安全登山のススメ|思いがけない怪我や症状に備える、ファーストエイド心構え編
ランドネ 編集部
- 2020年05月27日
各地で外出自粛規制の緩和が始まりました。今週末は久しぶりに山へ行こうとわくわくしている方も多いのではないでしょうか?安全に歩き、無事に家に戻ってこられてこその楽しい山歩き。久しぶりの山でうっかり、ということがないように備えて出かけたいですね。
そこでランドネでは、心の準備に役立つ記事を今日から3日間にわたってアップしていきます。
今日と明日は、思いがけない怪我や症状への対処法について、登山ガイドの栗田朋恵さんとランドネ編集部がいっしょに考えていきます。まずは心構えのおはなしから。
万が一、怪我をしてしまったら
ランドネ編集部:応急処置については、本やウェブにもたくさん情報が載っていますよね。ランドネでもこれまで何度も取材をし、記事を作ってきました。そのすべてを覚えておくべきでしょうか?
栗田:知識をもっておくに越したことはないですが、その前に”気持ちをどう整理するか”ということを考えてみましょう。
山ではどんな方でも思いがけず怪我をするということがあるものです。そんなとき、緊急時ほど心が動転して、パニックになったり、焦ってしまったりします。
そこで大切なのは、冷静になるということ。当たり前のように聞こえますが、意外と難しいことです。
自分が以前に怪我をしたことを思い出してみてください。ちょっと出血するだけで驚いたり、転んだこと自体にショックを受けたりした経験が少なからずあると思います。それに、大人が転ぶ姿は街では見る機会が少ないので、周りはその姿を見るだけで動揺してしまったりします。
そんなとき、お互いにどういう関わり方ができるのか、気持ちを想像することから始めてみましょう。
ランドネ編集部:自分が転んでしまった場合、多少痛くても、相手に迷惑をかけたくないと思って、我慢して「大丈夫」と言ってしまいがちですよね……。
栗田:気持ち、わかります(笑)。日常生活でも友達といっしょにいるときに、ついトイレに行きたいことを言い出せずにお腹が痛くなり、もっと言い出しずらい事態になってしまう経験がある方もいるのではないでしょうか。でも早めに自分が動けば、周りの人も我慢せずにすむということがあるかもしれません。山でも同様に、症状が軽いうちに不調を解消できるといいですよね。
ランドネ編集部:なるほど。ちいさな違和感でも口に出し合って共有できること、が大切ですね。
栗田:はい、そのために、喉が乾いたなどのささいなことから声をかけ合おうと、出発時に約束しておくといいかもしれませんね。つい相手の行動を止めてしまうのではとか、時間がかかると登頂を諦めなければならなくなるのでは、などと心配になってしまうかもしれません。でも、心身の不快な状況が重くなれば、相手にかける気遣いも大きくなる可能性がありますから。
それといざというとき、大丈夫かそうでないのかといったことをつい相手に伝えてしまいがちです。そうではなく、端的にどこが痛いのか、違和感があるのかという具体的な事実を伝える、ということを意識してみてください。
相手が怪我をしてしまったら
ランドネ編集部:わかりました。共有の仕方も大切なポイントですね。では、いっしょに歩いている相手が怪我をしてしまった場合には、どんなことに注意したらいいでしょうか?
栗田:転んだショックで顔が青くなってしまったり、腰が抜けてしまったりする人もいます。見た目には大きな怪我がなくても、膝を打ったことで、集中力や気持ちが途切れてしまうこともあります。
そんな相手を見るだけで、自分も緊張してしまうことがありますが、これから挙げる二つのことを意識するときっと、次に進めることがあると思います。
まず、怪我をしていないあなたは周りの状況を見て、崖などの危険箇所から離れ、山側の安全な場所へいっしょに移動してあげましょう。そこで立ち止まって、自分たちが安全な場所にいることが第一です。
そして、ゆっくり声をかけて、いっしょにいてあげましょう。怪我をした本人に気遣いで「先に行って」などと言われるかもしれません。でも痛みがあるときは、そばに誰かがいてくれるだけで、安心できるものです。バックパックを下ろそうか、とか防寒着を着ようかとか、怪我の状況を見てみようか、など相手の心が落ち着くまで声をかけながら時間を作ってあげることが大切です。
山のなかでできることは限られています。重症の場合でも医療機関に引き継ぐことを前提に、心の支えになる、ということをやってみてください。
ランドネ編集部:はい。では相手が大丈夫と言っていても、具合が悪そうに見える場合にはどうしたらいいのでしょうか。
栗田:「あなたはよくても、その状態のあなたといっしょにいる私が不安を感じてしまう」ということがありますよね。その気持ちを正直に相手に伝えましょう。
そもそもですが、体調が悪くなったとどう判断するかを山で万一が起きてから話し合うのはむずかしいものです。登山計画の段階で引き返すイミングについて話し合っておきましょう。たとえば「天候悪化の場合」「道が想像以上に険しい場合」に加えて、「体調に不調があった場合」を入れる、というイメージです。
それに、山を引き返すのはタイミングが大事です。機を逃すと、もう戻れないこともあります。
仲間とお互いに気を遣い合いすぎて、大事なことを見失うということがないように、ささいなことでも言い合える間柄を作っておく、ということがやはり大切になりますね。
ランドネ編集部:なるほど、栗田さん、ありがとうございます!心構えはずいぶんとできてきました。
明日は、怪我や症状の具体的な対処法について、よろしくお願いします!
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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