高山植物(山の花好き)ライター・成清 陽の「ヤマノハナ手帖」#14 ミズナラ
ランドネ 編集部
- 2022年09月17日
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登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!
5月のぎっくり腰以来、ほとんど山に登れていないワタクシ。「紅葉シーズンこそは絶対行くぞ!(花はほとんど終わったけど)」と決意を新たにしておりましたが、長雨のあとの台風、キタコレ。まったくもって、完全に“イクイク詐欺”になりつつある今日このごろに、歯ぎしりが止まりません。そんな状況にほっこりと癒やしをくれる今回の主人公は、紅葉シーズンにほっこり華を添えてくれる、「ドングリくん」。山の丸っこいドングリといえば……そう、ミズナラです!
ブナの知名度には叶わぬ、“いぶし銀”
Data
ミズナラ(ブナ科)
一般的な花期:5~6月
主な生育場所:山地~亜高山の林内
登山プランを練っているとき、実際に登山口に着いてマップ看板を見たとき……。そこかしこに書かれた「ブナ林」というコトバに気づいたことがありますか?まだ本連載ではブナを紹介してないじゃん……というツッコミはさておき、その仲間でありつつも意外とカゲの薄い(!?)存在、それがミズナラです。「いやハナから言うのもナンだけど、ブナは樹皮が白くてどこか女性的で、とてもキレイ。それに比べると、ミズナラって樹皮がザラついてて、あんまし特色なくて、パッとしなくね?」。そう言いたくなりますよねー。わかります、そのキモチ。まあ、いうなれば舞茸が採れるってことくらいかな~。
キュンキュン系の丸っこいドングリ
な~んてだれが言うかあぁぁ!このかわいいドングリが、そのドングリまなこに入らぬか!!……といきなりフルスロットルなワタクシですが、ホント、落ち着いて良~く見てみてください、このドングリ。コナラやクヌギ、スダジイなどさまざまなドングリはあれど、ミズナラの魅力に勝るものなし。コナラをひと回り大きくし、クヌギの丸っこさをプラスして、スダジイの深い色味を頂戴して……と、まるでいろんなドングリの“ええとこどり”をしたんじゃないかというこのドングリ。その丸っこさゆえ、いまにも“お池にはまりそう♪”じゃありませんか!
運命のお相手は??
さらに変わっているのは、ミズナラがときに「連理木」(れんりぼく)をつくるところ。つまり、別種の樹木と途中でくっついて融合する、それはそれは珍しい大事件が起こるんです。ちなみにこちらは、ミズナラ(左)とサワラ(右)がくっついちゃってます!針葉樹が広葉樹のお相手になるケースは全国的にもめちゃくちゃ稀なハズ。信仰の対象や夫婦円満・縁結びのシンボルにともてはやされるのも、ナットクです。なお、サワラの葉裏にはH型の模様があることから、「いやーんエッチ、サワラないで」と覚えるのが通例。神秘性より絶妙なムズがゆさを感じるのは、ワタクシが不純ゆえでしょうか(だれか、仲間になってYO!!)。
葉っぱの上のかわいらしいベリー
さーて、ジワジワとミズナラのネタがヒートアップしてきたところで、トドメをば!この写真、ミズナラの葉っぱにちょこんと赤いものが乗っています。ちょっとオイシそうなこれは、虫こぶ(虫えい)と呼ばれるもの。虫が葉っぱに卵を生みつけたため、ミズナラが「ここから勝手に広がっちゃダメ!」とばかりにつくった“虫さん専用部屋(監獄?)”なんです。ただ、さまざまな色カタチの虫こぶはあれど、赤くなるのはレア。そりゃ、おいしそうに見えますよね。ちなみに学生時代、先輩(♀)が食べて「甘かった」と言っていましたが、それって何の味だったんでしょう?まさか……と想像が膨らむとこですが、くれぐれもマネはしないで!
友情出演、コナラさん
「いやー、なかなかミズナラおもしろいね!でさ、花はどんな感じ?」って、そんなお言葉ありがとうございます(勝手に感謝)!!。そう、そうなんですが……ひたすら背が高いミズナラだけに、なかなか写真がレアいため(言い訳)、今回は平地のコナラさんに友情出演をしていただきます。というのもこの二種類、おなじ「楢」の名をもつ仲間だけに、花や新芽がそっくりさん。ちなみに花はどれかというと、葉のそばから出ている、ネコのしっぽのようなもの。このしっぽについたツブツブ一つひとつが雄花で、根元にある雌花(1~2個)が膨らんで、ドングリになるんですよ~。これ、いつか写真で追っかけてみたいところです!
紅葉?黃葉?ナゾ多き葉っぱ
さて、ミズナラの花写真がないことはサラっと流して、ラストのお題です。9月末ともなれば、そろそろ各地の山で紅葉が始まるはず。ところが、ここでなかなかハイレベルなミステリーがあるのです。というのも、たとえば「カエデ類は赤っぽくなるのがキホン。黄色になるものはまあ少なめ」など、ある程度、色は決まっているように思うんです。ところが、ミズナラは紅葉になったり、黃葉になったり、ハンパにオレンジ色になってみたり。日光の当たり具合なのか、栄養状態によるのか、はたまた“女心と秋の空”(気分)なのか……。正直、まったく読めないのです。理由をご存じの方、ぜひぜひ教えて下さいませ~!って、ラストに謎をお残しして去りゆく、この心苦しさよ……。
さて、今回ご紹介してきたミズナラ。いかがでしたか?ちょっと別のアングルからもひとネタご紹介しておきますと、コナラやスダジイなどドングリ類の樹皮(枝)をかじる昆虫に、シロスジカミキリがいます。これ、調べるとどの図鑑にも「ミズナラ」は記載がない……。ということで、我が家で飼っていた「シローくん」(実際は♀)に与えてみると、問題なくバリバリ食べました!何が言いたいかって、とにかく“自然にはまだまだフシギがいっぱいだよ!”ということ。夏休みはとっくに終わりましたが、読者の皆様に「天候不順の年の紅葉は、そしてミズナラはどんな紅葉になるのか?」をぜひぜひ自由研究してみてほしいです!!
それでは、また。皆様のココロに、素敵な花が咲き誇りますように。
花ライター/会社員 成清 陽
大学時代から山を渡り歩いていた個性派キャラ。卒業後も、好奇心の赴くままに職を転々とし、自然ガイド、環境コンサル、ホテルマン、雑誌編集者、市営公園管理人を経て、現在は森づくり事業を担う会社員。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。花が美しい山しか好きになれない、アルティメットな病なんです~!(笑)
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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