日常と自然をつなぐ観光列車に乗って"ゆふいん"の山へ
ランドネ 編集部
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ぽっかりと空いた週末の2日間。山歩きが好きな私たちなら、迷わず山旅の計画をするはず。今回目指したのは、いつもより少し足を延ばした九州・大分県の由布院。朝10時。博多駅のホームから、心を動かす旅がはじまります。
どこか遠くの町へ旅に行きたい。日々仕事に追われているから、好きな人とケンカをしたから、友人といっしょに思い出を作りたいから。理由はさまざまだけれど、きっと共通していることは、日常から離れ、頭のなかをからっぽにして、心も体も癒されたい。その候補地としてよぎるのは、自然が溢れる場所や温泉地。山が好きな人ならば、もちろん山を思い浮かべたりする。居心地のいいカフェや、いつでも旅を思い出せる素敵なお土産も、あればなおうれしい。
JR博多駅のホームに立つモデルのinoriさんもまた、そんな旅に出かけるところ。週末の2日間を利用して、九州まで行き、山歩きも温泉も、町歩きも楽しもうというのだから、わがままだ。それを実現するために欠かせないのが、観光列車「ゆふいんの森」の存在。朝一番の飛行機で福岡まで行き、博多駅発の列車に乗車すれば、ランチタイムには由布院に到着できる。帰路に着くまでは1日半。短いあいだでも、由布院を満喫したい。そんな思いでいっぱいだった。
ホームに到着した観光列車は、エメラルドグリーンにゴールドのライン。ひと目で〝贅沢〞な雰囲気だとわかる車両に、inoriさんの期待も膨らむ。指定された座席に座り、周りを見渡すと、深い緑のシートにゴールドの荷置き、優しいオレンジの照明など、車内も期待通り。住宅が立ち並ぶ街を抜け、次第に景色は里へと移り変わる。車内アナウンスでは、「窓から見える山々は、耳納(みのう)連山です」という初めて聞く山の名前に、早くも〝遠くまで来た〞という感覚になる。列車は、その土地の個性を映し出しているものだ。駅の名前も、乗り合せた地元の人たちの方言混じりの会話も、その場所でしか聞くことができない。移動を手段と考えずひとつの目的として楽しんだり、目的地までのあいだの風景のなかに身を置くことができれば、その旅の厚みは何重にもなる。
快適な2時間の列車旅は、あっという間。目的地の由布院駅のホームへ、ゆふいんの森が入っていく。駅員さんが笑顔で待つ改札を抜けると、目の前にはお目にかかりたかった由布岳の姿。あの山を歩くのか。
雲の切れ間からチラっと顔を覗かせる由布岳の山頂付近は、真っ白な霧氷で覆われていた。この日は12月下旬。標高1,583mあることを考えれば、雪が降っていてもおかしくはない。山頂を目指すことを諦め、今回は由布岳の横にある山、飯盛ヶ城(いいもりがじょう)を最終目的地に決めた。ピークを目指さなくても、ここはもう由布岳の懐のなか。自分たちが無理なく由布岳を楽しめる最適のルートだった。
登山口から歩き始めると、黄金色の山に真っ黒な登山道が続いていた。春から秋にかけては、多くの登山者で賑わうというこの場所も、この日は年末の平日ともあり、とても静か。そのおかげか、シカの親子がエサを探しながらすぐそばを歩いていく。
合野越(ごうやごえ)から先、由布岳山頂へのルートとは逆の西登山口コースへと入り、小さな丘のような山の上を目指した。山頂までの尾根道は、冷たい風が吹きつけ、何度も足を止めてしまうけれど、その度に振り返れば、大きくそびえる由布岳が励ましてくれる。「飯盛ヶ城」という山頂を示す看板が目に飛び込むと、inoriさんは「すご〜い」と歓喜の声を上げた。由布院の町も、由布岳も、さっきまで歩いていた黄金色の草原も、すべて見渡せる360度の絶景。感動と達成感に包まれたinoriさんは、何度もカメラのシャッターをきった。心のなかにかかった霧が、すっと晴れていく。その瞬間、由布岳にかかっていた雲が流れ、青空が見えた。
(アクセス)由布院駅から由布岳登山口まで路線バスで約15分。
由布院のお立ち寄りスポット
1泊2日の由布院の山旅で立ち寄った、おすすめのお店や宿などを紹介します。
陽だまり食堂
地元のおばあちゃんたちが作る、地元料理をいただける食堂。メニューには、大分名物とり天と季節野菜たっぷりのだんご汁がセットの「ひだまり定食(1,080円)」など。
(DATA)
大分県由布市湯布院町川上2914-1
TEL.0977-84-2270
営業時間:11:00~15:00
定休日:年末年始
nicoドーナツ 湯布院本店
由布市産の大豆を生地に練り込んだドーナツが、ドーナツ型のカウンターに並ぶ人気店。季節によって味は約10 種類。イートインコーナーもあり。
(DATA)
大分県由布市湯布院町川上3056-13
TEL.0977-84-2419
営業時間:10:00~17:00
定休日:年始
アトリエとき
里の静かな風景に建つお店は、工房が併設され、木の個性を活かし、使いやすさに配慮した器やカトラリーを制作・販売。肌触りがよく、美しいデザインが魅力。
(DATA)
大分県由布市湯布院町川上2666-1
TEL.0977-84-5171
営業時間:9:00~18:00(冬季~17:30)
定休日: 木曜
箸屋一膳
生木を約4 年かけて乾燥させ作られた、こだわりの一膳を販売。手の大きさを測り、自分に合った箸が選べる。人気の種類は桜の木。旅の思い出に箸作り体験も可能。
(DATA)
大分県由布市湯布院町川上2093-2
TEL.0977-84-4108
営業時間:9:00~17:00
定休日:木曜
由布院 いよとみ
日本の伝統色がテーマの客室など、こだわりの詰まったお宿ながらアットホームな雰囲気。地元食材を生かした夕食は美味。温泉は個室貸切りで24時間入浴可能。
(DATA)
大分県由布市湯布院町川南848
TEL.0977-84-2007
宿泊料金:登山応援プラン( 朝夕食付) 1名12,000円~( 立ち寄り入浴)
入浴料金:500 円
入浴時間:10:00~15:00
YUFUiNFO(ゆふいんふぉ)/由布市ツーリストインフォメーションセンター
由布院駅となりの観光案内所は、森や自然をイメージした癒しの空間。2 階の展望デッキからは、列車や由布岳が眺められるほか、観光に関する本やパンフレットも多数置かれ、旅の拠点として利用したい。
(DATA)
大分県由布市湯布院町川北8-5(JR由布院駅となり)
TEL.0977-84-2446
営業時間:9:00~ 19:00 ※冬期(12月~2月)は18:00まで
定休日:なし
- BRAND :
- ランドネ
- CREDIT :
-
写真/大畑陽子
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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