県北杜市武川町山高3567-212
TEL. 0551-26-3880
定休日:火曜日
宿泊料金:1泊2食大人¥12,000 ~
アグリーブルむかわホームページ

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PEAKS 編集部

PEAKS 編集部

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

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