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ニューアルバム『Quicksand』を11/30にリリース|Bialystocksが考える、山と音楽のさらなる楽しみ方とは

宇宙的感覚を研ぎすます「山と音楽のさらなる楽しみ方」をテーマに、さまざまなミュージシャンにインタビューしていくシリーズ。音楽フェスをはじめ、アウトドアフィールドで聴きたい音楽を紹介する。

Bialystocksがニューアルバム『Quicksand』を11/30にリリース

映画監督でありミュージシャンの甫木元空(ほきもと・そら)の最新映画「はだかのゆめ」が11月25日に公開。同映画の音楽は甫木元(Vo.)と菊池剛(Key.)からなるバンドBialystocksが手がけ、11月30日にはバンドのニューアルバム『Quicksand』も発表。同作でいよいよメジャーデビューする、ふたりに話を聞いた。

——甫木元さんの監督映画「はだかのゆめ」とBialystocksのニューアルバム『Quicksand』の制作は同時に進んでいたのですか?

甫木元:映画が去年の10月に高知県でクランクインしましたが、バンドのほうも次はアルバムを作ろうとなっていたので、早い段階から、映画×音楽のように同時に発表することで、多面的に届けるようなことをイメージしていました。ただ、アルバムと映画をリンクさせたり、関連性をつけたいとは考えていなくて。根本的なところで自然と似る部分があって、映画のその先のこともアルバムでは描けたりするかな?と思ってはいました。

——映画×音楽という意味では、劇伴に限らず、環境音や自然の音も印象に残る映画でした。

甫木元:最初、菊池も「音楽いらないんじゃない?」と言っていたくらいで。その前提でどう音楽が入れられるか考えていました。実際、近所のピアノを練習している子のピアノが環境音として聞こえてくるくらいのことも考えていたんですが、それは逆に構造的な感じがして。音響の菊池信之さんとは、今回の映画は「死」がテーマにあるから、その対比として、流水音、虫や鳥の音といった周りを取り囲むものは、生き生きとした生命力の塊みたいなことでとらえ、それが、ある種の弔いになったらって当初から話をしていたんです。

菊池:音楽の構成やどこに使うか含め、甫木元が主導で進めていくんですが、映画自体が確定している情報がない、あいまいな映画なので、「音楽が観る人の見方を変に決めてしまう危険性がある」と思って、劇伴は慎重に考えていました。この映画に関わっている人間のなかで、僕が一番映画の素人だったから、自分の役割としても、細かいディテールの描写を読み取る力がそんなにわからない一般の鑑賞者として、どう思ったのかというような感想を伝えて。

——映画のなかでわかりやすいストーリーがあるのではなく、アート映画として、説明するようなこともないですよね。

甫木元:そうですね。だから、エンディングの「はだかのゆめ」という曲は、音楽が音楽として別空間にあるような感じで。人が走るとか、雨が降るといった映画の中の運動を盛り上げるために、別空間ではある種王道な音楽が鳴っている。そうすることで、環境音と音楽、映像が共存できる感じがしました。それで「はだかのゆめ」は菊池からもストリングスのアレンジがいいんじゃないかという提案があったんです。

——アルバム『Quicksand』にも収録されますが、そのストリングスアレンジにより、音楽単体でもすごく映画的というか。そして、思いが歌詞に凝縮されています。

甫木元:そうですね。この曲は映画の脚本を書いているときに、試しに作ってみようと思って、結構早い段階からあったんですけど、音楽は直接的に母親との関係性みたいなものが、映画と比べると出ているかなと。編集とかを進めていく段階で、映画に余白が多い分、この曲が最後にきて映画が終わるというのでもいいのかなと。この映画があったから、音楽はこんなに、ある種ストレートな歌詞になっていったと思います。

——映画を高知で撮影するなかで、自然の作用については、どんなことを感じましたか?

甫木元:5年前に高知に移住して、映画の脚本を書いていたのですが、それまでは、小さいころから、夏休みとか冬休みとか遊びにいく場所という感じだったんです。実際に住んでみると、台風の玄関口になり、四万十川の水害だとか、自然の猛威みたいなものがあるなかで、住んでいる人たちは、それに抗おうとせず、受け入れているんですね。実際、四万十川の橋は、沈下橋といって沈む前提で橋を作られていたりする。そういう考えはおもしろいなって。うちのじいちゃんも「このくらいたいしたことない」ってよく言っていて、ずっと生活してきた人たちの、「ともに生きていくしかない」という考えはそこに住んで知れたというか。おもしろいなと思いました。高知で撮ることも含め、天候がコロコロ変わって、なかなかコントロールできない部分が多かったのですが、仕方ないことはある程度受け入れながら……。

——菊池さんは山登りがお好きだと伺いましたが、高知の自然はいかがでしたか?

菊池:本州の感じとは違う山というか。高いわけではないんですけど深くて、奥のほうに小さな集落みたいなものがあるんですよね。撮影期間中も山登りをしましたが、石鎚山の山脈は、アルプス的な景観があったりして、ひたすら深い、高い山はないのに、その先に開けた草原みたいなものがあるというのが驚きでした。

——山の魅力ってどんなところですか?

菊池:山の魅力……危ないところに行くと、生きている感じがするときがあります。

——ハードな山登りも?

菊池:ロッククライミングなどをするわけではないんですけど、岩場とかナイトハイクとか。

甫木元:リセットしに行ってる感じではないんだ?

