ソトコト×ランドネ 編集長が語る「関係人口」とは?持続的なローカルファンの作り方
ランドネ 編集部
- 2021年08月27日
ピークス株式会社と株式会社sotokoto online共催で「ソトコト×ランドネ編集長対談!メディアでつながる関係人口〜SDGs的ローカルファンの作り方〜」ウェブセミナーを、2021年7月29日に開催しました。
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注目が高まる「関係人口」とは
近年、地方圏は人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面しています。そこで、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる「関係人口」への注目が高まっています。
今回のセミナーでは、未来をつくるSDGsマガジン『ソトコト』編集長・指出氏と、自分らしいアウトドアの楽しみを探す人に向けた専門メディア『ランドネ』編集長・佐藤のそれぞれが、持続的なローカルファンの作り方やその先について、具体的事例とともに語りました。
『ソトコト』流 関係人口の作り方
まずは、未来をつくるSDGsマガジン『ソトコト』の編集長・指出一正氏にお話を伺いました。
「コトアカデミー」という関係人口育成の講座や、環境省から依頼を受け、SDGsをわかりやすく伝える「SDGsローカルツアー」など、町づくりや地域づくりに興味のある人と地域をつなげるといった、楽しみながら自分の未来を考え、集まる場所を作るのが『ソトコト』の事業のひとつだと考えているそうです。
多くの講座を開催し、地域を盛り上げる指出氏が講座を設計するうえで大事にしていることは何なのでしょうか。
魚が大好きだという指出氏は、サクラマスとイワナとタナゴという魚が生息する地域から、地域の豊かさを紐解いているといいます。
「地域に300~400年続く味噌・醤油蔵があったり、若い人がUターンをして、リノベーションで新しいコワーキングスペースを作るようなところには、だいたいこの3種類の魚がいます。それは、この生き物が生きられるだけの素地や豊かさを創出できるような形を、これまで受け継いできた場所なので、東京では出会えない関係性に出会うことができるのです。関係人口の講座も、そういった考え方にのっとって設計しています」
関係人口を学ぶ講座を開くことで起こること
関係人口という考え方は、2012年あたりから始まりました。その起点となったのが、首都圏在住で島根県の地域づくりに関心を持つ方を対象とした「しまコトアカデミー」。
10年目となる「しまコトアカデミー」の一期目からメイン講師を務めている指出氏は、「『ゆるくふわっと地域に関わってみないか』というような講座で、とにかく楽しくて面白いんです。卒業生含め300名以上の受講者がいて、コミュニティーとしては600名くらいになっています」と話します。
指出氏は、このほかにも約700名が参加する、福島県郡山市という街を面白がる「こおりやま街の学校」学校長、高知県津野町の四万十川源流点で開かれた「地域の編集学校」メイン講師、さらに、良品計画から依頼を受け社内のメンバーに地域を編集するという視点を伝える「暮らしの編集学校」校長も務めています。
『ソトコト』の講座事例はコチラをご確認ください。
『ソトコト』流関係人口のつくり方のサスティナブルな視点とは
『ソトコト』の講座では、「80代のお母さんから小学校2年生の男の子までが仲間だと思えるような空気」をつくるため、上記の4項目を大事にしているそうです。20~30代の若い世代が多様な世代ともつながっていくことで、域幅のようなものを感じてくれたら嬉しいと語る指出氏。
「サスティナブルな視点とありますが、その町に関係案内所、つまり人と人との関係を案内できる場所があるかどうか。その町の人や、そこに訪れる人が未来をつくっているという手応えを共同に感じられているか。何よりも、自分が幸せであることが大事であり、『自分ごと』として楽しめているかが、そこに含まれているかということ。
そして、実は大人になってからでは、多様な世代の仲間をつくるのはなかなか難しいんです。友達は多いけれど、同年代の部屋の中で過ごすということが、今の僕たちの社会構造なんです。それをもう少しオフセットしたいなというのが、『ソトコト』講座での狙いです」
『ランドネ』流 関係人口の作り方
『ランドネ』の読者には、山が好きで自然を近くに感じながら過ごしたいと思っている方々が集まっています。山に登るだけではなく、ふもとの地域の食・文化も楽しむような山旅に関心を持つ方が90%を占めています。下記データは、約1,800名の方が回答したアンケート(2021年7月実施)の結果です。
