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モデル仲川希良の「絵本とわたしとアウトドア」#31 ベイビーレボリューション

ところかまわずハイハイで突き進む姿に励まされる

自然のなかを歩くと心が整う、それは山に登る前から感じていたことでした。歩くという行為は頭でっかちな自分から解放してくれる。自然の摂理に目を留め、包まれながら、体と心をいっしょに動かすことで、何が自分に大切か、生き物として正しいか、気付かせてくれる。黙々と歩いたあとは疲れているはずなのに不思議と清々しく、むしろこれからもっとがんばれそうな、そんな力が湧いてくるような気さえします。

ハイハイをはじめた息子を眺めているときも、同じような力をもらっていました。生まれたときから公園の芝生の上に寝転がらせていたせいか、屋外でも自然にハイハイをしていた息子。芝生が土になっても、歩道のアスファルトになっても、おかまいなし。ときどき手を見つめてその感触の差に気づいてるふうではありましたが、体を傷つけるような痛みさえなければ、どこだって彼の行き先になるのだと知りました。真っ直ぐ前を見て、ハイハイとは思えないスピードで、どこまでもずんずん自分のままに進んでいく息子は、発光体のようにまぶしくて。手足を使って自ら進める、その喜びを体いっぱいで感じているのが伝わります。感じるというか、体全部が喜びそのものになっていた。

あなたはどこへだって行ける。行け!進め!……母としてその姿を応援しながら、励まされているのはじつは私自身でした。そういえば私だって、自分の意思で行く先を決められる脚を、持っているんだよなぁ。

▲息子を真似てハイハイすると、はじめは手で触れた地面の感触に驚くものの、だんだんそこに支えられ、力をもらって後押しされるような感覚に変わるのを感じた。人は、二足歩行のせいで頭でっかちになったのかしら

絵本「ベイビーレボリューション」に描かれる赤ちゃんも、どこでもおかまいなしにハイハイしていきます。奈良美智さんおなじみの何かを見透かした目つきで、赤い頭巾とオムツ姿の赤ちゃん。それが何百万何千万といっせいに、世界中同じ空の下、ひたすらハイハイしていく。ビルの谷間もジャングルの奥地も元気に這って越えていく。大人たちはパニックです。
「しゅうきょう じょうやく ほうりつ なんのことだか わからない まもなく せんそうちたいだ おかまいなしに すすんでく」
……赤ちゃんに国境など分かりませんから、当然です。生まれたときはほとんど誰もがそうやってハイハイしていたでしょうに、なぜ私たち大人は自分たちがともに住まう星に爆弾を落とし、何のために殺し合っているのでしょうか。
「みんなは そのすがたを みて きっと こころ かわるだろう みんな われに かえるだろう」……。
私のたったひとりのベイビーである息子はもう、ハイハイは卒業しましたが、今も真っ直ぐ心のままに、かけていきます。日々私の心に革命を起こしてくれるその姿に恥じない、私の行き先はどこでしょうか。その答えが知りたくて、私はまた自然のなかに歩きに出かけます。

今回の絵本は……

ベイビーレボリューション

文 浅井健一
絵 奈良美智
クレヨンハウス

あふれる純粋透明なパワーに、読むたび心奮い立たせられる。言わずと知れたロッカー・浅井健一さんが作った同名の曲が元になっているので、そちらもぜひ

モデル/フィールドナビゲーター
仲川希良

テレビや雑誌、ラジオなどに出演。登山歴は13 年目。里山から雪山まで広くフィールドに親しみ魅力を伝える。一児の母。著書に『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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PROFILE

仲川 希良

ランドネ / モデル/フィールドナビゲーター

仲川 希良

テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの14年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

仲川 希良の記事一覧

テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの14年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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