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低山を知りつくした大内征さんが選ぶ「わたしのピーク&ルート ベスト5」

頂点を目指すだけではない山の楽しみが「わたしのピーク」です。低山にある歴史や文化、ふもとの食やお酒など、全国を歩いてきた低山トラベラー大内征さんが選ぶ「わたしのピーク&ルート ベスト5」を紹介してくれました。

南房総の低山を大冒険!
里山に秘められた滝を目指して(御殿山~ 大日岳~坊滝 千葉県南房総市)

じつは渓谷や滝巡りが楽しい、 低山王国・千葉県

どんなに低くても、山があれば“谷”がある。登山のイメージがあまり定着していない南房総だけれど、谷に注目して山歩きをすると意外な発見に心が躍る。南房総市といえば富山三山(南総里見八犬伝で知られる富山、房総のマッターホルンこと伊予ヶ岳、日本武尊が御殿を建てたと伝わる御殿山)とともに、秘境感あふれる名所「増間七滝」が楽しい。目指すのは、その七つの滝のひとつで、落差25mを誇る坊滝。つまり、谷が“ピーク”となる。

御殿山からいくつかの山を乗り越え、大日山のさらに奥へと谷を下りる。うっそうとした樹林のなか、ひっそりと岩壁を流れ落ちる坊滝は驚くほどに秘境感たっぷり。歩くと納得の冒険ルートなのだ。かつて存在した大日山閻魔寺のお坊さんが水垢離したことが名称の由来だとか。魚のうまい土地だけに、帰路は定食店などに寄ってアジフライも目指したい。

コース

約5時間
御殿山遊歩道 駐車場→御殿山→大日山→坊滝→大日山→御殿山→御殿山遊歩道 駐車場

 

目指すは山上の蕎麦!
連続する滝とゆるい流れの最奥へ(滝川渓谷 福島県矢祭町)

本当は教えたくないほどのお気に入り! 滝川渓谷で蕎麦ハイク

滝川渓谷を歩くなら、山上の「蕎麦」をセットにすることで魅力が何倍増しにもなる。そう断言するのは、見どころがこれでもかと続く渓谷のすばらしさだけでなく、その上流で待つ蕎麦のおいしさやお店の雰囲気にノックアウトされた経験があるから。ということで、山上の蕎麦を“ピーク”にした渓谷歩きをシェア。

ルートの前半は、数々の滝と力強い流れに「これぞ渓谷!」と圧倒される。そして後半は、まるで中流域の河川のように静かでゆるやかな流れに癒されるのだ。その先の折り返し地点「山頂の店 滝川の里」で、目的の蕎麦を食す。とくに晴れた日の滝川渓谷は別天地。せせらぎをBGM にして、表のテーブルで食べるのが気分。ちなみに、矢祭町は茨城県と接する福島県最南端の地で、滝川渓谷は“東北最南端の秘境”と呼ばれる。じつはずっと内緒にしていた“とっておき”なのだ。

コース

約4時間
滝川渓谷第一駐車場→駐車場→滝川神社→おぼろ滝(一丁目)→みすじの滝(五丁目)→銚子の口滝(九丁目)→山頂の店 滝川の里(蕎麦)→銚子の口滝(九丁目)→みすじの滝(五丁目)→おぼろ滝(一丁目)→滝川神社→滝川渓谷第一駐車場

 

金時山経由、大姥山行き
金太郎つながりで遠征する低山の旅(大姥山 長野県大町市)

金太郎が山姥と暮らした洞穴が見てみたい!

金太郎といえば、箱根の金時山を思い浮かべる人が多いだろう。ところが、金太郎伝説は岡山や静岡など各地にある。そんななかで、長野の大姥山は、金太郎が母の山姥(大姥)と暮らしたと伝わる洞穴で知られた神秘の低山。金時山に登ったことがあるなら、金太郎つながりで遠征登山するのもなかなか楽しい。

地元で「大穴」と呼ばれるその洞穴は、山の9合目付近にある。鎖場が9カ所も連続する急登の山だから、全身を駆使して乗り越えよう。金太郎もここで足腰を鍛えたのかと空想も楽しい。浸食や風化でできたタフォニという無数の穴があちこちに見られ、それがよりいっそう、この場の神秘性を高めている。ひと雨きても10人程度なら楽々と雨宿りができるほどの広さ。のんびり過ごしながら、金太郎と山姥の暮らしに思いを馳せたい。ちなみに山頂までは目と鼻の先。

コース

約5時間30分
赤土バス亭→大姥山神社前宮→大姥山登山口駐車場→大姥神社→大穴(大姥神社奥宮)→大姥山→山姥の滝→大姥山神社前宮→赤土バス亭

 

かつてのバリエーションルート 伝説が残る岩壁を訪ねて
(カンマンボロン(瑞牆山域) 山梨県北杜市)

不動明王の最高の境地、カンマンボロンを探し求めて

瑞牆山の周辺には、奇岩巨石が無数に点在している。そのなかに「カンマンボロン」と呼ばれる岩壁があることをご存じだろうか。カンマンとは、不動明王を意味する種子(しゅじ:仏尊を一文字で言い表した呪文、梵字)であり、化身のもとである大日如来もその意味に含む。ボロンとは、清浄でもっともいい状態のこと。個人的には「清らかで穏やかな心をもって不動明王を思い、祈ること」を、カンマンボロンと解釈している。

本当かどうかはわからないけれど、空海が掘った「カンマンボロン」の存在を知り、瑞牆山中に探しにいったことがあった。はじめて仰ぎ見たときは、わからないなりに文字として認識しようとしたけれど、そもそも字なのか否かもよくわからず。風雨の浸食といえばそれまでだけれど、どこか神秘的で心身の休まる清浄な場だと感じた。以来、おりに触れて訪れている。

コース

約6時間
みずがき山 自然公園→カンマンボロン→登山道合流→瑞牆山→不動滝→みずがき山 自然公園

 

新しい自分へと生まれ変わる古からの祈りのトレイル、熊野古道
(熊野古道(中辺路) 和歌山県田辺市)

熊野に過去・現在・未来を巡り、新しい自分へと蘇りを果たす

より高いところに登りたい人もいれば、より遠くへ到達したい人もいる。後者にとってロングトレイルは憧れだろう。とはいえ一度に全コースを歩くとなると時間がない。体力の不安もある。そんなふうに諦めているのだとしたら、ぜひ“セクションハイク”という楽しみ方をおすすめしたい。文字通りセクション(区間)を自分で決めて、日帰りから数日の間だけ歩き、何回も何日もかけて歩きつなぐスタイルだ。全長1000㎞ におよぶといわれる熊野古道を、ぼくは毎年のように歩きに行く。何年もかけて道をつなぐことを自分のライフワークとして楽しんでいるのだ。

熊野古道は、現在過去未来を司る三山(3つの大社) を巡り、蘇りを果たす道である。広大な低山に秘された長く険しい道のり。歩くうちに、自分と向き合う時間が訪れる。その瞬間を求めて、今年もまた歩きに行く。

コース

約18時間30分
滝尻王子バス亭→高原→近露(一泊目)→発心門王子→ちょっと寄り道展望台(大斎原を見下ろす)→熊野本宮大社→熊野本宮大社旧社地 大斎原→湯の峰温泉(二泊目)

 

低山トラベラー
大内征さん

山里の歴史文化をたどって各地の低山ワールドを探究する文筆家。著書に『低山トラベル』など。来春に刊行する新著の原稿に苦戦中

 

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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