地方移住やワーケーションについての質問では、まだ行動には移していないものの興味があるという方が多いことがわかりました。地方移住については約83%の方が興味を持ち、多拠点生活、ワーケーションについては約74%の方が興味を持っています。
一方、すぐに行動に移せなかったり、頻繁には山旅に行っていない……という結果も出ています。ここにどのような課題があるのでしょうか。
一番大きな課題は「交通手段」です。車を持たない若者が多いことや、訪れた時にバスが走っていない、行きたい場所にバスが通っていないことも多いということがアンケート結果から想像できます。タクシーを利用するという手段もありますが、仲間がいないと金額が高くなってしまうので躊躇してしまいます。そういった悩みをフォローすることが、今後も大事なポイントになるでしょう。
また、「登山前後に立ち寄るスポット」を見つけられない方も多いです。限られたスケジュールの中で、魅力的な食、お土産、温泉など、全てを巡れるようなプランを自分で作ることは難しいと感じているようです。
『ランドネ』では、こういった課題を解決することで、「本当はもっと山を感じるような旅をしたい、ワーケーションをしたい、自然を感じて暮らしたい」と思っている方を後押しできると考え、「交通手段」「登山前後に立ち寄るスポット」といった2つの大きなテーマを掲げてプロジェクトを行っています。
『ランドネ』の課題解決事例はコチラをご確認ください。
『ランドネ』流関係人口のサスティナブルな循環
一度訪れるだけでは、その新しい場所を「好き」になるのはなかなか難しいことです。しかし、山であったり、アウトドアであったり、「好き」があるからこそ着眼できるポイントがあります。
「地元の方とコミュニケーションをとるキッカケがたくさんあるほど、その土地をもっともっと好きになれるし、また行きたいと思える。さらに、周りの大切な人にも伝えたいと思えるようになる。そういったことがつながっていくと、自然とその土地が盛り上がっていくというサスティナブルな循環ができていくと思っています。『ランドネ』は、これからもそういう活動を続けていきたいですね」と締めくくりました。
「関係人口」は日本の重要な施策のひとつ
「地方に観光案内所は必要ない、来た人と地域の人をつなぐ関係案内所が必要」という指出氏の言葉が印象的でした。「関係人口」はこれからの日本の重要な施策のひとつ。地域の魅力を高め、発信するためにも『ソトコト』や『ランドネ』といったメディアが一緒に盛り上げていけることがたくさんあると感じました。
セミナー内容の詳細、アーカイブ映像の視聴はコチラから。
登壇者プロフィール
『ソトコト』編集長
指出 一正(さしで・やすまさ
1969年群馬県生まれ。島根県「しまコトアカデミー」メイン講師、静岡県「『地域のお店』デザイン表彰」審査委員長、奈良県「SUSTAINABLE DESIGN SCHOOL」メイン講師、和歌山県田辺市「たなコトアカデミー」メイン講師、山形県小国町「白い森サスティナブルデザインスクール」メイン講師、福島県郡山市「こおりやま街の学校」学校長など、地域のプロジェクトに多く携わる。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部「わくわく地方生活実現会議」、「人材組織の育成・関係人口に関する検討会」委員。内閣官房「水循環の推進に関する有識者会議」構成員。環境省「SDGs人材育成研修事業検討委員会」委員。経済産業省「2025年大阪・関西万博日本館」クリエイター。著書に『ぼくらは地方で幸せを見つける』(ポプラ社)。趣味はフライフィッシング。
『ランドネ』編集長
佐藤 泰那(さとう・やすな)
1985年大阪府生まれ。バイク雑誌編集部を経て、2009年の創刊から『ランドネ』編集部に所属し、2018年から編集長を務める。雑誌、WEB記事編集のほか、イベント企画運営、商品開発、ファンコミュニティの運営、クリエイターのマネジメントなどを行う。四角友里さんや、モデル/フィールドナビゲーター・仲川希良さん、漫画家/エッセイスト・鈴木ともこさんなどの編集も担当。2020年4月に独立し、起業。山登り歴13年。
- BRAND :
- ランドネ
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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