高山植物(山の花好き)ライター・成清 陽の「ヤマノハナ手帖」#22 ホオノキとトチノキ
ランドネ 編集部
- 2023年05月14日
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登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!
つい一カ月前、築70年ほどの民家に引っ越したわが家。念願のプチ里山ライフをスタートしました。とりわけうれしいのは、庭に次々と生えてくる破竹のタケノコ。タケノコご飯を炊いたり、粉末上湯で煮込んでメンマにしたり、毎日ウハウハ♪
さて、今回はそんなわが家のシチュエーションにならって、里山っぽいひとネタをば。いまや満開を迎えるホオノキとトチノキをご紹介します。
ガイド中の大定番ネタ
Data
ホオノキ(モクレン科)
一般的な花期:5~6月
主な生育場所:平地~山麓の伐開地など
「この大きな葉っぱ、そして実が見えますか?この木は、ホオノキっていう名前なんですよ」「へえ~」「いや、そこは“ほお~”って返してください」「……(苦笑)」。山麓を彩る森のなかでも目立つホオノキは、ガイドの定番ネタ。そのテッパン&超ド級ストレートなダジャレがこちらです!苦笑率が高そうに見えますが、笑いを生きがいとするオバチャンたちには大ウケ。しかし、相手を間違えてはいけません。JK相手にこれを言った瞬間、冷たい視線が無数の刃となって自分に突き刺さります……オソロシヤッ!
甲虫への神対応
「オヤジギャグを紹介する連載じゃないやろー!」とツッコミが入りそうな書き出し、失礼しました。ここからは、少々まじめに……。ホオノキは、森のなかでもまっすぐに天を目指して伸びていく樹木ですが、注目すべきはその花の香り。すばらしくフローラルなうえ、蜜をたっぷり含んでいます。そのいっぽうで、花のつくりはどこか開けっぴろげで、なんだか雑!でもこれ、着地が得意でないコガネムシなどの甲虫たちにとっては渡りに船。理由は明快、“激突すりゃとりあえず留まれるから”。うーんなるほど!
人にとっても存在感◎!
デカイ的(花)に留まれば、すぐメシ(蜜)にありつける……。甲虫にとって神対応しているホオノキは、一見関係のないニンゲンたちからも人気です。ただし、人が狙うのは花ではなく、抗菌作用があるという葉っぱ。シャケやきゃらぶき、シソの実や薄焼き卵などを寿司飯に盛りつけて、このキングサイズの葉っぱでくるむのです。一晩寝かせれば、岐阜県山間部の春の味覚「朴葉寿司」が一丁上がり!淡く爽やかな春の香りが、口いっぱいに広がります。
トチノキとは、そっくりさん……?
さて、このあたりでそろそろトチノキと比較を……。背が高い+葉っぱが大きいのでイメージが似ている両者ですが、ホオノキとトチノキを比べると、早春の時点からすでにハッキリとしたちがいを感じられるはず。ではでは、まず葉っぱを、トチノキと比べていきましょう~!
卓越した葉っぱの収納ギミック
Data
トチノキ(トチノキ科)
一般的な花期:5~6月
主な生育場所:山麓~山地の渓流沿い
しゅるしゅるっと丸まったものがほどけていくホオノキ。それに対して、ぎゅぎゅっと縮まった手のひら型の葉っぱが広がっていくトチノキ。あえてホオノキの新葉がほどけるようすを一般的な傘にたとえるなら、トチノキはくしゃくしゃに収納する折り畳み傘っぽい?ある意味ではトチノキのほうが、ボリューミーな葉を収納できるということで、整理上手かもしれません。
ハチさん、大歓迎‼
そして、花となるまったく別モノ!パカッと開いてくるホオノキと比べると、なんだかモシャモシャ、コマゴマとしたイメージです。これ、トチノキと一度決めたら一途に花を訪れてくれるマルハナバチをターゲットにしているためなんだとか。なお、蜜がたくさんという点ではホオノキ同様なのだそうですよ。
トチもニンゲンと仲良し♪
花をアップで見ると、ハチさん狙いということがよくわかります。というのは、赤紫の斑紋(ここに蜜がありますよ!の印)があるから。ちなみに胃袋をつかまれたのは、ニンゲンも同じ。トチの実を素材
さてさて、今回ご紹介してきたトチノキとホオノキ。いかがでしたでしょうか?ダジャレに始まりダジャレに終わった今回ですが、まあそれもニッポン伝統の里山カルチャーということで(?)。なお、わが家のタケノコは里山の勇者・イノシシによってかなり食い荒らされましたが、「い~の」と妥協せずに「シッシ!」と追い払いたい今日このごろ……おっ、全国の読者からの視線が冷たい!
それでは、また。
皆様のココロに、すてきな花が咲き誇りますように。
花ライター
成清 陽
持ち前の強い好奇心で、大学時代から山・海・島を渡り歩いてきた個性派。自然ガイド、環境コンサル、アウトドア誌編集者、市営公園管理人、企業の森づくりなどなど、自然にまつわる職を転々としたのちにフリーランスに。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。2023年春から岐阜県山間部のプチ古民家に移住し、半隠居ライフを通じて、どこまでユルく生きていけるのか絶賛お試し中です!
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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