五感で楽しむ春の味覚、タケノコは鮮度が命!【登山ガイド・渡辺佐智の“やまのさち”】
ランドネ 編集部
- 2016年04月26日
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登山ガイドの渡辺佐智さんが、自然の中で採れる旬のごちそうを追ってあちこちの山へ。さて今回のごちそうは?
今回は、里山のさち! おいしい新芽が続々と生えてくる春。何を採りにいくべきか、悩みはつきません。
【千葉県・大多喜町のタケノコ】
イネ科孟宗竹の新芽
旬:4月
2~4年目の竹の根から生えるタケノコを収穫する
○教えてもらった名人
森 紀久嗣さん
夷隅郡市たけのこ竹林管理コンクールで最優秀賞を受賞したスペシャリスト。今年のタケノコは良い出来だそう。
山笑う、春の訪れをテーブルに
タケノコご飯、若竹煮、タケノコの刺身・天ぷら、焼きタケノコに山椒味噌、タケノコと春野菜のパスタ、和洋中とどう料理してもおいしいタケノコ。10日という意味がある「旬」という字に、竹冠をつけて「筍」と書く。あっという間に移りゆく季節を楽しむ野菜である。冬を越え春になると新芽を食べたくなるのは、体が欲しているからだ。タケノコの水煮は年中手に入るけれど、国産の採りたては格別。脳内タケノコがニョキニョキと生え始め、抗えなくなった私は千葉県大多喜町へタケノコ農家の森さんを訪ねた。
今回向かったのは、山は山でも“里山”である。待ち合わせた住所に近づくと、民家と萌黄色に輝く裏山が目に入った。朝採りのタケノコを掘っているところを一緒に山へ入らせてもらう。ご自宅の後ろに回ると、満開のつつじが咲き、傾斜のある緑の道が、その奥の美しい竹林へ登っていく。
タケノコはパッと見渡しただけでは見つからず、森さんにどこに生えているのか教えてもらうが難しい。地面の外に顔をだしているものは硬いので採らない。タケノコが出てこようとしている地面の割れ目や、1~2cmのまだ緑色になっていない黄色の新芽、という小さな変化を竹林の下草の中から探す。おいしいタケノコを育てるには1坪に1本以下の竹が生えている状態がよいそうで、日の光が差し込む明るく爽やかな竹林の下は緑の草に覆われているのだ。私の想像する鬱蒼として暗い竹林イメージは見事に覆された。林床に光が入らない林の土は保水力を失い、雨水によって流出する。登山中、荒れて暗い山道を通るときに寂しい気持ちになったことはないだろうか。それに対し、人と里山が緩やかにつながる暮らしのなかで、山や森林に人の手が入るとこうも違うのだと居心地がよかった。
竹林から戻ると、奥さんがタケノコ料理を振る舞ってくださった。湯気のたつタケノコを頬張ると、驚くほど癖がなく、鼻に抜ける風味と歯ごたえ、音と旨みが、私の五感すべてに押し寄せた。
この土地の粘度質の土壌「酸性白土」がアクが少なく柔らかいタケノコを育てる。空気に触れてないタケノコを探す
1.タケノコが芽を出そうとしているところには割れ目ができる。これだけわかりやすいのはまれ。微妙な土の盛り上がりも探すヒントに
2.竹かごと鍬の仕事スタイル。地面の下で育っているタケノコを想像し、目で見るだけでなく足裏の感覚でもタケノコの芽を探す
鮮度が命! 収穫後はどんどんえぐみが増すため、すべてを後回しにしてできるだけ早く下茹でしてから保存
1.タケノコご飯と味噌汁。タケノコご飯にはお揚げがよく合う。新鮮なタケノコを生から煮ると出汁がでておいしい味噌汁になる
2.タケノコの刺身。掘りたてを生のまま食べるか、軽く下茹でしてから食べる。私はほっこりした甘味を感じる下茹でが好み
○渡辺佐智(わたなべさち)
自然のなかで体を動かし、
おいしいものを食べることを愛する。
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やまのさちサイトで番外編を公開中!
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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