親子向けの水彩画教室とクライミング教室を行なったゴールデンウィーク|筆とまなざし#326
成瀬洋平
- 2023年05月10日
父がかつて学習塾をしていた部屋で。透明水彩絵具の技法をレクチャー。
平日に出かけられるので、GWは仕事をしていることが多い。先日、展覧会を行なったときに水彩画教室のリクエストがあったので、ちょうど良いタイミングだと4日に企画。せっかくなら親子向けのクライミング教室も行なおうと、5日の午前中にボルダリング、午後からルートクライミング教室を行なうことにした。
水彩画もクライミングも対象年齢を小学校4年生以上にした。水彩画教室は透明水彩絵の具を使って技法などをレクチャーしながら描く、ちょっと教室っぽいものにしたかったからである。小さな子どもがわちゃわちゃ描くには普通の水彩のほうが使いやすい。クライミングもあまり体が小さいと登るどころではない、というのを経験的に感じていたからだ。
屋外でのスケッチ会は何度も行なっているが、室内での水彩画教室はほとんど初めての試みだった。果たしてどのくらいの人が集まってくれるだろう? 4、5人集まってくれたら御の字だな。そう思っていたものの、蓋を開けてみればなんと19名もの方が参加してくださることになった。小学生から高校生、二十代の方から親御さんまで年齢層もさまざまだ。
実家にはかつて父が中学生の学習塾をしていた部屋がある。黒板、長机、椅子、流しがあるので水彩画教室にももってこい。父子二代に渡ってこの部屋で教室を行なうというのがなんとも感慨深い。とはいえ、それほど広くない部屋によく19名もの人が座っていっしょに絵を描けたものである。
画材は全てこちらで用意することにした。ホルベインの透明水彩に日本画用の彩色筆、水彩紙はホワイトワトソン。きちんとした画材は描きやすいし、実際に出来栄えも良く見える。安価なスケッチブックだとすぐに波打ち、絵の具を滲ませる前に表面がボロボロと剥がれてしまう。
透明水彩は塗り重ねて修正ができないため、最初からよく考えて描かなければいけなく、難しい。塗り重ねると色がくすんで暗くなり、せっかくの透明感が台無しになってしまう。発色の良い色彩でぼかしや滲みなどの技法を駆使して描くのが透明水彩のおもしろさのひとつ。そんなこともあって、子どもよりも大人のほうが試行錯誤しながら楽しんでくれているようすだった。
参加者のひとりに高校三年生の女の子がいた。控えめで少し離れたところからレクチャー(技法を説明しながら描いたのが今週の一枚)を見ていたのだが、熱心に聞いてくれていることはよくわかった。聞くと、美術方面に進路を考えていて参加してくれたのだという。高校三年生といえば、ぼくが透明水彩に出合い、絵描きになりたいと思ったのと同じ年齢である。大丈夫、迷わずに進め。好きなことを続けていれば、きっと思い描いた方向へ進んでいける。出来上がった彼女の作品は水彩らしさに溢れる静かで清々しい夏の森の風景だった。
SHARE