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登山ガイド・青崎涼子さん「旅の風景を分かち合いたい」|山のガイド名鑑 File.4

ガイドの世界で活躍する人々にフォーカスする連載。第4回は登山ガイドの青崎涼子さんをインタビュー。

アラスカでの原体験が作る青崎涼子さんのガイディング。ともに景色を眺め、豊かな時間をすごす。がんを患ってからも、山で培った知恵と精神を糧に生きていく。明日は明日の眺め。

心が震え、揺さぶられる
旅の風景を分かち合いたい

――山や旅の原風景は?

青崎さん:旅行会社勤務時代にオーロラを見に行くツアーを作ったんです。12月のフェアバンクス(アラスカ)は太陽が10時に昇り、2時に沈みます。沈んだあとも横移動をしているので、空には淡い光が残ります。紫や青のパステルカラー。その景色に感動して涙が出て、アラスカが忘れられなくなりました。

観光客はデナリ国立公園へ行けばよいと言うけれど、アラスカ人にとってそれは、作られた環境。本当のアラスカを知りたかったら外に出ろと言われます。けれど外に出ると道はない……。

その後アラスカでNOLSという2カ月間の野外教育プログラムに入ります。前半は荒野を歩きます。生活道具を全部背負い、道なきところを地図を頼りに進んでいく。後半は氷河です。小麦粉、ベーキングパウダー、イースト菌と料理本を渡され、自分たちで料理します。メニューは無限だけれど創造性が求められますよね。粉をこねて寝袋の中に入れ発酵させパンを焼きました。自分の力で行動したことで自信がついたし、自然の怖さも知りました。これが私のアウトドアの根幹にあり、ガイドの仕事にも影響を与えています。

▲NOLSで仲間力を合わせてアラスカの川を徒渉する。背中には生活道具いっさいが入った大きなバックパック。

のちにヨーロッパの仕事をするようになったとき、アルプスよりもピレネーに惹かれたのも、ピレネーがより自然が濃く、原始的だったからだと思います。それにピレネーの人たちがお金を稼ぐことよりも、家族や友人との時間を大切にするのも心地よかったです。

▲自然にも人の営みにも心が震えた大好きな土地、ピレネー。

――お客さまにどんな経験してもらいたい?

青崎さん:先住民族のエスキモーから「東京に帰ると忙しい日々になるけれど、道端の小さな花を忘れないで」と言われました。私もお客さまに、自然の美しさに目をやる瞬間をもってもらえたらと思います。熊野古道を案内したとき、歴史や文化を知れたのもよかったけれど、鳥のさえずりが気持ちよく心に残っていると言われ、うれしかったです。旅は非日常の景色を私たちに見せてくれます。ともに旅をした人たちと作り上げるチームワークや楽しい時間もあります。そういったことに心が動かされ、心が震える……お客さまにもそんな時間が訪れたらよいなと。

――日本のトレイルの可能性は?

青崎さん:文化や歴史が色濃くある点です。山麓には消えゆきそうな小さな村や工芸品もあります。歩くスピードで旅をすれば地元の方と交流ができ、じっくりと味わえます。こういった旅が消えゆくものを救うこともできるのではないかと思っています。

▲日本を訪れた外国人を山や山麓に案内する。限られた時間のなかで日本の自然や歴史、文化を味わってもらいたい。

――病気になって考えたことは?

青崎さん:2023年夏にステージ3の子宮がんが発見されました。抗がん剤治療をくり返しています。来年の桜を見ることができるか、次のお正月を迎えられるかわからないなかで強くいられるのは、旅や山での経験があったからだと思います。アラスカで何日もテントに閉じ込められブリザードをやりすごしたり、カナダのウエストコーストで雨のなか1週間歩いたり。自然は自分の思うようにはいかない。

いまは自分の体がまるでひとつの宇宙のように感じます。思いどおりにいかなくとも、静かに待つ術を知っています。日本で担当していたカナダのハイキング会社の社長が病気のことを知り、お客さまに連絡を取り、当時の写真や私へのメッセージをビデオでレターにしてくれました。それを見て、「現場に戻りたい。生きている限りこの仕事をしたい」と思いました。自分自身が旅や登山で心が震えたことを、お客さまと分かち合う。私がそうであるように、彼らの心のなかになにかが残っていく。こんなすばらしいことはない。それに携われるとしたらガイドという仕事は本当にすばらしいです。

青崎涼子さん

1972年、福岡県生まれ。旅行会社でアラスカなどの旅を企画、添乗。その後NOLSを経験、カナダ・キャンモアの旅行会社で働く。現在は、登山ガイドとして日本人や訪日外国人に、アラスカ、ピレネー、国内の登山、旅を案内する。ピレネーには10 年通った。日本ロングトレイル協会理事。Guide of the Year2024(地球の歩き方)受賞。

・資格……全国通訳案内士(英語)、日本山岳ガイド協会登山ガイドⅠ、アドベンチャー旅行コンサルタント
・得意分野……自分の荷物をすべて背負って歩くバックパッキング
・好きな山域……上高地、どこでもドアでいますぐ移動できるならピレネー山脈に戻りたい
・好きなアクティビティ……トレッキング、カヌー、スノーシュー(静かな自然のなかに入っていける手段が好き)
・アウトドア以外の趣味……語学(コミュニケーションの手段を増やすのが好き)

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PROFILE

ランドネ 編集部

ランドネ 編集部

自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

ランドネ 編集部の記事一覧

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