採るのをためらうほどのかわいさ「クリタケ」に出合う【登山ガイド・渡辺佐智の“やまのさち”】
ランドネ 編集部
- 2018年01月29日
登山ガイドの渡辺佐智さんが、自然の中で採れる旬の幸を追ってあちこちの山へ。さて、今回のやまのさちは?
昨秋、2日間のキノコ採りイベントに行ってきました。美しい森には、採るのをためらうほどかわいいキノコが生えていて……。
【南会津のクリタケ】
モエギタケ科
時期:10月(やや遅い秋)
場所:広葉樹の倒木や朽木に多い、木材腐朽菌
「GPS de キノコ教室」参加してきました!
眠い目をこすりながら道の駅たじまの駐車場に入っていくと、それらしい人たちがあちこちで立ち話をしている。老若男女、小学生からご年配の方まで50人はいそうだ。目的がおなじだと、人はおなじにおいを発するのかもしれない。私も今日は“キノコ採るぞ臭”全開だろう。
食いしんぼう(私)のその日の食い意地は、黄色く紅葉した周りの山をつまんでパクッとひと口にしたい気分だった。たぶん、枯れ葉のほんのり香ばしいにおいがして、落ち葉が重なったミルフィーユのサクサク食感と、噛むと中から栗あん系のほっこりした甘さに、熟れた木の実の軽い酸味のあるお菓子じゃないだろうか。ああ、なんて、おいしそう。
話を道の駅に戻そう。集合時間になると、GPSストア店長の菅野りつ子さんから説明があり、何人かのキノコ名人とグループに分かれて採りに行く、ということだった。各キノコ名人から「どこどこのエリアは、このキノコ狙いでいきます。歩く距離はこれくらいです」というプレゼンがあり、参加者はそれぞれ、自分の足と採りたいキノコを相談して、5グループに分かれる。私はホンシメジを狙うグループにエントリーをした。
入山した森はそれはきれいな黄葉で、空は曇天なのにウキウキする。キノコ名人・三瓶勝利さんの姿を見失わないようにしながら、散らばって、地面と朽木の両方を見ながらキノコを探す。立ち枯れや倒木は、キノコの影がなくても、近寄って確認するのが大事だそうだ。あった?、というメンバーの声に呼ばれていくと、クリタケの株が並んでいる。名前のとおり栗のような形のキュートなキノコで、懐かしきマリオブラザーズのクリボーのようだ。仔鹿のように明るい茶色も、傘に粉をふいたような毛もすべてがかわいい。根元にナイフを当てるとサクッと切れて、私の手の中にくり坊がコロンと転がり込んだ。きゅん。
今回、ホンシメジは閉店していたので、クリタケやムキタケ採りに変更。
1.集まって観察。人数がいると、線ではなく面で捜索できるので、収穫率が上がる!
2.キノコが崩れないように、新聞紙で包む。ビニール袋に直接入れると湿気で崩れてしまう。
食べる:作ってもらったキノコ汁。食感がシャキッとしたクリタケ。食べるときは一回茹でこぼしてから。
学ぶ:翌日は採ったキノコを並べて、長谷川明先生によるキノコの勉強会。著書:都会のキノコ図鑑。
<間違えやすい毒キノコ>
ニガクリタケもおなじような場所に出てくるので間違えやすい。形は似ているが、色が違う。クリタケは赤っぽい茶色で、ニガクリタケは緑がかった黄褐色。その名のとおり、噛むと苦いらしいのだが、毒性が強いと聞くので私は試したことはない。
<参加したイベント:GPS de キノコ教室>
東京・代々木にある「GPSストア」のイベント。春は山菜、秋はキノコを採り、夜は古民家で大宴会。参加者の肩書きもさまざまでおもしろい。
○渡辺佐智(わたなべさち)
自然のなかで体を動かし、
おいしいものを食べることを愛する。
安全登山のための情報を
ウェブサイトでも発信
www.yamanosachi.jp
やまのさちサイトで番外編を公開中!
http://www.yamanosachi.jp/bangai.html
SHARE
PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。