ウワバミソウをスペシャルに味わう「ミズトロロ」【登山ガイド・渡辺佐智の“やまのさち”】
ランドネ 編集部
- 2017年11月24日
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登山ガイドの渡辺佐智さんが、自然の中で採れる旬の幸を追ってあちこちの山へ。さて、今回のやまのさちは?
芋・栗・南京。おいしいものは数あれど、秋から冬にかけて炭水化物が恋しくなる季節。ムカゴの丸みのあるでんぷんの味を楽しむなら、薄味で調理して新米にのせたい!
【信越のウワバミソウ】
イラクサ科
時期:5月~10月 ムカゴは秋
場所:沢沿い、湿り気のある日蔭斜面
別名:ミズ、ミズナ
いつでもどこでも誰にでも
沢に入ればいつでもあって、初夏から秋まで長い期間食べられる。群生するので、沢登りでは「新鮮な野菜の補給」の定番。くせがなく食べやすいので、たいていは味噌汁の具にしている。山で採れるものの風味やくせが好きな私には、ちょっと物足りなさを感じるが、いつか何も取れなかったときに、「やまのさち」でお世話になろうととっておいた山菜だ。
もう登場させていいのか? もしかして連載終了か? という懸念が浮かんだ方、大丈夫です。来年も隔月で続けさせていただきます。どうぞ、やまのさちのお味見におつきあいくださいませ。
ウワバミソウをいつもよりスペシャルに味わいたいなら、通称「ミズトロロ」。時間がかかるので、山中でゆっくりできるときの食べ方だ。根っこやひげ、葉をきれいに取り除いて軽く茹でたあと、茎の皮をむく。この作業が長い峠越えだが、丁寧に行うと滑らかになる。そのあとはアジのなめろうと同じように、包丁で叩けば良い。次第に粘り気が出てとろりとしてきたら、炊き立てのご飯にのせていただく。食べ物は手間をかけるとおいしくなる、と誰かが言っていたけれど、そんな言葉といっしょに咀嚼したい滋味深さだ。
ところで、秋に入った山でウワバミソウの瑞々しい葉が登山道の横にきれいに並んでいた。あまりの新緑具合に、この時期にまさかの新芽? 雪渓が残っていて芽がでたのが遅かったとか? うーん。雪が残るにはちょっと無理のある標高かな。近寄ってよく見ると、茎に鋭利な切れ目がある。動物の食痕? いや、待て待て。この計画的な刈られ方は真夏の登山道整備で刈ったあと、再生したのでは! というところに落ちついた。二期作できるなんて、なんと素晴らしいウワバミソウ! 二度と物足りないとか申しませんので、これからも見つけやすい沢の食料として、人間に手を貸してください。
やや湾曲した葉が特徴的なので覚えておく。まとまって生えるので見つけやすい。
1.沢筋などの湿気のあるところに多い。そういった場所に登山道がある場合は、周りをよく見て探す。
2.手前は、根元部分が赤くおいしい「アカミズ」。奥の1 本は説明用に採った赤くない「アオミズ」
3.充分に育つと茎の節部分にムカゴ(実)ができる。アカミズはムカゴが赤いので、探す目安になる。
味つけは好みで。こっくりした味噌味か、キリッとしたわさび醤油味かどちらか悩む。
1.手前からムカゴ、根元の赤い部分、緑の茎。それ以外の部分は取り除いて、きれいに洗う。
2.茹でると、すべての部分が透き通ったヒスイ色に変わる。茹ですぎはとろみがなくなるので、禁物。
3.茎の外側の固い繊維を包丁で丁寧にむいてから、包丁で叩いてしっかり粘りを出す。
<採取時の注意>
ウワバミソウの名前は蛇のいそうなところに生えていることから。葉が生い茂っている場合は、いきなり手を入れて採る前にトレッキングポールや棒で草むらをめくってみる。私が蛇に出会う実際の場面は、草むらのなかの暖かいところで日向ぼっこをしていることが多い。
○渡辺佐智(わたなべさち)
自然のなかで体を動かし、
おいしいものを食べることを愛する。
安全登山のための情報を
ウェブサイトでも発信
www.yamanosachi.jp
やまのさちサイトで番外編を公開中!
http://www.yamanosachi.jp/bangai.html
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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