菊池:ではない。なにか登ぼらなきゃいけない感じがする、謎の使命感があって。

——あはは。甫木元さんは?

甫木元:父親が元登山部で、山登りが趣味だったんです。僕も小さいころから田舎に住んでいて、海より山のほうが単純に落ち着くので、たまに長野とか行っています。あとは、大学受験のときに、屋久島に登ったことで、多摩美(多摩美術大学)に入れたんですよ。ゆうパックに好きなものを入れて送るという課題があって、僕は、屋久島を旅して、その山登りの過程を送ったんですけど、それで合格したから、何年かおきに行かないとバチが当たるんじゃないかと(笑)。

——多摩美で、映画を撮るきっかけとなる恩師青山真治監督との出会いもあるわけですからね。

甫木元:そうですね。それがなければ、いま、何もしてなかったと思うので。

——映画にある風景も余韻が残りましたが、この映画の制作とアルバム制作を経て、ふたりの化学反応をより感じたのではないかと思うのですが、ふたりは、お互いの才能をどう思っているんですか。

菊池:僕は、まだ全貌を把握できていない感じですね。甫木元は「なんのテレビ番組を観てきたんだろう?」とか触れてきた文化が違うと感じることがあって、いい意味で周りにいないタイプで。人間分類としては同じところにいて、これは恥ずかしいと思っている部分は近いと思うんですけどね。でも、謎が多いというのは、いいんじゃないですか。

甫木元:そうですね……制作のスタイル自体は変わらないんですけど、僕らの楽曲制作は、ある程度曲ができたら、菊池が「こういう編曲はどうか」って投げてくれるので、そこから構成も含め、ああだこうだやるというのがどの曲でもあるなかで、菊池は足し引きができるというか。Bialystocksの音楽がみなさんに風景が見えると言ってもらえるのは、一面的ではなく、音数含めて、余白があるからかもしれないですし、展開のなかで何か想像してもらえるというのは、やはり一色で塗られているとなかなか難しいと思うんですよね。そこにちょっと余白の部分に歪な感じがあるから、風景をみんなが想像してくれるというか。その部分を菊池の編曲によって見せられている部分がすごくあるのかなと。

——甫木元さん自身も菊池さんの編曲でハッとすることがある?

甫木元:そうですね。全然違う感じで返ってくるので、単純にいち観客、いちリスナーみたいな感覚で、「ああ、こうなったんだ。すごーい!」ってなる。

——今作では劇伴でも使われていますが「ただで太った人生」では、作詞作曲に、映画にも出演している前野健太さんが参加されていますよね。このふたりの制作に第三者が入るという。

甫木元:ああ、わかりやすいと思いますね。前野さんの作ったフォーク的な感じが、菊池のアレンジでガラッと変わる。ただ、ガラッと変えるといっても、菊池はもとの匂いみたいなものまで変えるので。

——『Quicksand』でメジャーデビューするわけですが、メジャーデビュー作品には、あり得ない1曲目「朝靄」からはじまりますね。いい意味で。

甫木元:そうですよね(笑)。何がメジャーかっていうのはあまりわかっていないんですけど、最初からドーンっといかないというか……。エピローグじゃないですけど、そこから物語が始まるような曲になったと思います。

——「はだかのゆめ」含め、アルバムを通して、あいまいなままでも前に進む何かをもらえた感じです。

甫木元:今作のタイトルは『Quicksand』という、流動的で怖い言葉ではあるんですけど、ある種、悲しみみたいなもののなかにも、何か動いている部分があるという。砂時計ではないですけど、少しずつ何かが動いているという感じが聴いている人にも伝わるといいですね。

Field Like Music
◎アウトドアで聴きたい1枚。

グレン・グールド /『The Sound of Glenn Gould』

山に登るときは音楽を聴かないので……甫木元の高知の家はアウトドアみたいなもので、そこで聴いている音楽は?(菊池)。うちは母がピアノ教室をやっていたので、音楽をかけることがあまりなかったなかでも、父が流していた、ピアノ曲だとグレン・グールドかな。演奏しながら「ううーー」とか言っていたり、椅子がきしむ音が録音されているのがいいとか言っていて。父が残していったものをたまに聴くと、幼いころのシーンが蘇るんです(甫木元)。

Bialystocks(ビアリストックス)

2019年、ボーカル・甫木元空(ホキモト・ソラ、写真右)監督作品、映画「はるねこ」生演奏上映をきっかけに結成。甫木元のソウルフルで伸びやかな歌声、温かみのあるメロディ、そして、ジャズがベースにあるキーボード・菊池剛(写真左)によるジャンルを横断する音楽で評価を得る。2022年10月、初のワンマンライブを大手町三井ホールにて開催し、即完させる。11月30日メジャー1stアルバム『Quicksand』を発表。
https://quicksand.jp/

Information

『Quicksand』
11.30 release
(CD+Blu-ray)¥4,500+税
(CD)¥2,700+税
PONY CANYON IRORI Records

LIVE

Bialystocks “Quicksand” Tour 2023
1月21日(土)大阪・梅田・Shangri-La
1月22日(日)愛知・名古屋・TOKUZO
2月18日(土)東京・恵比寿・LIQUIDROOM

映画『はだかのゆめ』
11/25(金) 公開初日 ロードショー
https://youtu.be/PY6D6-Zb02U

映画『はだかのゆめ』上映+Bialystocks Live
12月9日(金)高知・高知県立県民文化ホール グリーンホール
12月23日(金)山梨・甲府・桜座

 

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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