山のそばでものづくりVol.3「後藤郁子商店」切り絵作家・後藤郁子さん

山のそばに拠点を置き、山の恩恵を受けながらものづくりをする人々に注目する本連載。今回は、切り絵作家の後藤郁子さんにお話を伺いました。

山が引き合わせてくれた”絵を描く”という喜び

後藤郁子商店

profile
後藤郁子さん

「後藤郁子商店」主宰。石川県出身。都内の美 術大学を卒業。いくつかの仕事を経験したのち甲武信小屋で働き、 切り絵作家活動を開始。山梨県韮崎市に住み、夏は八ヶ岳、冬は野辺山などへ出かけている。
ikuko510.stores.jp

なるべく一枚に仕上がるように、
切り抜くところ、残すところを決めていく。

甲武信小屋や七ツ石小屋、七丈小屋のお土産コーナーに並んでいる、切り絵作家の滝平二郎氏を彷彿とさ せられる絵が描かれた山小屋オリジ ナル商品の数々。これは、切り絵作家・後藤郁子さんが手がけたものだ。

後藤さんの生まれは、石川県金沢市。中学に上がって東京都の多摩エリアに移り住み、都内の美術大学へ進学した。卒業後は、時間に自由度のあるアルバイトなどをしながら絵を描くという生活をしばらく送っていたが、いつの間にか描かなくなり、長い年月が経っていた。

そんな後藤さんが、〝絵を描く〞ことにもう一度出会えたのは、介護職に就いていたときに、趣味で登山を始めたことがきっかけだという。

「ひとりで甲武信小屋に泊まりに行ったときに、小屋番さんと話をして、楽しい時間をすごしました。そしたら翌年春、『山小屋で働きませんか』と書かれたハガキが届いたんです」

後藤さんは、すぐに介護職を辞めて、甲武信小屋で働き始めた。

「山小屋のイベントで絵を描いたら、山小屋の仲間たちがとても喜んでく れたんです。この経験がうれしくて……。徐々に絵を描き始めました」

最初は絵の具やペンなどで絵を描 いていたが、山小屋にあった折り紙を使い始めたら、はまってしまったという。その後、活躍の幅は甲武信小屋のポスターから七丈小屋の手ぬぐいへと、どんどん広がっていった。山を登り始めてつながりが生まれ、結果、好きな絵を生業にすることができたという後藤さん。今後について伺うと、「個展を開きたい」と生き生きとした表情で語ってくれた。

後藤郁子商店の商品ラインナップ

もりのてぬぐい（ブルー）

“どこかにある山の片隅の夜” を想像して切り絵で表現したという、一枚に山のロマンが詰まった手ぬぐい。ほかグリーンもある。1,600円。35×90㎝。

秩父多摩甲斐国立公園サコッシュ（小）

奥多摩ビジターセンターで限定販売されている。キャンバス地でサイズは３種類。正面にポケット付き。1,000円。17㎝×24㎝、ショルダー115㎝。

絵葉書 各種

山や動植物、登山者などをモチーフにしたデザイン多数。切り絵の世界観を手元に置いておける。山仲間への贈り物にも最適。各200円。100×148㎜。

かもしかTシャツ（紺）

山の人気者のカモシカを、背面に大きく描いた一枚。綿100％で、肌触りよし。首回り広めのレディースサイズあり。素材や色違いも多数。3,200円。

原画「山の神さま」

翼を生やした葉っぱが空を飛び、女の子が山の上からひょっこり顔を出す。さまざまな山の物語が頭に浮かぶ一枚。価格未定。127×178㎝。

KAIKOMAピンバッジ

甲斐駒ヶ岳の山頂直下にある、七丈小屋オリジナルデザイン。黒戸尾根の象徴「二本剣」と雲海に浮かぶ日の出がモチーフ。各700円。3×2㎝。