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インドへひとり旅。ラダック、マルカバレートレッキングへ|劇団EXILE・佐藤寛太の旅手引き #12

1カ月のインド旅。人生最高高度で星を見てみたいと思い、秋山の日帰り登山装備プラス食料日数分を詰め込んだザックとカメラふたつを携えて、最後の週に北部・ラダックのトレッキングコース、マルカバレーを5泊6日かけて歩いてきた。

文・写真◎佐藤寛太

人生最高高度で星を見てみたいという想いから、6日間のトレッキングへ。

7月はまるまる一カ月インドに行っていました。

最後の週に北部のラダックという街の有名なトレッキングコースである、マルカバレーを5泊6日かけて歩いてきました。

中村安希さんの『ラダックの星』という本に惹かれ、人生最高高度で星を見てみたいなと思い、かなり有名で難易度的にも低いトレッキングロードへ。秋山の日帰り登山装備プラス食料日数分を詰め込んだザックと、カメラふたつを携えて歩きました。

約6㎞毎にある集落の、ホームステイを行なっている民家に寝泊まりし、簡素な生活を送っている村の方と交流し、また次の村へ向かう日々は人の温かさに触れ、なんともいえない懐かしさが込み上げ、少し泣きそうな日もありました。

荷物を精査し不要なものは滞在していたホステルに預けてきたのに、意地で持ってきた中判カメラのせいで水を含めたザックの重さは15kg以上あり、道中何度かすべてを投げ出したくなりました。

毎朝7時には出発し、日々少しずつ高くなっていく3,000m以上の高度に晒され、ヘトヘトになりながら次の村に到着して、陽の明るいうちに滞在先のお家で一度昼寝をするのがルーティンでした。

僕は「Chilling(チリン)」という村から「Shang sumdo(シャンスムド)」という村までの71kmを歩いたのですが、トレッキングの行程自体はとてもシンプルで舗装路が2割ほど、生活のために踏み慣らされた未舗装路が8割といった感じでした。

「マップスミー」というアプリと街で買った大まかな紙の地図を持ち、周辺の地形をオフラインでも使えるようあらかじめダウンロードしていったので大きな道迷いをすることなくトレッキングを終えることができたのですが、日々想像もしていなかったハプニングが起こり続け、道中、異国の地にひとりでいることの悦びと怖さを噛み締めながら歩いていました。

1日目、宿泊地「Kaya(カヤ)」村

ダライ・ラマの説法を午前中聞きに行き、午後からトレッキングを始める。泊まったお家では夏休みで子どもたちが帰省してきたとのことで、家族みんなで食卓を囲んだ。食事の支度を手伝い、キッチン兼リビングで家族とすごす。夜は急に雨足が強まり、近くに雷が落ち、停電したため携帯の充電ができず。

2日目、宿泊地「Sara(サラ)」村

雨季のシーズンに山に入ったため、前日の大雨の影響でところどころ土砂崩れが起こっており、登山道が泥沼化。家の中が土砂で浸水している建物もいくつかあった。宿ではふだん僧をしているという、ひとつ下の青年と食事の支度から就寝までずっと話をした。心から温まる食事をつくってくれた。

3日目、宿泊地「Markha(マルカ)」村

前日泊まった宿のお坊さんの兄ちゃんと、わんこに見送られ出発。小川では軽トラが身動き取れなくなったようで、川の真ん中に放置してあった。今回のトレッキングでのいちばんの難所である川が増水により渡れず、多くの人が引き返すなか村にたどり着き、川のようすを見に行くも、とても渡れるものではなかったが、今回のトレッキングで初めて陽が差し、村の美しさに心がウキウキした。娘さんがふたりとも「Leh(レー)」でガイドの仕事をしているというオヤジさんの家に宿泊し、翌日に思いを託し就寝。

4日目、宿泊地「Hankar(ハンカル)」村

ひとりで渡ろうと試行錯誤すること40分。諦めて引き返そうと荷物をまとめているところ、先日から行程をともにしていたナイスガイたちが現れ、ルートを切り拓いてくれる。彼らが対岸で見届けるなか、ひとり渡ったが、彼らが見つけてくれたルートと、見守ってもらってる安心感がなければ絶対に引き返していた。

この日泊まったホームステイ先では、ありがたいことにバケツにお湯を用意してくれ、ひさしぶりに髪を洗い、全身を拭くことができた。幸せだった。

ガイドをつけてテント泊をしていたポーランド出身のカップルと、フランス人のおじさまの指導のもとヨガを受ける。

夜しか電気が使えなかったらしくここでも充電をしそびれる。

5日目、宿泊地「Nimalling(二マリン)」キャンプ場

前日まで1日に約300mずつ上がっていた高度が、ここにきて前日宿泊した地点4,000mから4,800mくらいまで上がる。到着するころには軽い高山病で息も絶え絶え、頭痛もズキズキ。ラダックでは2023年4月から7月中旬に至るまでに36人が高山病の症状で亡くなったという話を思い出し、怖くなった。なるべくたくさん水を飲み、早めに休み、都度軽食を食べて行動した。

