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コロナ感染防護服を医療現場へ。アウトトドアメーカー「モンベル」の試み

アウトドアメーカー「モンベル」の会長、辰野勇氏のfacebookに自らミシンを踏む動画が投稿されたのは、4月17日のことだった。感染防護服の試作品を作っている姿だ。

「休業中の店舗社員も動員して災害時用に備蓄したレインウエアとともに『アウトドア義援隊』として医療現場にお届けします。……今回の災害は国民のすべて世界人類すべてが被災者です。もちろんモンベルもその例外ではありません。 しかし、被災者も互いにできることで助け合うしかありません。乗り切りましょう」と。

これまで日本を襲った、地震、台風などの災害に出動したアウトドア義援隊の行動力とモンベルのテクノロジーをかけ合わせ医療現場を応援する活動が始まった。

 

アウトドア義援隊とは・・・
1995年1月に発生した阪神淡路大震災で、 辰野勇モンベル社長(当時)が、アウトドア関連の企業や団体に呼びかけて組織したボランティア集団。東日本大震災、ネパール大地震、令和1年台風19号など国内外の災害時に、多くのボランティアの協力のもと、復興支援を行っている。今回は医療機関へ、防護服を6万2,300着、フェイスシールドを3万個、レインウエアを500着の提供を予定している。

***

── アウトドア義援隊で防護服を作り始めました。そのきっかけを教えてください。

4月17日のことです。大阪にある一般財団法人住友病院の松澤佑次・前院長からの電話がきっかけでした。コロナの患者さんを受け入れるようになったけれど、感染防護服が足りなく困っているという内容でした。住友病院は、私が通院しているところです。

さっそくその日のうちに病院へ伺い、現場の生の声をお聞きしました。防護服の代わりに雨具のようなものが使えないかと考えているので、協力してほしいということでした。社に戻り、私なりに考え、ポンチョのように布をふたつに折ったものを作りました。生地は、アメリカ・デュポン社のタイベックです。ちょうど来年のシュラフカバー用に備蓄してありました。福島原発事故後の作業に入る ときに着用する防護服に使用されているのと、おなじ生地であることは知っていたので、これであれば使えると考えました。

さっそく、ポンチョのような試作を持っていき、感染制御室の林三千雄さんから指導してもらいました。 お話を聞いていると、着用するときはよいけれど、首部分の穴から着脱するときに汚染した服が顔の近くを通ってしまうため、よくないと。すぐに社に戻り、作り直しました。

── スピーディな展開ですね。次の防護服はどんな形だったのでしょうか?
ふたつ目の形が、最終的に完成形となりました。 私のなかでは、着物を後ろ前に着るようなイメージ。モンゴルやチベットの民族服にも似ていると思っています。後ろで重ね合わせるために、細い紐を袈裟懸けにして縛るのです。最後にフードをかぶります。脱ぐときは、紐を引っ張ればほどくことができ、服が顔の周りを通ることもありません。 自分でいうのもなんですが、なかなかおもしろいデザインができたと思っています。
洗濯テストは20回までクリアしました。10回くらいは使えるかなと考えましたが、院内にウイルスを防護できる洗濯システムが必要になります。住友病院には設置されていないので、使い切りになりますが、そのような設備を持っている病院ではリユースしてもらっています。

── ゼロからものを作り上げることにも驚かされます。

モンベルを創業したのはちょうど45年前ですが、それ以前は繊維関連の商社に勤めていて、デュポン社のタイべック、ダクロンはそのころからなじみがありました。創業時に初めて作ったシュラフもタイベック。素材の機能を熟知していたので、使いやすかったです。

何もないところから、ものを作るというのも、慣れない方にはイメージしづらいかもしれませんが、45年間ものづくりをしてきた私にとっては、それほど驚くことでもないんです。創業当時は、おやじの背広をほどいて、新聞紙で型紙を作ってダクロンのジャケットを作りました。スパッツ、手袋、レインウエアも最初は全部自分で作りました。 今回も、本社の会長室で、A4 のコピー紙とハサミを使って型紙を作りました。こういうこと、得意なんですよ。もちろん社内には、私より上手い社員もいますから、協力してもらいました。お話をいただいたその日のうちに、社内の最終確認まで回して形にしました。

最初は、アウトドアメーカーが医療現場で使うものを作ってもよいのか、厚生労働省の許可などが必要なのではないか考えました。 調べてみると、感染防護服などについては医療雑品の扱いにもできますし、またこのあとお話しするマスクも、あくまで飛沫防止のためということであれば、手作りでもよいと。それであれば、私たちがもっているテクノロジーを活かすことができると考えたのです。

─ 4月中に7つの医療機関に防護服が届きました。

北陸にある自社工場を使って、 私自身もミシンを踏みながら製造しました。北陸の工場は、通常は修理品を扱っています。申し訳ありませんが、いまはユーザーの方には修理をお待ちいただき、ここを稼働させて防護服製造をしています。それほど大きな工場ではないので、生産数も限られます。 シュラフカバー用のタイベックだけでは足りなくなったので、建材のタイベックを仕入れました。 合計2300着は作れると思います。

このほかに、中国の協力工場で製造した6万着を仕入れます。こちらの素材は不織布になり、武漢やイタリアの感染現場で使っているものとおなじです。使い切りになります。まずは5月末に3万着入荷します。それまでのつなぎとして、災害時用に備蓄してあった レインウエアをお送りし、代用してもらっています。フェイスシールドは、モンベルのゴーグルを作っている台湾の協力工場で製造しています。最終的には3万個発注しました。フェイスシールドは、どうしても内側が曇りやすいです。それでは作業性が落ちますので、ゴーグルで使われている技術を使って、曇り止め加工をしています。今日(5月7日)、1900個入荷しました。 医療機関に配布するほか、自社でも使用します。社員たちも守っていかなければなりません。直営店の店頭で、どうしても近い距離で接客しなければならないシーンや、レジで使用するよう、いましがた指示をしました。これはお客様の安全のためでもあります。

── 一般向けのマスクも発売しますね。

1200円でネット販売しました。自社オリジナル素材であるウイックロンを使用しています。中央にスリットがあり、ガーゼやコーヒーフィルターを入れて、密閉度を上げることができます。このあたりの発想は、アイディアを駆使して考えました。1個あたり、定価の半額にあたる600円をアウトドア義援隊に寄付いただくシステムです。お蔭さまで40万個近いお申し込みをいただきました。9万個ほどになりますが、抽選のうえ発送します。これらの資金は、アウトドア義援隊の活動として、防護服の輸入に充てます。

── 最後に。GWを中心に登山に自粛が呼びかけられました。これについてどのようにお考えですか?

山岳団体が自粛を呼びかけたことは、感染防止に役立ったと思っています。本来、山は3密から離れた場所ではありますが、今回の自粛は聖域ない自粛要請と受け取りました。 ここから先は、行政が段階的解除や地域別の解除をするなかで、経済活動も戻ることでしょう。登山も同様です。

山岳遭難のリスクが高い登山は、医療現場への圧迫を考えると控えたいと思いますが、気軽なハイキングなどから、山歩きを始めたいですね。登山者に向けて出口を明確に示してほしいと考えています。それが、いま必要なことではないでしょうか。

(取材日:2020年5月7日)

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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