旅上手なあの人のバックパックの中身#3 真田緑
ランドネ 編集部
- 2021年08月14日
木のぬくもりに包まれたアトリエで、さらさらと筆をなびかせるのは真田緑さん。幼いころからずっと、絵が好きだった。その一途な想いは、山歩きにも、道具にも、向けられていた。そんな真田さんの愛用道具を見せてもらいました。
H/A/R/V/E/S/T 真田緑さん
会社を退職後デンマークへ留学し北欧デザインを学び、2014年より自身のテキスタイルブランド「H/A/R/V/E/S/T(ハーベスト)」を始める。アパレルブランドや企業へのテキスタイル・グラフィックデザインの仕事も行なう。https://midorisanada.thebase.in/
好きなものに囲まれて世界を旅して、彩を描く
木々のなかに佇む、山小屋のような一軒家。軽井沢に引っ越して約3年。窓から木漏れ日が差し込むリビングには大きな暖炉、2階は道具置き場とアトリエ。そこで生み出される真田緑さんのブランド「ハーベスト」。自身が旅した自然の風景やできごとを描いている。緑さんにとっての旅と自然。その始まりは20代にさかのぼる。
「忙しい毎日から離れて、まったく違うところに行きたいと思ったんです」。雑誌で見た雪山の風景に惚れ込んだ らしい。〝まったく違うところ〞といったって、まさか雪山から始めるとは……、しかもたったひとりで。個人ガイドに申し込み、道具リストを握りしめて登山用品店へ向かった。
「これ、一式ください!」そういって初めての山道具を買い揃えた。3年ほどガイド登山を続け、ついには雪の剱岳に登頂したというから驚いた。いまのスタイルに変わったのは、北欧のトレイル旅がきっかけだった。初めての〝自分で全部の荷物を背負う〞旅。「力がないからとにかく軽くて丈夫なもの。パッキングするときの収まりのよさも大事にしています」。
ULブランドがはやりはじめたころで、軽い道具の選択肢は多かった。ブログを読み、使ったことのある人に使用感を聞き、めちゃくちゃ吟味するのが緑さん流。だから、買って後悔したことがあまりないという。愛用しているバックパックは、山と道。ほかは持っていない。
「軽くて背負いやすいし、自分にとって 適量が入るサイズなんです」初めて買った登山靴をいまでも使っているらしい。物持ちがいいんですねというと「気に入っているものを使い続けたいから、あまり新しいものに興味がないんです」と笑う。「でも壊れたとき、ほかにいいものがあれば買い替えるかも!ブランドにこだわりはないんですよ」そのシンプルな考え方がすがすがしい。毎回必ず持って行くものはありますか?と尋ねると、返ってきた答えは「水彩道具」。そりゃあそうだ、商売道具だもの。
最初のうちは趣味で描いていた絵がいまでは仕事になった。アパレル会社でテキスタイルデザイナーをしていた緑さんは、仕事に疲れたとき、ふと「自分のために描きたい」と思うようになった。すでに山歩きを始めていたから、心動かされたきれいな景色や花の絵を 自分のためだけに描きためていった。「のんびりと歩いて、テントを張って、その日見た景色や写真で撮った風景をテントの中で描くんです」。
山に持って行くパレットは意外と大きい。「これ以上小さくできなくて。色数を減らせない。山で出会ったさまざまな色を表現したいんです」。行きたい場所があって、旅をして、絵を描く。それが緑さんのライフスタイル。
道具で何が一番好きかとたずねてみた。「ウエアですね!服が大好きなんです」白いシャツの下に透けるボーダーシャツ、ベースボールキャップに流行りのラウンドサングラス。普段着のようなスタイリングがかわいい。「だって、できればオシャレしたいじゃないですか」。
好きなものに囲まれて自分らしく楽しむのが上手な緑さん。その自然体な感じは、なんだか作品の優しい雰囲気そのものだ。いっぽうで、剣岳にまで登っちゃうまっすぐな一面もある。好きなものに対して一途な想いは、道具愛にも現れているように思う。ふたつの淡いコントラストが緑さんの魅力なのだろう。
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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