【いつか泊まりたい山小屋#24中央アルプス・西駒山荘】歴史ある石室のなかで地酒をいただく乙な夜を
ランドネ 編集部
- 2022年08月18日
「あの山小屋に泊まってみたい」。そんな憧れが、山へ向かうきっかけになることもあるはず。本連載では、立地や食事、山小屋の主人やスタッフの人柄など、その山小屋ならではの魅力にスポットを当てながら、ランドネ編集部おすすめの山小屋をご紹介。24軒目は、中央アルプス木曽駒ヶ岳の北の玄関口、西駒山荘をピックアップ!
100年以上前から登山者の安全を見守り続ける石室
バスとロープウェイで標高2,612mまで一気に登ることができ、気軽に高山ならではの絶景を体感できる人気スポット・中央アルプス千畳敷。その千畳敷から片道約3時間、木曽駒ヶ岳の北東の稜線上にそびえる将棊頭山の直下に西駒山荘は建つ。1967年に駒ヶ岳ロープウェイが運行開始するまでは、麓の桂小場から登り始めて将棊頭山を経由して行くのが木曽駒ヶ岳へのメインルートであり、とくに当時の登山者にとって、西駒山荘は重要な拠点だった。
西駒山荘を特徴付けているのは、本棟のすぐ横に建つ石室だ。この石室が建設されたきっかけは、作家・新田次郎氏の山岳小説『聖職の碑』の題材にもなっている、1913年の夏に起こった中箕輪尋常高等小学校の集団遭難事故。このような悲惨な事故を二度と起こさせないために、1915年に地域住民の多大な努力によって西駒山荘の前身となる伊那小屋が建てられたという。
当初は石室のみだったが、登山客の増加によって平屋の本棟が増設され、さらに2014年には本棟が建て替えられ2階建てとなった。本棟は石室と一転、床・壁・構造材にカラマツやヒノキなどの県産材が惜しみなく使われていて、ぬくもり溢れる空間に。こうした建築の違いを見比べるのも、山小屋の滞在時のお楽しみとなるだろう。
杜氏でもある小屋番がセレクトした日本酒を堪能
西駒山荘のもうひとつの魅力は、冬に麓の酒蔵「信濃錦」で杜氏をつとめている小屋番・宮下拓也さんが厳選した日本酒をいただけること。夕食後、食堂から石室に場所をうつして、伊那谷産の減農薬栽培米とアルプスの水を使った芳醇な味わいの地酒を呑み比べ……という過ごし方も可能だ。小屋番の宮下さんのタイミングが合えば、お酒にまつわるよもやま話を教えてもらうのも一興。日本酒好きには、贅沢極まりない夜になること必至だ。
山小屋から目指すおすすめルート【西駒山荘~濃ヶ池 片道約1時間】
西駒山荘から中央アルプスの主峰・木曽駒ヶ岳を目指す往路や復路にぜひ立ち寄ってほしいのが、宝剣山荘と西駒山荘を結ぶトラバースルートの途中にある濃ヶ池だ。“馬ノ背”と呼ばれる木曽駒ヶ岳への主稜線の東側にあり、池の周辺には千畳敷カールに劣らないほど多様な高山植物に出会える。ハイシーズンでも、このルートを歩く登山者はそれほど多くはないので、落ち着いて高山植物を鑑賞したい人におすすめだ。
100年前からほぼ変わらない姿の石室と2014年に新築されたばかりの本棟をもつ、西駒山荘。ここでの滞在が、安全登山の大切さや山小屋のありがたみを見直し、地酒の奥深さを知るきっかけになるはずだ。
西駒山荘
https://www.ina-city-kankou.co.jp/yamagoya/nishikoma/
・標高:2,685m
・営業期間:7月第2土曜~10月第2月曜
・宿泊料金(税込):1泊2食12,000円、素泊まり(寝具付き)9,000円
※平日価格。休前日は+1,000円。
・電話番号:090-2660-0244 (8:00~19:00) ※営業期間外0265-94-6001(平日8:30~17:30)
・コロナ禍での確認事項:完全予約制、マスク・インナーシーツを要持参
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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