日本のロッククライミング発祥の地、兵庫県神戸市でクライミング|筆とまなざし#406
成瀬洋平
- 2025年01月22日
瀬戸内海に面した海岸の岩場、小赤壁へ。
年始の慌ただしさが落ち着いたころ、暖かさを求めて兵庫県の岩場を訪れた。兵庫県神戸市は、日本のロッククライミング発祥の地である。神戸市の北に連なる六甲の岩場でクライミング技術を磨いたクライマーたちは、北アルプスそして海外の高峰へと赴いていった。県内には六甲のほかにもいくつか岩場があり、姫路市にある御着、山神社、小赤壁の三つの岩場は冬のエリアとして人気が高い。
今回ははじめの3日間を講習会の仕事に、残り5日間をプライベートのクライミングに当てた。講習初日は御着の岩場へ。冬でも暖かいはずなのに……極寒! ときおり日が差してくれるのがせめてもの救いだが、風が強くて体感温度は完全にマイナスである。翌日は近くの山神社の岩場に行こうとしたのだが、あまりの寒さに怖気付き、もっとも暖かそうな小赤壁に行くことにした。
小赤壁は瀬戸内海に面した明るい岩場である。日当たりが良く、穏やかな海を眺めながらのクライミングは格別である。訪れるのは今回で4度目。遠方の、しかもこぢんまりとした岩場としては再訪回数が多い。だいたい、海岸の岩場といえば、城ヶ崎にしても先月訪れた台湾にしても、荒波が打ち寄せ、どちらかというと開放感よりも威圧感のある場所が多い。小赤壁が気に入っているのは瀬戸内の穏やかな海とその明るいロケーションにある。ルートもおもしろいものが多く、やさしめのルートも多いで講習会にもちょうどいい。
風上の岩は少々寒かったが、風下のルートはポカポカ。御着で登った前日とは別世界だった。潮が引いて通れるようになった遊歩道を歩き、三つ星ルート「播州レイバック」(5.10c)へ。小赤壁の5.10台ではいちばん登りごたえがあっておもしろいルートだろう。スケールと見栄えもすばらしい。
姫路は岐阜よりも南西にあるため日没時間が少し遅い。岩肌が赤く染まり始めたと思って海のほうへ目をやると、群青の雲間から天使の階段が水面へ光を落としていた。小さな島々の向こうに横たわる島影は小豆島である。斜陽を受けて、水面が眩しく輝いている。旅情を誘うこの風景もまた、小赤壁の醍醐味である。
著者:ライター・絵描き・クライマー/成瀬洋平
1982年岐阜県生まれ、在住。 山やクライミングでのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作したアトリエ小屋で制作に取り組みながら、地元の岩場に通い、各地へクライミングトリップに出かけるのが楽しみ。日本山岳ガイド協会認定フリークライミングインストラクターでもあり、クライミング講習会も行なっている。
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