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廻り目平キャンプ場をベースに小川山、そして瑞牆のマルチピッチルートへ|筆とまなざし#333

岩間に咲いた黄色い可憐な高山植物「ホソバタカネニガナ」

最近は小川山へ行くことが多い。梅雨時、笠置山の岩は濡れていることが多く、瑞浪は熱中症になるくらい暑い。近場の岩場はすっかりシーズンオフとなり、仕事でもプライベートでも、乾きが早くて比較的涼しい小川山へ向かうのである。新しいトポが出たことも小川山通いの理由。天気予報が悪くても意外と登れたりするのがこの時期の小川山。とにかく現地に行ってみることが大切である。

ということで、廻り目平キャンプ場をベースにして講習しながら、仕事の前後でプライベートで登るという生活を送っている。今回は5日間滞在し、明後日からはまた4日間滞在の予定。おかげで体も少しずつ引き締まってきてくれたようだ。岐阜は雨ばかりで蒸し暑い。やっぱりこの時期は小川山だなーと、その爽やかさを感じながら毎年のように思うのである。

先日はひさしぶりに、マルチピッチを登るために瑞牆に出かけた。瑞牆マルチは昨年の秋以来。今回は大面岩のとあるルートを登ることにした。グランドアップで初登され、瑞牆でも屈指の好ルートだと、トポには書かれている。

少々湿度は高いが、曇天のおかげで暑すぎない。核心ピッチを越え、少し濡れたチムニーを這いずりあがり、高度感のあるダイクをトラバース。第二核心のカンテ状のフェイスからスラブを登ると、あとは易しい1ピッチで頂上台座へ抜けるところまでやってきた。ふと、目の前のフェイスを見上げると、岩間に黄色い可憐な花が咲いていた。グルーブに溜まったわずかな土を苗床にして咲く花は、無機質な岩のなかでひときわ鮮やかに見えた。登りながらしばし見惚れる。梅雨時は岩のコンディションは決して良くはないけれど、この時期だからこそ見られる風景である。

帰宅後、図鑑で調べると「ホソバタカネニガナ」という高山植物だとわかった。クライミングに出かけると、ついついルートしか目に見えなくなってしまう。ルートが登れたかどうかだけでなく、クライミングという行為を通して自然そのものを味わいたい。ホソバタカネニガナはそう語りかけているかのように、逞しくもしなやかに咲いていた。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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