
【イベント取材】トレイルランナー石川弘樹選手が「アルトラ」とプロアスリート契約締結

PEAKS 編集部
- 2025年01月23日
日本のトレイルランニング界のパイオニア的存在である石川弘樹選手が、2025年1月1日付でアルトラとプロアスリート契約を締結した。数々の記録をもつ石川さんだが、長い競技生活により膝や関節に痛みを抱えるようになり、2年ほど前に人工股関節の手術を受けている。そして術後さまざまなフットウエアを試すなかで、アルトラのよさを実感したという。
1月16日に開催された契約就任発表イベントのもようをお伝えする。
文◉PEAKS編集部
アルトラの特徴は
アルトラ(ALTRA)はアメリカ発祥のランニングシューズブランド。ロングトレイルハイカーたちに長く愛され、日本でも「登山で履けるトレランシューズ」の代表格として知られている。
アルトラの主な特徴は、「フットシェイプ」と「ゼロドロップ」にある。
●フットシェイプ
足の形に合わせてつま先部分が広めに設計されており、足指が自然に広がるデザイン。足指が圧迫されないので、長時間の着用でも快適さが保たれる。
●ゼロドロップ
シューズのカカトと前足部の高さが同じで靴底に傾斜がない設計のこと。自然な姿勢での歩行やランニングをサポートし、関節や筋肉への負担を減らす効果があるとされる。
アルトラのアイコン的モデルは「ローンピーク」だ。毎年のようにアップデートを重ねているこのシリーズは、2月から最新モデル「ローンピーク 9 プラス」の販売もスタートする。詳細は発売中の小誌「PEAKS」最新号(2025年3月号)で紹介しているので、そちらをお読みいただければと思う。
石川弘樹さんインタビュー:アルトラのアンバサダーとしての挑戦
さて、ナチュラルな履き心地やバランスのよさで愛用者の多いアルトラが、今年の1月1日付けでトレイルランナーの石川弘樹選手とプロアスリート契約を締結した。その発表イベントで行なわれた石川さんのインタビューから、一部を抜粋してお届けしよう。トレイルランニングばかりでなく、山歩きにはもちろん日常生活での歩行にも役立つヒントが得られるだろう。
──このたびアルトラとプロアスリート契約し、アンバサダー選手となるに至った経緯は?
「2024年の初めに、アルトラのシューズを試してみませんかと声をかけていただいたのがきっかけです。4月~5月ころからテストシューズとして履きだしました。それまでアルトラがどんな靴かというのは知ってはいましたが実際に履いて走ったことはなかったので、ゼロドロップやトウボックスの広さなど最初こそ少し違和感はありましたが、体への負荷が軽減されるのを感じています」
──人工股関節の手術を受けておられるのですよね。
「5~6年前から、股関節の『臼蓋(きゅうがい)形成不全』といって、股関節の骨頭の不具合で軟骨がすり減る状態が悪化しました。でも人工股関節になったらもう走れないだろうと思っていたので、6~7年ガマンしちゃったんですよね。そうしたらついに末期的な状態になってしまって、約2年前に人工股関節を入れました。一般的に術後はランニングや登山はNGと言われますが、担当医の『走れるようになりますよ』という言葉を信じて決断しました。いまは毎日ストレッチや筋トレも欠かさず行ない、最長40kmほどは走れる状態に戻ってきています」
──具体的に、アルトラのどのような点がよかったのでしょうか。
「じつは、股関節の手術をする前に膝も痛めていて、マッサージなどいろいろな施術を受けても回復しなかったんです。そのころ、アルトラ製品ではありませんが『ランニング足袋 きねや無敵』という足袋のジョギングシューズ的なものを履くことを勧められまして。膝が痛いのにノンクッションでフラットだなんて余計に痛くなるのではと思っていたのですが、3カ月ほどで膝の痛みが消えたんです。この経験から、僕はゼロドロップの効果をとても信頼していたので、アルトラのお話をいただいて、試してみようと思いました。アルトラのゼロドロップのシューズも、自然な走行を促して体全体の負荷を軽減してくれます」
──どのようにアルトラのシューズを活用されていますか。
「まだそれほど走り込めていない面はあるのですが、ローンピーク、モンブラン、オリンパスといったモデルを使い分けています。いまはこういう体なので、走りながらもどのように自分の体をいたわっていくか、いい状態で走り続けるかということを考えているわけですが、トウボックスの広さが足の自由な動きを促してくれますし、ゼロドロップが自然な走り方をサポートしてくれます。なんというか、『走らせてくれる』という感覚がありますね」
──アルトラのシューズに切り替えたことで、走り方に変化はありましたか。
「まず、人間の体は『まっすぐ立つ』が大事ですね。前後、左右、どちらかに傾けば反対側に負荷がかかるので、体全体のニュートラルなポジションを維持し、一歩一歩に負荷をかけないこと。そのうえで、僕の見方を変えたことのひとつが……あ、みなさんもいま、ちょっと体感してみますか?」
──ぜひ。会場のみなさん、その場で立ってみましょう!
