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富士見台でのスケッチハイキングイベント|筆とまなざし#331

絶好のスケッチ日和に富士見台山頂へ。大切なのは、その場所でいかに豊かな時間をすごせたかということ。

中津川市内から深い谷を縫って走る林道を車で1時間。恵那山登山の拠点となる萬岳荘からよく整備された登山道を小一時間ほどハイキングすると、標高1,739mの富士見台山頂にたどり着く。かつては牛の放牧が行なわれていた笹原のなだらかな稜線はまさに牧歌的な雰囲気である。小高い丘のような頂上からは、御嶽山や乗鞍、槍穂高、中央アルプス、南アルプスの大展望が広がっている。富士見台という名前が付けられているが富士山は見えない。富士山が見たいという願望から名付けられたという説もあるが、ふと思う。もしかしてかつて人々は御嶽山を富士山に見立てていたのかもしれない。

そんな富士見台は、ぼくにとってはスケッチハイキングイベントを行なう格好のスポットになっている。スケッチハイキングに適した場所にはいくつかの条件がある。展望が良いこと、歩く時間が短いこと、広い場所であること、などで、自宅から近いのも大きなポイントだ。富士見台はまさにこの条件にピッタリの場所なのである。

先週土曜日、地元の公民館の主催で富士見台スケッチハイキングのイベントを行なった。参加者は4名で、地元の方が2名、愛知県から2名が参加してくれた。そのうちの1名は小学4年生の男の子でクライミングを通して知り合った。親御さんや市役所のみなさんも含め、総勢10名の賑やかな一行となった。

梅雨時である。最後まで天気が心配だったが、その日だけ奇跡的に晴れてくれた。しかも雲が多かったため暑すぎず、絶好のスケッチ日和となった。まずはゆっくりと富士見台山頂へ。目の前には大きな恵那山。御嶽山の頂上が見えなかったのは残念だが、南アルプス方面はなんとか展望が開けていた。土曜日ということもあり、山頂は多くのハイカーで賑わっていた。スケッチ道具を広げ、水彩画のレクチャーをしてから各自自由に描いてもらうことにした。

恵那山、南アルプス、笹原の稜線、色褪せたショウジョウバカマ、山頂の標識。同じ場所にいるのに描くものはさまざま。同じものを描いても人によって全く違うのが、写真と大きく異なるところだろう。写真を撮ることに夢中で風景を見ていなかったりする人も多いだろうけれど、絵は風景をじっくり観察し、味わうことから始まる。

「上手い絵」が描けなくてもいい。大切なのは、その場所でいかに豊かな時間をすごせたかということ。成果主義に偏りすぎることは、人生の楽しみをスポイルしてしまう。それはクライミングも同じだ。そして収入面ではクライミング講習をしていたほうがずっと良い。けれども成果主義に陥ることなかれ。人生の豊かさとは経済的豊かさに比例しない。

男の子は飽きることなく7枚も描いていた。それぞれに描き方が変わっているのが興味深く、最後に描いた麓の街並みの風景がとても印象的だった。萬岳荘に下りながら「楽しかった!」を連発する彼を見て、この企画を催行できて良かったなと心から思えた。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

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