高山植物(山の花好き)ライター・成清 陽の「ヤマノハナ手帖」#21 ミツガシワ
ランドネ 編集部
- 2023年04月13日
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登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!
「今年は2週間ほど季節が早いね」。岐阜県山間部でもそんな声が聞こえる今春。驚くほど桜の開花が早いと思ったら、今度は温度がひとケタまで下がって石油ストーブが大活躍……。あまりにハードな温度差に、三寒四温という奥ゆかしいコトバが、だんだん形骸化しつつあるのを感じます。さて、季節についていけないとはいえ、そんなころに思い出すのは、湿地を白い花で埋め尽くす、アノお花。2週間も早いなら、満開もそろそろでは……とソワソワしてしまいます。では早春の“ヒゲ”アイドル、ミツガシワにご登場いただきましょう!
春の湿原を彩るピュアホワイト
Data
ミツガシワ(ミツガシワ科)
一般的な花期:5月~6月
主な生育場所:山地の湿地など
いや困りました。前回、イワカガミがあまりにかわいすぎて褒めちぎっちゃったんですよね。そして今回ご紹介する、ミツガシワ。まーたこれが、清楚でカワイイんだ(ボキャ貧)。胸がすくような純白の花、そしてえも言われぬ明るさを備える、ライトグリーンの葉っぱ。このコントラストに、グッときちゃいます。標高やや高め(500m~)の湿地帯で見頃を迎えるのは、GW頃。春の陽気とミツガシワのお花畑は、まるで天上の楽園を思わせます。
3枚セットの葉っぱだから
そんなミツガシワの漢字名は「三槲」。コムズカシイ字ゆえ、「柏の葉っぱが3枚並ぶから」「三つ柏の家紋に似ているから」というワタクシめの認識がズレていたかとマジで焦るところですが、じつは槲イコール柏の意。そう、どうやら正解のようなんです。てやんでぇ、だったら最初から「三つ柏」って書けや!と思わず絡み酒に興じたくなるところですが、まあ許してあげましょう。なんでも「槲」は、漢検一級の漢字らしいので……(許す理由ソコか!?)。
なんたるキューティー!
そんなミツガシワのすばらしさのひとつが、このツボミ。ぽってりとしたフォルムを彩るほの紅さに、キュンキュンが止まりません。この色合いを、「カワイイ♡」と言わずしてなんと表現すればいいのでしょうか(リアルにボキャ貧)。満開になると真っ白になる反面、この薄紅色が見られなくなってしまうと思うと、愛おしさもひとしおです。あまたある白い花のツボミでも、ここまでの変化を誇るものは、そう多くはないといえるでしょう。
“お毛々”という大問題!!
さて、開花するとすぐに目を引くのが花の「お毛々」。縮毛という表現をされることが多いコチラ、寒さや強い陽射しを緩和するものなのだとか。……ん?陽射しは乱反射できるだろうけど、これだけで花が凍らないのはムリじゃね?と、思わず本連載特有の(!)どす黒いツッコミをしたくなってしまいます。が、たまには少々学術的なことも述べるなら、白い花はキホン昆虫たちを受け入れる、オープンマインドなキャラクターが多いハズ。ひょっとすると、ミツガシワも虫たちの“止まり木”として、お毛々を生やしているのかも?
美味しそうなタケノコが……
さてさて、そんな謎解きをしつつ湿地を歩いていて、ふと気づいたことが……。「ミツガシワの葉っぱの下に、何かある!」。花を少し持ち上げてみると……じゃじゃじゃーん。なんと、タケノコのような長ーい根茎が出てきました!!そう、ミツガシワのステキな花は、この長大な根茎に支えられているようなんです。どうりで、ぐちゃぐちゃした湿地でも凛として生えられるワケだ、と納得した筆者。ところで、この根茎、シカが好んで食べるのだとか。ワタクシも食べてみたい……でも、カワイイし……でもでも、食べてみたい!!……とそんな欲求を振り切るかのように、現場を後にしたのでした。いや、食べてないですよ、ホントに(笑)。
さてさて、今回ご紹介してきたミツガシワ。いかがでしたでしょうか?じつは氷河期の生き残りとされるミツガシワですが、近年ではシカの偏食&繁殖によってだいぶ数を減らしているといいます。こんなカワイイ花が、そして柔らかそうな葉っぱが、美味しそうなタケノコが消えてしまうなんて!(コラッ)。いずれにせよ、根茎はなかなか見られないものですので、ぜひ一度春の湿原でチェックしてみてくださいね~。
それでは、また。
皆様のココロに、素敵な花が咲き誇りますように。
花ライター/会社員
成清 陽
大学時代から山を渡り歩いていた個性派キャラ。卒業後も、好奇心の赴くままに職を転々とし、自然ガイド、環境コンサル、ホテルマン、雑誌編集者、市営公園管理人を経て、現在は森づくり事業を担う会社員。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。花が美しい山しか好きになれない、アルティメットな病なんです~!(笑)
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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