ベトナム、カットバ島へ。旅の2日目に出逢った景色｜筆とまなざし＃361

見慣れない果物や客引き、格安のアウトドアブランドウエア。混沌とした街を散策する。

船着場からバスに乗り換え、カットバ島で一番大きな町カットバシティに向かった。さすがにここは観光地、多くのホテルや飲食店が軒を連ねている。ぼくらが泊まる安宿はメインストリートから少し離れた場所にあった。宿に着くと若いお兄ちゃんが迎えてくれた。ちょっとヤンチャな見た目とは裏腹に、ハニカミ笑顔の腰の低い男で、この宿をひとりで切り盛りしているらしい。荷物を置いてまずは町歩きに出かけた。

朝フォーの食堂があるのはここも同じで、５件おきくらいの頻度で軒を連ねている。路地を入ってすぐのところに大きな市場があった。午後のため鮮魚売り場は閑散としていたが、乾物が所狭しと並べられた一角があったり果物が山のように積まれた一角があった。果物屋の前を通るとおばさんたちがマンゴーやらバナナを半ば強引にすすめてくる。ベトナムでは同じ種類のものを売るお店が固まっている。たとえば、果物を売る一角、魚を売る一角などで、ハノイにはそれぞれの売り物にちなんだ通り名が付けられていたりする。それではお隣同士での競争が激しそうだが、買う側としてはわかりやすくてありがたい。そんななか、恰幅のいいおばさんが売る見慣れない果物が目についた。

乳白色で長さ４cmほどの、ニンニクのかけらのような形をした果実。トレーにパックされて売られているのだが、傍らにはそれらが入っていたであろう大きくゴツい外皮が転がっている。果物が豊富なベトナム。珍しい果物を食べるのが今回の旅の楽しみでもあったので、ひとパック買ってみることにした。

ちょっとクセのある南国らしい甘い香りとプリプリとした食感。甘さは控えめで中には大きな種が入っている。東南アジアではおなじみの果物で、ジャックフルーツというらしい。これをパクパク食べながら通りを散策する。あちこちから「マッサー！　マッサー！」と呼び止められる。なにかと思ってみるとマッサージ屋の看板があった。旅も２日目、そんな客引きにもずいぶんと慣れてきた。

ひと通り町中を歩き回り大体のようすがわかった。ときどき見かける衣料品店には有名アウトドアブランドのウエアが山ほど、しかも格安で売られていた。絶対ゴアテックスを使っていないだろうダウンジャケットにゴアのタグが付けられていたり、いかにも安っぽいのっぺりとしたプリントで胸元に大きくロゴが配されたパタゴニアのTシャツが売られていたり。しかも屋外の広場に広げられているものだからすっかり色褪せてしまっている。なかには日本のショップで見るのと全く違わないように見えるものもあったりして、なにが本物でなにが偽物なのかわからなくなってしまう。ちなみに、通りで見かける欧米の観光客はここで買ったであろうウエアを着ている人が多かった。知っていてか知らないでなのか、でも、ベトナムのこの混沌のなかではそんなことどうだっていいことのように思えてくるのだった。