ホームステイ先のキャンプ場に着くと、薬を飲んで昼寝。前日の宿泊地で仲良くなったメンバーと夕日を眺め、誘われるまま晩ごはんをご相伴に預かった。このガイドチームが作るごはんはどれも絶品で、山での食料は貴重であるのにもかかわらず「インドに来てる時点で俺たちの客なんだから寛いでくれよ」と言ってくれたガイドさんの言葉と、「カンタは出会ったときから仲間なんだからいっしょにご飯を食べようよ!」と言ってくれた友だちの言葉に胸を打たれた。

6日目、宿泊地「Leh(レー)」のホステル

今回の旅でもっとも長い17kmの道のり。

朝イチでまず今回最高峰となる「Konmaru La(コングマル・ラ)」という標高5,300mの山を目指す。高低差500m、3kmの上り坂。朝から天候に恵まれ、太陽に背中を温めてもらいながらも何度も立ち止まっては肩で息をし、カメラを構え、水を飲んだ。

1,000mを下る13kmある行程は、雪解け水による川を行ったり来たりと渡り続ける。靴を濡らさないよう慎重に岩を選び、跳ぶ。下りの途中で振り返りながら自分が歩んできた道のりを確かめ、少しずつ遠くなっていく頂を仰ぎ、街に戻ることに浮き足だちはじめた心を落ち着ける。

下りの道中で仲良くなったスイス出身のご夫婦と相乗りでタクシーに乗車。少しずつ街に近づくにつれ、大きくなっていくクラクションに眉をひそめながら浅い眠りを繰り返しては、旅を反芻していた。宿に着いたのは夕方だったのに興奮して夜遅くまで眠りにつくことができなかった。

この旅のひとつの目的だった星空は、日を増すごとにはっきりくっきりと見え、最終宿泊地の「Nimalling(ニマリン)」では月が沈んだあと、宿泊していた大型共同テントを抜け出し夜空を悠然と流れる天の川を見に行ったのだけど、旅の途中で出会った人々によって感動を人と共有する温かさを刻み込まれたせいで、僕ひとりでは持て余してしまった。

道中、たくさんの動物を見ました。日本でよく見る鳩から、色とりどりの鳥たち、野生のマーモットや、野ネズミ、山ヤギ、放し飼いの牛。そして人が連れた、大きな荷物を背負った馬やロバたち。ときにはどういうわけか、たった1頭で登山道をてくてく歩いているロバも見かけました。

トレッキングが終わったあと、一カ月の旅の終わりとしてこれ以上の経験はないと思った僕は予備日としてゆとりを持っていた数日を投げ出し、翌々日、東京に戻りました。

ラダックのセンター街ではトレッキング道中で出会った人々に再会し、インド最後の夜は宿のみんなと飲みに出かけ、最高の時間をすごしました。そして、旅の最後の最後に小さな友だちができました。そのことはいつかまた、お話しできる日が訪れれば話したいと思います。

自由と混沌を抱えたこの国で感じたことを、しばらくは日々の生活で反芻しながら、消化していきたいと思います。

お付き合い、ありがとうございました。

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PROFILE

佐藤寛太

PEAKS / 俳優

佐藤寛太

劇団EXILE所属。福岡県出身で子どものころは自然が遊び場。キャンプを始めたことをきっかけに、その延長で2020年より登山を開始。主にひとりで山に登っている。初のフォトブック『NEXT BREAK』が発売され、主演映画『軍艦少年』や人気漫画を実写ドラマ化した『あけとせっけん』主演など、映画やドラマ、舞台など各方面で幅広く活動する、いま人気急上昇中の若手俳優。大の読書好き。仕事が忙しいときには山や旅にまつわる本で旅をする。

佐藤寛太の記事一覧

劇団EXILE所属。福岡県出身で子どものころは自然が遊び場。キャンプを始めたことをきっかけに、その延長で2020年より登山を開始。主にひとりで山に登っている。初のフォトブック『NEXT BREAK』が発売され、主演映画『軍艦少年』や人気漫画を実写ドラマ化した『あけとせっけん』主演など、映画やドラマ、舞台など各方面で幅広く活動する、いま人気急上昇中の若手俳優。大の読書好き。仕事が忙しいときには山や旅にまつわる本で旅をする。

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