ガイドさんに聞く!服装は?虫対策は?森歩きの知っておきたいポイントとは
ランドネ 編集部
- 2021年10月13日
生命の源である森では、草花や木々、そして動物たちの息づかいを感じることができます。森を大切に歩くためのポイントを教えてもらいました。
自然に配慮しながら森歩きを楽しもう
教えてもらいました!
山岳ガイド
天野和明さん
アルピニスト/IFMGA国際山岳ガイド。石井スポーツ登山学校校長。日本人で初めてピオレドール(金のピッケル)賞を受賞
森には五感を使って楽しむ要素がたくさん
色鮮やかな緑、樹木の香りや木漏れ日、川の流れる音など、森には五感を使って楽しむ要素がたくさんあります。地域の気候や標高によって違いはありますが、針葉樹や広葉樹などさまざまな樹木が自然体のまま育っている森は、とくに気持ちがいいですよね。私たちに身近なスギやヒノキなどの植林地では感じることのできないような、自然本来の美しさを感じることができます。
そんな大切な自然を守っていくために、生態系保全に努めるのも私たち登山者の約束です。植物や石などを持ち帰らない、外来の植物や動物を持ち込まない、野生動物にエサを与えないなど、自然に配慮しながら森歩きを楽しみましょう。
森歩きで知っておきたいポイント
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森に出かける前に
トレイルの特徴に合わせた服装・装備選びを
“森”とひと口にいっても、地域や標高、地形によって植生はさまざま。危険な虫が多く生息するような森のなかでは、肌の露出をなるべく控えたり、虫除けアイテムを携帯したりすることが大切。また、湿度が高いコケむした森などでは、滑りやすい個所が多くあるため、グリップ力のあるシューズを履いていくなど、事前にトレイルの特徴を把握しておくと安心だ。もちろん、ファーストエイドキットも忘れずに準備を。
あると便利な虫対策グッズ
天気をチェックしよう
山に行く前に天気を確認するのは鉄則。あらかじめ雨だと分かっている場合、登山を控える人が多いかもしれないが、“森歩き”が目的なのであれば木々が身を守ってくれるので、少しの雨なら問題なく歩ける。雨で苔などの植物が生き生きとし、鮮やかな緑の景色を見られることも。ただし、木の根や石の上が雨で滑りやすくなることがあるので注意して歩こう。
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森から帰ったら
虫に刺されていないか確認してみよう
どんなに対策をしても気づかないうちに虫に刺されたり噛まれたりしていることも。時間が経過すると重症化するリスクもあるので要注意。マダニの場合、痛みがなく気づきにくいうえ、手で引き抜くとマダニの一部が皮膚内に残り感染症をひきおこす危険も。すぐに皮膚科にかかるか専用の除去器具を活用して冷静に対処したい。
シューズのソールをしっかり洗おう
生態系保全のために外来の植物の種子をほかの森に持ち込まないようにしたい。帰宅後は必ずトレッキングシューズをきれいに洗う習慣をつけ、登山口ではシューズの底についた種子を落とすなどの対策をしよう。エリアによっては、登山口に植物の種子を落とすためのマットが置かれている場合もある。
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森を歩くときは
動物に気をつけよう
森のなかで野生動物に近距離で出会うと、驚いて襲ってくる危険がある。基本的に動物も人との接触を避けて暮らしているため、鈴を鳴らすなどして自分の存在を知らせることが大切。しかし、餌付けや食べ物の不法投棄により、人がおいしいものを持っていると学習している動物は、音を聞いても逃げないことも。餌付けをしないことやゴミを捨てないことなども絶対に守りたい。
クマにはとくに注意
おなじような景色が続く森では道迷いに注意
稜線に比べて目標物が見えにくい森歩きでは、道迷いに注意を。人が歩くことで簡単に“道らしきもの”はできてしまい、気づいたら林業などの仕事道や電力線の保守管理道などを歩いてしまうなんてことも。森を歩いていて、靴底に伝わる感覚が急にふわふわと柔らかくなり、枯れ枝や石ころが突然多くなったら立ち止まる、場合によっては引き返そう。道標やテープ、目印になりそうな特徴ある木々などをその都度チェックし、こまめに地図と照合しながら歩くと道迷いを防ぎやすくなる。
必要以上に自然にストレスをかけないようにしよう
人気のある山域に人が集中してしまうことで自然環境の許容範囲を超えてしまい、山の環境破壊が進行するオーバーユースが懸念されている。登山道を外れて歩かないようにしたり、トレッキングポールの石突きにキャップをつけたり、混んでいる山域は避けたりなど、山へのローインパクトを心がけよう。何もないような場所に見えても、土のなかにはたくさんの生命が眠っていることを忘れずに、森への思いやりをもって過ごそう。
森ならではの楽しみ方を見つけてみよう!
多くの生き物が暮らす森。たまには森だけをとことん味わうという登山も楽しい。双眼鏡やバードコールで鳥を観察してみたり、虫眼鏡で虫やコケ、木々をじっくり眺めてみたり。いつもと違う視点で森に入ってみると新しい発見が待っているかもしれない。
(出典/ランドネ 2021年11月号 No.120[雑誌])
- BRAND :
- ランドネ
- CREDIT :
- Photo◎後藤武久、上田崇
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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