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北アルプス・ライチョウ保育園(仮)|旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺 #35

目下、今年の夏も昨年同様おそろしい灼熱の日々が続いている。去年は9月も半ばを過ぎたころから暑さに陰りが見えてきたような気がするので、やっと半分くらいを耐えしのいだ感じであろうか。ライチョウの子育ても生後1カ月以上が過ぎ、ヒナ本人の体温調節能力も身についたはずなので、関係者的に少しは安心できる時期でもある。今回は梅雨の長雨を生き延びたライチョウ親子たちの珍しい場面を紹介したいと思う。

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋広平

北アルプス・ライチョウ保育園(仮)

娘を保育園に預けて、独り自宅の作業部屋の窓を開け放ち、扇風機の風を自身に直撃させてなんとか暑さをしのいでいる。ちなみに私の部屋にはエアコンはないので気合と根性でなんとかしているのだが、これは自分だけのときだからできることである。世の共働き子育て世帯にとって安心して子どもを預けられる保育園という存在は欠かせないものだとつくづく痛感するこのごろである。

ときは8月も半ば。稜線上にはヒナと呼ぶには不相応なほど立派になった若ライチョウが闊歩している。呼び方的には「幼鳥」というのが適当であろうか。その気になれば2〜30mほどは飛翔できるほどになり、雨風に濡れても自らの力で奮い立つ力を身につけている。ようやく安心して子育てができるくらいにまで成長した子どもたちを、なおも見守り導く母鳥たちであるが、彼女たちの子育て方針は面白い部分がある。

そのひとつが独特の寛容性だ。

ある2組のライチョウ親子が偶発的に遭遇。繁殖期のオス同士とは違い、メス同士ないし子育て家族同士での争いというのは基本的にはなく、同じ空間での採食行為や交流(?)は何事もなく行なわれる。その後、それぞれの家族がその場をあとにした際、各母鳥が引き連れているヒナの数が変わっていることがあるのだ。具体的には、各5羽ずつ連れていたヒナたちが4:6ないし3:7になっていることがあるということである。

これは、ヒナたちがとっ散らかって、着いて行く母鳥を間違えてしまった結果だと思われる。そして驚くことに母鳥たちはこの増減したヒナたちを何事もなかったかのように受け入れ、そのまま子育てを続行するのである。これを寛容と言わずなにが寛容であろうか。もはや彼女たちの懐の深さに脱帽するほかない。

さて、今回の一枚はそんな複数の家族が合流するケースを写したものだ。

しかも3家族合同である。子育てもこれから少しは楽になるのでは……と思いつつも、ヒナの1カ月生存率約3割という壁は超えられず、現状は計6羽だが、大きくなったらなったで別の問題が出てきたりするんだよな、と母鳥たちの苦労を察してしまう。ただ、このようにいくつもの家族がひと所に集まって子育てをしている姿が、日ごろのご近所さんとのやりとりや保育園での情景を思い起こして、なんだかとてもあたたかい気持ちになるのである。

 

今週のアザーカット

信濃毎日新聞社によるクラウドファンディング企画「ミライチョウ プロジェクト」。こちらの関連イベントとしてさる8月10日に信毎メディアガーデンで講演会が開催されました。

私はプロジェクトの写真担当として参加しておりますが、当日はゲスト演者として壇上に上がらせていただきました。クラウドファンディング開始から1週間を待たずに目標額に到達、世間のみなさまのライチョウへの関心の高さに温かい気持ちと希望をいただいている今日このごろであります。プロジェクトはまだまだ続きますので、引き続きの応援をどうぞよろしくお願いいたします

▶過去の「旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺」一覧はこちら

 


 

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PROFILE

高橋広平

PEAKS / 雷鳥写真家・ライチョウ総合作家

高橋広平

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
Instagram : sundays_photo

高橋広平の記事一覧

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
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