では、右足だけを出してみてください……みなさん、右足を上げただけでなく、こうやって一歩踏み出してますよね? こう動いたときに、無意識のうちに左の股関節が動いているの、わかります? これは何が起きているかというと、前足を出すときは、じつは反対の足(後ろ足)が軸になってるんです。なので、たとえば段差を上がるときにも、前足でよいしょと引き上げるのではなく、後ろ足で体を持ち上げるようにする。この感覚に慣れると、山を登るのも駅の階段を登るのも、ずいぶんラクになりますよ」
──競技アスリートとしてのモチベーションを保つことについては、いかがでしょうか。
「以前はレースの駆け引きや記録を出すことが中心でしたが、いままで知らなかったレースにゲストランナーとして参加することも増えて、楽しいです。でも、こういう体でどこまで戦う走りができるかは挑戦していきたいですし、あまり知られていないトレイルを探したり、トレイルランニングの魅力を伝えたり、といったことをやっていけたらと思っています」
──アルトラのシューズをどのような人に勧めたいですか?
「膝や股関節、腰に痛みを抱えている方は、日常生活での歩き方や走り方のストレスが痛みとして体に出ているんだと思うんです。僕自身がゼロドロップで痛みを克服できた部分があるので、そういう方にはいいと思います」
──最後に、アルトラのアンバサダーとしてメッセージをお願いします。
「僕の体もだいぶよくなってきたので、競技としてひたすら走るだけではない、山での遊びと掛け合わせたような、アウトドアスポーツとしてのトレイルランニングの楽しさを伝えていきたいです。アルトラについてはまだまだ“新参者”ですので、シューズについて僕自身も勉強して、皆さんのお役に立てればと思っています」
石川弘樹さんプロフィール
日本初のプロトレイルランナー。学生時代にはサッカーに熱中。中学時代には読売ユースに所属、高校ではインターハイにも出場し、その卓越した運動能力を発揮。大学時代にアドベンチャーレースに憧れて山を走り始める。1999年から「TEAM EAST WIND」に所属して世界を転戦。2002年以降、トレイルランナーとしてアメリカを中心に活動。国内および世界中でウルトラレースに挑戦。日本山岳耐久レース2連覇、UTMB日本人初出場初完走、HARD ROCK 100 やWESTERN STATES 100 日本人初Top10 入り、アメリカでの「Grand Slam of Ultrarunning」「Rocky Mountain Slam」獲得などの足跡を残す。国内ではトレイルランニングの普及活動に力を注ぎ、全国でのトレイルセミナーや「信越五岳トレイルランニングレース」をはじめ、各地での大会のプロデューサーやアドバイザーなどを務める。近年はトレイルを通じたさまざまな環境問題に力を注いでいる。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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